EP15 ニャーサー王と鼠兵団 その2
小さな鼠とはいえ、何匹も集まれば強大な力を発揮するのかもしれない。
そんなワケで黒猫ニャンスロットに対し、ネルソンという名の鼠兵士を筆頭としたニャメロット兵士達の逆襲が始まる……のかもしれない。
「ち~と、不味い展開だな……」
「ククククッ……鼠になっちまったとはいえ、俺達は人間だ。そんな俺達が猫一匹の苦戦する……それはあってはいけないことなんだ!」
「そうだ、そうだ! 大尉の言う通りだチュー!」
「このクソ猫ォォォ~~~! 人間様の恐ろしさを教えてやるチュー!」
ニャメロット兵達は、確かに人間である――が、今は小さな鼠である。
鼠人間と言った方がいいかな――と、それはさておき、ネルソン達が黒猫のニャンスロットに襲いかかる。
「ふう、こういう時は……逃げる!」
シャッ――と、ニャンスロットは踵を返す。
逃げるが勝ちってか?
まあ、妥当な判断かもね。
ネルソン達は小さな鼠であるが、ニャンスロットを取り囲む鼠その数は百匹以上……分が悪いのは確かである。
「逃がすな、追えェェェ~~~!」
「「「イエッサー!」」」
「むう、当然、追いかけてくるよな……だが、足の速さでは負けんぞ! 猫をナメるな、ネズ公共!」
「う、うお、猫野郎が消えた……ナヌーッ! もうあんなところにィィ!」
「むう、韋駄天足か……奴め、あの特技の使い手だったのかァァァ~~~!」
韋駄天足? 傍から見ると、まるで瞬間移動でもしたかのような足の速さってところかな?
まあ、そんな特技を使いニャンスロットは鼠人間共の包囲網から、まんまの逃れるのだった。
「ふう、ここまで来れば奴らも追いかけては……む、しつこいな……さ、木の上にでも……」
なんだかんだと、鼠人間共の包囲網から逃れるのは至難の業なのか⁉
ニャンスロットが逃げ込んだ先――サヴィア峠の兎天原東方へと続く山道の脇にある森の中にまで鼠人間共が追いかけてくる――が、五匹程度である。
「ここまで俺を追いかけてきたのは、ほんのわずか……五匹くらいか? 流石に百匹近い鼠共を相手にするのは無理だが、あの程度なら余裕だな……さて、やってみるか!」
追ってきたのは五匹程度なら――と、ニャンスロットは身を潜めていた山道の脇にある森の中に生息する木のひとつから飛び降りると鼠人間の一匹に背後から襲いかかる!
「ギャアアアアーッ!」
「まずは一匹……うりゃー!」
「ウガアアッ! 背後から襲われでチュー!」
「き、貴様、正々堂々、真正面から来いィィ……ギャー!」
「だが、断る! さ、残りは二匹だ!」
ニャンスロットは鼠人間共を一匹、倒すごとに他の鼠人間の背後に素早く回り込み、そして襲撃するという戦法で三匹の鼠人間をあっと言う間に再起不能に追い込むのだった。
「俺を追いかけてきたニャメロット兵は残り二匹……う、氷の矢……あのネズ公は魔術師か⁉」
「チッ回避したか! だが、今度はどうだッ!」
「俺も魔術を使うでチュー!」
「く、また矢のような氷の塊を! う、もう一匹は氷の矢……いや、氷の槍か!」
残り二匹の鼠人間は魔術師のようだ。
で、お得意の魔術は空気中の水分を己の魔力を使って瞬間冷凍し、矢と槍のカタチの氷の塊をつくり、ソイツをニャンスロットに向けて撃ち放つ!
「うむぅ、魔術兵がいるとはなぁ、俺がニャメロットにいる頃はいなかった筈だが……さて、その程度の氷の魔術など、俺も使えるぞッ!」
「猫の肉球型の氷の塊…だと…⁉」
「そ、そんな肉球型の氷が破裂したぁ、ウギャアアアッ!」
さて、目には目を歯に歯を――とばかりにニャンスロットは、鼠人間の魔術師に対し、猫の肉球型の氷の塊を撃ち放つ……は、破裂……いや、拡散した⁉
とまあ、それが二匹の鼠人間の魔術師の身体に氷柱となって突き刺さる!
「よし、これで俺を追いかけてきたニャメロット兵は全滅だな。さて、ニャーサー王を探してみるとするか……う、うお、危ない!」
「クククク、見つけたぞ。貴様が我らニャメロット兵団の行く手を阻むモノだな……覚悟してもらう!」
「ん、ハムスター? もしかして、お前も魔術師なのか?」
「ハムスターではない! ネズエル大佐だ! ああ、その通りだ。私は魔術師だ……時空魔術の使い手よ!」
「時空魔術⁉ う、うわ、なんだ……空間にハムスターの頭上に真っ黒な穴が……す、吸い込まれるゥゥゥ~~~!」
自分を追いかけてきた鼠人間五匹を倒したぞ!
と、そんなこんなで浮かれたのがアダになったのか⁉
新たにやって来た時空魔術とやらの使い手を自称する六匹目の鼠人間――ネズエル大佐が自身の頭上に出現させた真っ黒な空間の穴……ん、ブラックホール⁉
とにかく、ニャンスロットはネズエル大佐の頭上に出現した真っ黒な空間の穴の中に吸い込まれてしまうのだった!




