外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その6
白い動物なんてどこにでもいるだろうに――。
例えば、エフェポスの村の郵便局の入り口のところにいた連中のひとりで鶴の鳥人であるツルキチかな?
他にもアヒルのアフロディーテなどなど……。
それなのに、何故、冬に白い動物を見かけた場合、ソイツは雪の女帝とやらの使い魔である――エフェポスの村で語り継がれる言い伝えのせいで疑われなくちゃいけないんだ、まったく!
「へえ、エフェミスの町に荷物を届けろって……面白そうじゃん。その話に乗った! そんなワケでOK! あ、当然、アンタもOKでしょう?」
「おお、話がわかるじゃないか、アタランテ!」
「うぉい、勝手に決めんな!」
「よし、私も行こう。自分で書いた小説の原稿は、自分で届けるっていう愉悦を味わいたいのです」
アタランテ、それにデメテルさん、アンタ達、何を言い出すんだ。
マジでエフェミスとかいう町にエフェポスの村の連中の届け物を持って行く気なのか⁉
ム、ムムム、俺もその仲間入りってワケだな、やれやれ……。
「雪の女帝って奴の使い魔じゃねぇって信じてもらうためには仕方のない通過儀礼だな……俺も行こう、エフェミスって町へ!」
うーむ、覚悟を決めろ、俺!
雪がなんだ……ちょっとだけ歩くのがキツだけかもしれないしな!
「なん…だと…⁉」
だが、俺のそんな覚悟の意思も一瞬でパーンと砕け散る。
アタランテとデメデルさんと一緒にエフェポスの村の外に出た途端、そりゃねぇだろうって光景に絶句したワケで……。
「おいおい、十メートル……いや、それ以上の雪の壁が、俺の左右に……そ、そんな雪道を進めっていうのか……」
目の前には小型、中型の獣が通れるほどの獣道――訂正、雪道があるんだが、その左右を十メートルを超える純白の雪の壁が……ちょ、昨晩はどんだけ降ったんだァァァ~~~!
「しかし、魔術師達も大変だったろうなぁ……」
「道をつくる作業……あのトンでもない雪を解かすだけでも大変だったと思うのです」
「魔術師ねぇ、炎の魔術で雪を溶かしたってか?」
「ビンゴ! その通りよ。名無しさん」
「あ、その前に名前を聞いていませんでしたね」
「む、むう、由太郎だ……」
「ユタロウ? 変な名前なのです」
「アハハ、確かに……お、魔術師達が戻ってきたわ」
ふむ、目の前にある雪道は、エフェポスの村に住んでいる魔術師達の苦労の証のようだ。
そりゃ、そうだよなぁ、十メートルを超えるくらい降った雪を溶かして道をつくったワケだし――。
さて、そんな魔術師達が戻ってきたようだ。
その姿が、目の前にある雪道の向こう側に見受けられるしね。
「そうそう、彼らが張った結界のおかげでエフェポスの村は、昨晩のトンでもなく降った雪の中に埋没することがなかったので感謝感激なのです!」
「へ、へえ、そうなのか? だから、村ン中には、それほど雪が……」
結界? 仕組みは知らないけど、そんな結界のおかげで昨晩、降ったというトンでもない雪の被害が出なかったってワケだな、なるほど、なるほど……って、俺には何がなんだか、さっぱりだ。
「うーむ……」
「ん、どうしたのさ、由太郎?」
「いや、当然のコトなんだなぁって思ってさ」
「え、何が?」
「村の魔術師は、み~んな獣人なんだなぁって……」
「あ、そういうことね。ちなみに、あの赤い宝珠についた杖を持っている黒い狐の獣人――クロベエがリーダーだったかな?」
前述したとは思うが、エフェポスの村に住んでいるモノの九割は獣人である。
故に、村に住む魔術師の一団も獣人のみで構成されているようだ。
ひとりくらい人間がいてもいいのになぁ……。
「白い熊の獣人か! うむ、まだ子熊のようだ」
確かに、今の俺は白い熊――ホッキョクグマではあるが、体長が一メートル前後の子熊である。
さて、雪道をつくる作業から戻って魔術師の一団のリーダーである黒い狐の獣人クロベエが話しかけてくる。




