外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その27
「仕方がないなぁ! よ~し、私も戦おう……ギャンッ!」
「アタランテェェェ~~~! 死ぬなァァァ~~~!」
「ま、まだ死んでないわ! し、しかし、近寄れないわね……黒いオーラみたいなモノが襲ってくるし!」
アタランテは百獣の王ライオンである。
が、しかし、子ライオンの姿をしているワケだ。
故に、俺とタヌキチという狸獣人——いや、亡霊リーダーとの戦いに参戦するが、呆気なく返り討ちに遭いぶっ飛ばされてしまうのだった。
「ゴゴゴゴ……殺ズ! オ前ら、全員……皆殺シダ! ウギャギャバババラッ!」
「ちょ、腕が増えてないか……そ、それに巨大化している!」
「亡霊リーダーに憑依されたコトで人間並みの大きさになって、ついでに筋骨隆々に……」
亡霊リーダーに憑依されたコトでタヌキチの身体は、本来の大きさの数倍の大きさに膨張する。
一緒にいる人間——デメテルさんやドリスを超える身長となり、オマケに黒いオーラのようなモノが覆う毛むくじゃらの身体は筋骨隆々と化す!
「コ、コイツッ! う、熊パンチが……ビクともしない!」
「グフォフォフォ……無駄ダ……オ前ノ攻撃ナド効果ナシだ! ソノ理由ハ俺様ガ最強ダカラダ! サア、ドコカラデモ殴リタマエ、グフォフォフォ!」
く、強者に余裕ってか?
うーむ、奴の黒いオーラのようなモノに覆われた筋骨隆々の身体に弱点はないのか、弱点は……。
「よーし、私達も協力するわよ! イイわよね、アスタルテ?」
「フン、アンタに言われるまでもないわ。んじゃ、やっちゃうか……羽根手裏剣!」
「グフォフォフォ! 今度ハ熊公ヨリモ弱ソウナあひるチャンガ、コノ無敵ノ俺ニ立チ向カッテクルトハナ!」
へ、へえ、なんだかんだと、アフロディーテとアスタルテのアヒルコンビも戦う力を持っているようだ。
そんなワケで二羽は、翼の裏に隠し持っていた何枚もの羽根のカタチをした手裏剣を亡霊リーダー目掛けて投げつけるのだった。
「お、刺さったわ!」
「だけど、あの筋骨隆々の身体にダメージを与えられてないかも……」
「ンンン~? 今、何ヲシタノカナァ~?」
「でも、羽根手裏剣が突き刺さっていた場所から白い煙のようなモノが吹き出してるんだけど……」
むむ、羽根手裏剣が亡霊リーダーの身体のあっちこっちに突き刺さってはいるけど、筋骨隆々の逞しい身体にはノーダメージか⁉
でも、妙な現象が見受けられるぞ。
亡霊リーダーが突き刺さった羽根手裏剣を引き抜く度に、その部位から白い煙のようなモノが吹き出しているしね。
「グフォフォフォ……ソロソロトドメト洒落込モウジャナイカ!」
「ハハハ、とどめを刺すだってさ☆」
「まだ気づいてないみたいね。このハッタリ野郎は……」
「はったり野郎…ダト…⁉ 弱者め、戯言ヲ言ウ」
「ああ、ハッタリ野郎だな、お前は! つーか、気づけよ。身体の大きさが、テメェが憑依しているタヌキチって狸獣人の〝元の大きさ〟まで縮んでいるコトに――」
「ナ、ナンダト!? ガ、ガアアアッ!」
ふ、ふう、やっと亡霊リーダーをぶん殴るコトができたぜ。
え、奴の身に何が起きたのかって?
ん~……例えるなら今の亡霊リーダーは、空気が抜けてフニャフニャになった浮輪のような状態である。
さて、前述したアフロディーテとアスタルテが投げつけた羽根手裏剣が突き刺さった部位から吹き出していた白い煙のようなモノの正体は空気である。
奴の身体——いや、奴に憑依されたコトで人間並みの大きさにまで身体が膨張したタヌキチの身体から、徐々に空気が抜けて縮こまったって感じだ。
要するに亡霊リーダーは、憑依しているタヌキチの身体に外気を取り込んで膨張させていたってワケだ。
「グ、グオワアアアッ! オオオ、オノレェェ……忌々シキ雪ノ女帝ノ使イ魔メ!」
「お、おい、俺は真っ白な生き物……ホッキョクグマだけど、雪の女帝の使い魔なんかじゃないぞ!」
「それはともかく、タヌキチの身体から亡霊共のリーダーが半分ほど抜け出てるぞ! 今がチャンスだ、熊公!」
雪の女帝の使い魔だって⁉
うーむ、亡霊リーダーを筆頭とした影の森に巣食っている亡霊共と雪の女帝には、何かしらの因縁があるのかもな……って、俺は使い魔じゃないぞ!




