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EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その10

「そういや、ピルケ遺跡って言ったっけ、ここ?」


「うん、そうみたいだな。」


「もしかして被葬者の名前が〝ピルケ〟だったりして!」


「おい、キョウ、そんなワケがないだろう?」


 うーん、兄貴はそんなワケがないって言うけど、そもそも遺跡の名称である〝ピルケ〟とは、まるで人の名前みたいだ。


 由来がわかれば、俺の予想通りの展開になるかもしれないぞ。


「ピルケと聞いて思い出した。昔、ここら辺で栄えた古代文明には生きたまま石棺に閉じ込めるという処罰方法があってね。その処罰を受けたお姫様の伝説を思い出したぞ!」


「デュオニス、それって贅沢ピルケの伝説かなぁ~?」


「ああ、そうだ。小さい時、よく聞かせてくれたじゃないか、子守歌って感じでアンタが……むう、なんでもない!」


「フフフ~ン、覚えていたのねぇ、嬉しい~☆」


「ちちち、違う! たまたま思い出しただけさ!」


「あら、デュオニス君、可愛いところあるじゃん。」


「う、うっせぇ!」


 まあ、それはともかく、昔々、ピルケという何かしら罰を受けるかたちで生きたまま石棺に閉じ込められたお姫様がいたみたいだ。


 で、そんなお姫様に名前は、俺達が今いる遺跡と同じ名前のピルケとか――。


 ハ、ハハハ、まさか偶然だろう、偶然……。


「モノは試しだ! ピルケさん、ピルケさん、扉を開けてください……開けゴマ!」


「おいおい、キョウ、ふざけんなよ~……わあ、なんだとぉ!?」


「い、岩の扉が動いたぞ!? ま、まさか! よし、僕も……ピルケさん、扉を開けてくれ!」


「お、なんか楽しそうだな! よし、俺も……ピルケ、扉を開けろ! 長き眠りから目覚める時がやって来たぞ!」


 わお、被葬者は本当にピルケとかいう古代の姫かもしれないぞ!


 玄室の岩の扉を開けるためのキーワードである〝被葬者の名前〟がピルケのようだし――と、岩の扉が地響きを奏でながら、徐々に開き始める。


「ふえ、酸っぱい嫌な臭いが立ち込めているな……ど、毒気がありそうだ!」


「大丈夫、コイツはダプネーという香木の香りが、気の遠くなるような長い年月を経たせいで悪臭に変わったモノかな? 人体に影響はないから安心していいよ。」


「むふう、ウェスタさん、ホントなのか? でも、この臭いはキツいぜ……おえっ!」


 ダプネーって香木の香りが、長い年月を経て酸っぱい悪臭へと化学変化したモノなのか!?


 と、とにかく、岩の扉が開くと同時に、玄室内に立ち込めていた嫌な臭いが滲み出してくる!


「あ、でっかい石棺がある! 赤い……赤い石棺だ!」


「こ、この石棺はルビーの原石じゃないか?」


「ああ、間違いない! しかし、なんて贅沢なモノを!」


 玄室へと足を踏み入れた俺達+αの目の前には、贅沢三昧の限りを尽くした巨大ルビーの原石を加工してつくられた石棺が鎮座している。


「このルビーの原石の石棺を持ち出そうぜ! 莫大な富を得られるぞ!」


「だけど、至難の業っすよ、兄貴! ここは地下深い場所っすから、外に運び出すなんて無理な話っす!」


 ルビーの原石の石棺を外に持ち出したいと言い出す兄貴をヤスがたしなめる。


 ごもっともな物言いだな。


 仮に<怪力>のカードを使いメリッサ達に運び出せようにも、未熟者の俺の魔力が持続する時間は、大体一分かそこらだし、中途半端なところで効果が切れるはずだから、不可能もいいところだ。


 と、その前にルビーの原石の石棺の中身って、もしかして……。


「お、おい、誰か石棺の蓋を開けろよ。」


 と、考古学者のひとりが言い出す。



 


 

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