EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その39
魔族は魔界からやって来た悪魔の眷族だとか色々、言われているが、兎天原に住む確固たる一種族である。
まあ、嫌われてはいるけどさ。
さて、妖魔だけど、アイツらは魔族とは異なる存在だ。
何せ、零落した神の成れの果てだったり、マジモノの――純血種の怪物だしな。
しかし、案外ちょろいモノもいるようだ。
魔術師コーンズに使役されて右腕が左腕の三倍は巨大な小鬼――隠形鬼が良い例だろう。
「うおおお、わしの使い魔共がァァァ~~~! この外道……毒殺とかマジで外道か、貴様ッ!」
「むう、予期せぬ出来事だったんだ。ま、そんなワケだからさ、外道呼ばわりすんな!」
「言い訳をするな! わしの……わしの可愛い使い魔共を皆殺しにしやがってェェェ~~~!」
「か、可愛い? うーん、あんな化け物のどこが……」
魔術カード<毒波動>を使うことで発生する霧は人畜無害のモノである。
まあ、なんだかんだと、毒々しい紫色なのが珠の傷なんだけどね。
が、一方で人外――主に妖魔には猛毒の霧と化す!
故に、アレを吸い込んだコーンズの使い魔共こと隠形鬼は、一斉に再起不能となったワケだ。
つーか、俺を外道呼ばわりすんな!
姿を見えなくする魔術こと隠形の術を行使する隠形鬼という妖魔を従えてニャーサーを暗殺しにやって来たクセに!
「ハハハ、お得意の殺人魔術の実態がバレてしまったようだな、コーンズ!」
「お、おお、我が王! ま、まさか、アナタまでここに!」
「む、お前は……ニャードレット!」
ん、仮面なのかは知らないけど、背の高い猫頭人身の人物がコーンズの背後に現れる……え、ニャードレット⁉
ニャーサーの息子であり、彼を追放し、オマケの暗殺を目論んでいるっていう……おいおい、ソイツ自らがエフェポスの村にやって来たのか!
むう、自らの手で父ニャーサーに引導を渡すつもりか……いや、そうに違いない。
「そこの喋る糞猫! 何故、俺の名がニャードレットだとわかったのだ! その前に何者だ!」
「喋る糞猫だとぉ? ハハハ、貴様こそ猫ではないか、ニャードレットよ」
「だ、黙れ……黙れ、黙れ! 好きで猫人間といった姿になったワケではない!」
「まあ、それは同じだな。さて、何故、お前の名前がわかったのかを教えてやる。それは余こそお前が暗殺しようと目論んでいるモノ――即ち、父親のニャーサーだからだ」
「な、なんだってー! そんな馬鹿な……ち、父上は筋骨隆々のヒゲのオッサンの筈だ!」
「ん~……その調子だと、兎天原の東方及び南方で蔓延している獣化の呪いのことを知らんようだ」
「う、うむ、そのようだな……」
ニャードレットが猫頭人身といった姿なのは、やはり禁忌王ハビルフが古代の兎天原に於いて東方及び南方全域という広範囲に蔓延させた獣化の呪いの影響のようだ。
で、そのことをまったく知らないクセに、ここへ――エフェポスの村にやって来たっぽいぞ。
やれやれ、来る前に調べておけってヤツだな。
「なんだかんだと、身体の一部が動物に変化した時点で身を守る魔力が皆無……アウトってこった」
「やれやれ、何も知らずに余を暗殺しに自らやって来たのか、この馬鹿息子め……」
「馬鹿息子だと? フン、何を言う。俺の父親が猫のワケがないだろう。ふざけるな!」
「ああ、あの返答から考えて何もわかっちゃいないようだ」
「うん、馬鹿息子って言っても間違いないね。何故、自分が猫人間になってしまったのかを理解すらしていないし……」
「き、貴様ら! さっきから馬鹿馬鹿と連呼しやがって! 許さん……許さんぞォォォ~~~!」
そういえば、コーンズの奴は身体のどの部位も獣化していないな。
あの爺さんは獣化の呪いから身を守る術でもある自身の魔力が常人より高めなのかもしれない。
が、一方でニャードレットは頭が猫化してしまっているし、そのうち父親のニャーサーと同様、肉体がヒトのモノから猫のモノへと変化してしまうんだろうなぁ、恐らく。、




