外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その30
まったく、デメテルさんはなんてモノを!
初めて使用するワケだから、当然、何が起こるかわからないモノを何故、使う!
あ、ああ、何も考えず使ったんだな、アレを――亡霊喰らいの書を。
ま、まあ、とにかくだ。
悪い方向に傾かないコトを祈ろう、うんうん!
「グ、グワーッ! ナンダ、コノ光ハ……ウオオオッ……ナ、ナニヲスル! ヤ、ヤメロ、ヤメロォ!」
「ちょ、何も見えないぞ! 熊公、説明よろしく!」
「お、俺に訊くな。俺にもさっぱりわからん!」
俺は熊公じゃないっつうの!
ま、まあ、それはともかく、説明よろしくってドリスが言うけど、それは無理な話である。
デメテルさんが持っている亡霊リーダーを倒せるかもしれない切り札——亡霊喰らいの書から放つ赤い光のせいで、どうやら視力を一時的に奪われたようだしな。
だが、これだけはわかる――亡霊リーダーが苦しんでいるってコトだけは!
「グワアアアアーッ! ススス、吸イ込マレリュウウウウウッ!」
「吸い込まれる……今、亡霊リーダーの声が聞こえなかった? ああ、やっと目が……視力が戻ってきたゾ!」
「だねぇ、わたしもやっと……」
「一時的とはいえ、何も見えなかったわ。何が起きたのかしら?」
「うう、あのピンクのモヤモヤめ! このわらわを思い切りぶっ飛ばすとは不敬極まりないぞ、まったく!」
「ん、そんなコトより、ピンクのモヤモヤ……いや、亡霊リーダーがいなくなっているわよ」
「あ……ああ、ホントだわ。どこへ行ったのかしら、アイツ……」
ふ、ふう、やっと視力が回復してきたぞ、
やはり、視力を失ったには、一時的なモノだったか……ん、ピンクのモヤモヤという亡霊リーダーの奇妙奇天烈な姿が、キレイさっぱり消え失せているんだが――。
「奴なら、“ここ〟にいるのです」
「え、どこ?」
「デメテル先生、もしかして、その本の中ですかー?」
「ズバリ、その通りです☆」
「あ、ああ、本当だわ! ピンクのモヤモヤ……亡霊リーダーっぽい絵が、その本に!」
「挿絵というカタチで本の中に封印されたって感じだな」
「わお、その本……動いているわね!」
「はい、亡霊喰らいの書は魔導書――生きている本ですし、オマケに亡霊リーダーは抜け出そうと抵抗しているのです」
な、なんだと、亡霊リーダーは、デメテルさんが持っている亡霊喰らいの書に吸収されたってコト⁉
うーん、だけど、外に出ようと抵抗しているっぽいようだ。
『ギ、ギギギガーッ! 俺ヲココカラ出セ! 俺ニハ使命ガアルンダ! ソノタメニハ新シイ身体ガ必要不可欠ナンダ!』
「はいはい、わかりました。わかりましたよー。だけど、そろそろです」
『ウ、ウウウ……俺ハ……俺ハ……誰ダ? アア、何モワカラ…・・ナクナッテキタ……』
「亡霊リーダーの奴、本の中で暴れているのか⁉」
「だけど、なんだか様子が変だわ?」
「当然です。奴は今、亡霊喰らいの書の中に取り込まれている最中ですので、最後の悪足掻きです」
「じゃあ、一体化して、その本の一部になってしまうってコト?」
「はい……おっと、他の亡霊共も、この本の中の中に吸収しておきましょう」
「デメテル先生、それには及ばない。連中が私が追い払っておいたからね」
「わお、流石は死霊魔術師なのです☆」
亡霊リーダーの言う使命とは一体?
まあ、何はともあれ、亡霊喰らいの書の吸収された亡霊リーダーが大人しくなる。
あの調子だと、亡霊喰らいの書の一部と化したっぽいな。
ああ、ついでに、他の亡霊共をミューズさんが追い払ったおかげで、当然、連中に憑依されていた古代遺跡ぶっ壊し隊の連中は救われた……かな?
「ヒニャフニャビアバカウアウ……」
「テュギュギョイピポバボ……」
「アゴゲファオオポピピ……」
「あちゃー……こりゃダメだ。亡霊共に憑依されていたせいで頭ン中が混乱してヘンテコリンな言葉を口にしちゃってるし……」
確かにダメだ、こりゃ……。
亡霊共に憑依されていたせいだろうけど、タヌキチを筆頭とした古代遺跡ぶっ壊し隊の連中は、頭が混乱してヘンテコリン言葉をつぶやきながら転倒する。
「まあ、放っておいても大丈夫だろう。時期に正常な精神状態に戻るさ。それより、この先にあるニャガルタ遺跡へ来ないか? 面白モノを発見したんだよ」
「あ、ああ、それじゃ行ってみるか――」
時期に正常な精神状態に戻るのかぁ、本当に……。
さて、ミューズさんが、今いる影の森の奥にあるニャガルタ遺跡へ来ないかって誘ってくる。
リーダーを失ったワケだし、影の森に巣食っている亡霊共は、今のところは大人しくしていそうだから、とりあえず行ってみるとするか――。




