外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その28
兎天原の四季を司る女神の一柱である雪の女帝って奴は、色々な場所でトラブルを起こしているっぽい困った女神様サマのようだ。
んで、そんな何かしらのトラブルの過程で死んでしまったモノなんだろうなぁ、亡霊リーダーは――。
「ギギギギッ……俺ハ……タダ昼寝ヲシテイタダケナノニ殺サレタ……アノ忌々シキ邪神ノ降ラセタ雪ノセイデ凍死したのだ……許セルワケガナイ!」
「な、なあ、それはお前が悪いんじゃないのか? 雪が降っている最中に外で昼寝をしてたんだろう?」
「ダ、黙レッ! 俺ハドンナことヲシテデモ生キルンダッテ決メテイタンダ! ソレヲ……ソレヲッ!」
「まあ、雪を降らせたのは季節の女神である雪の女帝かもしれないけど、だからと言って、この世を恨んで悪霊になっちまうたぁ、お前は可哀想な奴だぜ」
亡霊になる以前の奴が、どんな人物だったかは知らないけど、その死因は凍死かぁ……。
つーか、逆恨みかよ。
まあ、アイツが死ぬ過程に間接的に関わってはいるだろうけどね。
しっかし、それでこの世のすべてを憎んで悪霊化したワケだ。
どんだけ生への執着心が強いんだか……。
「サテ、ヨクヨク考エレバ使イ魔デアルオ前ニ憑依スレバ、アノ忌々シキ女神ニ近ヅクことガデキソウダナ! ウガアアアアーッ!」
「う、うお、タヌキチの身体から亡霊リーダーが分離したぞ……え、半透明のピンクのモヤモヤしたモノ⁉」
「予想と違う! 真っ黒な名状しがたき姿だと思ってたし!」
「ちょ、その前に俺に憑依するって言ってないかァァァ~~~⁉ つーか、俺と雪の女帝に接点なんてないっての! うお……ちょ、やめっ……来るんじゃない!」
亡霊リーダーは半透明のピンクのモヤモヤした……えええ、俺に憑依する…だと…⁉
その前にいい加減にしろ!
俺は雪の女帝の使い魔じゃないって何度言えばわかるんだ!
「ソノ身体、貰イ受ケルナリィィィ~~~!」
「ホ、ホゲェェェ~~~!」
「あ、あああ、亡霊リーダーが由太郎の口の中に⁉」
く、亡霊リーダー——いや、ピンクのモヤモヤが、そのフワフワと空中に浮いているイメージとは裏腹に、物凄い勢いで俺の間近に迫る……う、うおお、俺の口の中に入り込んできた!
幽霊とか亡霊の類——ああ、同じか!
とにかく、既に肉体を失った気薄な存在が、他のモノの肉体に憑依する方法っていうのは、口の中から入るコトなのかーッ!
「クマキチ、この薬を飲むんだ!」
「ム、ムググッ!」
「クヒヒヒ……コレデオ前ノ身体ハ、俺ノものダ……ア、アルぇ~? ナンダ、ナンダァ……ウギャーッ!」
亡霊リーダーが、俺の口の中から身体の中に侵入すると同時に、ミューズさんも俺の口の中にナニかを投げ入れる……う、うう、もしかして薬か?
はう、すっげぇ苦いッ!
今度はなんだよ……あ、でも、俺の身体の中に侵入した亡霊リーダーが悲鳴をあげたぞ⁉
「私は死霊魔術師。そんなワケだ。亡霊リーダー、お前をソイツの身体から追い出す方法なんざぁ朝飯前ってヤツさ! ところで薬の味はどうだった、んんん~?」
「アガガガッ……セッカク得タ新タナ肉体ヲ手放サナクテハイケナイノカッ……ダガ、コノ苦シミカラ逃レルタメダ……!」
「よし、由太郎の口の中から亡霊リーダーが出てきた……え、今度は私に憑依しようと思ってない⁉」
「アハハ、そうですねー☆」
「ちょ、デメテル先生、笑ってないで助けてください!」
「ん~……仕方がありませんね。ジャーン、これを使うのです」
「うええぇ……く、苦しかったなぁ……ん、本……?」
うは、苦しかったぁ……亡霊リーダーめ!
俺の身体の外に出る時も口を介して……かよ!
そういえば、ミューズさんは不死者の親玉的な存在である死霊魔術師の資格を持っているんだったな。
妙薬、口に苦し……薬だけで俺の身体の中から亡霊リーダーを追い払いだなんて流石だなぁ!
おっと、それはともかく、俺の身体の外に出てきた亡霊リーダーがアタランテを標的にしたようだ。
むう、俺の時のようにアタランテに憑依する気だ。
だが、それを阻止すべくデメテルさんが立ちあがる……え、本?
デメテルさんは題名が書かれていないA4サイズの一冊の本で持っているけど、ソレで何をする気なんだ⁉




