外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その20
後日、聞いた話だけど、兎天原は古代遺跡だらけなんだとか!
んで、その七割が未発掘状態らしく誰もが一攫千金を得られる可能性を秘めているそうだ。
故に古代遺跡の発掘がブームだって話だ。
特に兎天原の東方、そして南方の古代遺跡が集中しているらしくエフェポスの村なんかは、ブームに乗って各地からやって来たトレジャーハンター等の連中の中継点として利用されているそうだ。
ちなみに、トレジャーハンターの大半が人間なんだとか――。
やっぱりか……人間ほど強欲な生き物はいないしなぁ。
ん~……元人間なだけに複雑な気分だけど、俺もそんなブームに乗って古代遺跡の発掘をしてみたくなったぜ!
おっと、それはともかく。
「ニャガルタの秘宝……一度は耳にしたコトがあるだろう?」
「え、ええ、歴史学者曰く三千年くらい昔の兎天原に住んでいた大貴族だっけ?」
「そうなのです。で、ニャガルタの総資産は当時、兎天原の東方全域を支配していたフログニア王国のケロニウス四世の三倍はあったという伝説が残っているのですよ」
「あ、それなら私も知っているわ。つーか、影の森の奥にある遺跡っていうのは、まさか……」
「ニャガルタの秘宝が眠る古代遺跡だわ!」
「うん、わらわの記憶に間違いがなければ、間違いないだろう」
ム、ムムムッ……影の森とやらの奥に、ニャガルタというトンでもない資産を保有していた古代の貴族絡みの遺跡がある…だと…⁉
もしかして、件のニャガルタという貴族の墓なのか?
うーむ、それが本当なら件のニャガルタが生前に貯めに貯めまくった莫大な財産も遺体と一緒に眠っている可能性があるな……おお、本当なら一攫千金のチャンス到来かも!
あ、ああ、だけど、影の森は亡霊が巣食う魔の森だったな……。
こりゃ危険と隣り合わせだな……。
「「「おりゃああああっ! 古代遺跡の盗掘だァァァ~~~!」」」
ん、そんないくつもの大声が、俺の背後から響きわたる……い、一体、何事ォ⁉
むう、オマケに物騒なコトを言っちゃいないか……。
「ぶ、物騒な奴らがいるんだなぁ……」
「多分……いや、間違いない。アイツらは古代遺跡ぶっ壊し隊だ」
「こ、古代遺跡ぶっ壊し隊…だと…!」
「うん、その名の通りの集団なのです。古代遺跡を破壊し、オマケに盗掘も行う外道集団なのです!」
「遺跡の破壊者であり、盗掘も行いワケだし、同時に泥棒でもあるってのか……」
「まったく、物騒な連中ね!」
「むう、そこのまるで焦げたパンのような真っ黒なアヒル! 今の言葉……物騒とは失敬な! 我々は商売を行っている。故に、その物言いは聞き捨てならない言葉だ!」
背後から聞こえてきた物騒な声の正体は、古代遺跡ぶっ壊し隊とかいう物騒な連中の声のようだ。
んで、その中のひとりが、アスタルテが口にした“物騒〟という言葉が聞き捨てならなかったのか、そんなこんなで因縁をつけてくるのだった。
「ん、コイツ……人間だぞ!」
さて、古代遺跡ぶっ壊し隊って連中だが、ホッキョクグマの子熊と化してしまっている今の俺や子ライオンのアタランテ、ついでに黒いアヒルのアスタルテ、白いアヒルのアフロディーテの同胞である獣人と鳥人で構成されているようだ。
だが、例外とばかりに、俺達に因縁をつけてきたモノは、黒いシックなパンツスーツにサングラス——とまあ、そんな某映画に出てくる工作員を連想させる格好をした長身痩躯の若い女だ。
「ん、もしかしてアナタ着ている服は対呪スーツですか?」
「如何にも——東方は鳥獣化の呪いが蔓延する不浄なる土地ですからね。それなりの対策を練った上での衣装というワケだ。それはともかく、我々のコトを物騒と罵った罰を受ける準備は整ったかな、キミ達ィィ!」
「ちょ、何を……罰を受ける準備が整ったか…だと…!」
な、何を言い出すんだ、この女!
く、なんだかんだと、コイツ……俺達に攻撃を仕掛ける気だ。
うう、マジで物騒だな。
そして、くだらないコトでイチイチ腹を立てる短気で好戦的だ……。




