外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その3
エフェポスの村の住んでいる連中は、その九割が犬、猫、兎、狐、狸といった小型、中型の獣である。
いや、訂正――小型、中型の動物の獣人である。
人間のように服を着て二足歩行出歩く上、喋るコトができる――獣人と言った方が正しいだろう?
ちなみに、獣人といっても身体の大きさなんかは、俺の知っている犬や猫と変わらないワケだ。
故に、エフェポスの村の中で見かける家屋なんかは、当然、小さなモノばかりである。
さて。
「しかし、今年の雪の降る量は半端ねぇなぁ……」
「爬虫類達が家から出られないって嘆いていたよ」
「雪の女帝の奴、今年は張り切りすぎだろう!」
と、エフェポスの村の郵便局へ向かう俺とアタランテがすれ違った三匹の服を着た喋る猫のそんな会話が気になってしまう。
「この辺はまだマシな方よ。酷いところなんて昨晩は雪が五メートルは降り積もったからね」
「は、はあ……」
「だから魔術で片っ端から雪を吹っ飛ばしたみたい」
「ま、魔術⁉」
「何をそんなに驚いているの? 魔術なんて普通に存在する学問みたいなモノでしょう?」
「え、そうなの? 知らなかった、そんなこと……」
雪が五メートルの高さになるまで降り積もった?
エフェポスの村ってところは豪雪地帯なのかな?
んで、それを魔術で吹っ飛ばした…だと…⁉
アタランテの話が本当なら、俺はこの先、トンでもない光景を目の当たりにすることになるんだろうなぁ……。
「あ、ところでその原稿って何? もしかして小説とか?」
「うん、その通り! デメテル先生は小説家よ。エフェラスやエフェミスといった人間達の町では大人気らしい」
「ふーん、小説家ねぇ……」
あのデメテルさんとやらは、有名な小説家っぽい。
それはともかく、人間が数多く住んでいそうな町も存在しているんだってことを知って俺はホッとしたかも……。
兎天原は人間がほとんど住んでいない地域かと思っていたしね。
「あそこが郵便局よ……ん、村のみんなが集まっているけど、何か問題でもあったのかな?」
「見りゃわかるだろう? 行ってみようぜ」
「うん、行ってみよう!」
エフェポスの村は小型、中型の獣人村だし、当然、村の中にある施設も小さなモノばかり。
それはともかく、郵便局と思われる建物の入り口のところに村人達――いや、村獣人達が集まってワイワイガヤガヤと騒いでいるんだが、何かしらの問題が起きたっぽいぞ。




