EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その41
魔剣と冠する武器には、何かしらのリスクがツキモノである。
持ち主の生命力を徐々に奪い取っていくとか、精神を壊していくとか――。
まあ、とにかく、この手の武器は装備しない方はいいだろうね。
例えタダであげますって言われても俺なら絶対に要らないって断るぜ。
さて。
「が、がああっ!」
「我が王! ぐわあああーっ!」
むう、魔剣黒十字を手にしたリスクのよって体力を激しく奪われた? 或いは別の何かしらの要因のよって身体が中の力が抜けたのかはしらないが、ドシャッとニャードレットが仰向けに転倒する。
で、その際に手放した魔剣黒十字が空中で回転しながら地面に落下……う、近くにいたコーンズの右足の甲に切っ先が突き刺さったぞ!
「アタタタァ……こ、転んでしまった……ん、何故、全身が真っ白なんだ、コーンズ?」
「…………」
「おい、返事をしろ!」
「…………」
「く、不敬な奴め! 何故、返事をしない!」
「気づかないのか、ニャードレット? コーンズは死んでいる」
「な、なんだとー! どういうことだァァァ~~~!」
「答えは簡単だ。コーンズは、その魔剣黒十字に魂を食われのだ」
「な、何ィィ! この剣に魂を食われただと? 何を馬鹿な、コレはそんな禍々しい能力を……う、うおお、コーンズの身体が崩れ落ちた……は、灰になってしまった!」
魔剣黒十字、恐るべし!
切っ先が右足の甲に突き刺さったコーンズの身体が、燃え尽きた石炭のようにボロボロと崩れ落ちる……魔剣黒十字に魂を食われたから…だと…⁉
「あの剣……ヤバすぎだろう!」
「触れただけでも魂を食われて灰になってしまいそうっす!」
「す、凄い剣だァァァ~~~! コーンズには悪いが俺は……俺が……この剣に魅了されてしまった……ウッ!」
「ニャードレットが苦しみ始めたぞ! 何が起きたんスかね、兄貴?」
「馬鹿、気づかないのか? 見ろ、アイツの猫面を――」
「う、うわあああ、なんか崩れてないっすかぁ、アイツの顔……」
さて、なんだかんだと、魔剣黒十字を手にしたリスクがニャードレットの猫面に現れ始める……う、うわぁ、顔面の皮膚がボロボロと崩れ落ち中身が……顔面の赤々とした筋肉は丸見えの状態になっている!
「な、なんだぁ……顔が超痛いっ……う、うがあああっ! 今度は左腕が……ヒ、ヒイイッ! 俺の左腕がもげた……いや、砕けた!」
バキンッ……と、そんな硬い岩にヒビが入るような音が聞こえてくる。
その刹那、ニャードレットの左腕の二の腕から下がボロボロに砕け散る……お、おいおい、まるで野晒しにされた石像の身体の一部が風化して地面に落っこちたって感じじゃないか!
「おおおお、俺の左腕がァァァ~~~! な、何が起きたんだァァァ~~~!」
「むう、今からでも遅くはない! その剣を……魔剣黒十字から手を放すんだ、ニャードレット!」
「だ、黙れぇぇぇ~~! ウ、ウギャアアアアッ!」
「既に遅しってところだな、ニャーサー……」
「うむ、魔剣黒十字の柄を握るニャードレットの右手まで崩れ落ちてしまったからな……」
魔剣黒十字を握るニャードレットの右手が灰と化し、崩れ落ちる。
こうなっては、もう救いようがないのかもしれない。
「とりあえず、アイツの身体はもう崩れ去ることはないと思うぜ」
「うん、柄を握ってた右腕が砕け散ってしまったからね」
「なあ、あの剣に興味があるんだが、要らないなら貰ってもかまわないよな?」
「ええ、興味がある⁉ 封印することをオススメするぜ……」
あ、ああ、なるほど、魔剣黒十字の柄を握っていた右手が砕け散ってしまったワケだし、一応、手放したことになるか……ん、それじゃニャードレットが救われたのかな?
さて、魔剣黒十字に興味があるってリュウコが言い出す。
おいおい、物好きだな、、まったく。
その前にアレは封印した方が絶対にイイと思う代物だ。
なんだかんだと、持っているだけで厄災をもたらしそうだしね。
オマケにニャードレットのように身体の一部が崩れ落ちてしまうかもしれない。
「ヒ、ヒヒヒッ……」
「むう、何を笑っている」
「フヒヒヒ……おかしくてたまらんよ。何故か? フフフ、この俺の身に何かあればサヴィア峠に待機させてあるニャメロットの一万人の兵士が、ここへ雪崩れ込んでくるからよ!」
「「な、なんだってー!」」
「フフフ、今頃、この村に潜んでいた俺の下僕共がサヴィア峠に伝令のために向かっている筈だぜ!」
「おい、その下僕っていうのはマルタとアオイってふたりの女だったりする?」
「うお、何故わかった!」
「むう、アイツらだったか……とにかく、兵士一万人がここに雪崩れ込んでくるとか不味すぎるだろう!」
ニャードレットの奴、自分の身に何か遭った時に備えてサヴィア峠とやらに兵士一万人――軍隊を待機させていたのか……何気に抜け目がないな、コイツ!
ちなみに、サヴィア峠とは兎天原の東方と西方の狭間にある峠である。
「さてと、例え軍隊が来るとはいえ、何か忘れちゃいないかしら?」
「む、お前はウェスタ! それに愛梨……ついでにオマケ達!」
「オマケとは失敬な! とにかく、人間なんて恐れるに足りずよ!」
ん、ウェスタ達がリュウコの屋敷前にやって来る……え、何かを忘れている…だと…⁉
それに人間、恐れるに足りず?




