EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その36
「ワハハハ、よく来たな。ここにある食べ物を全部食っていいぞ!」
「お、おう……それじゃいただきま……う、なんだ、これは⁉」
「ん、それはマンモスの脳みそだ。美味いぞ~☆」
「は、はあ……」
兎天原には俺が本来いるべき世界では、すでに絶滅している動物が多々、生息している。
例えば、ジャイアントモアとかドードー、オマケにマンモスなんかも――。
で、俺の目の前には、そんなマンモスの脳みそのシチューなんてモノが……。
ぐ、ぐぬぬ……何気に食べるのに躊躇してしまうモノだぞ、おい!
「な、なあ、マンモスの脳みそ……いやいや、マンモスを捕まえたのって、当然、アンタだよな、リュウコさん?」
「無論だとも! つーか、見た目はこんなんだが、俺は強いぜ!」
「ド、ドラゴンだしな。それはわかっている……わかっているつもりさ」
さて、今、俺がいるのはエフェポスの村の古老のひとりであるリュウコってモノの屋敷内だ。
んで、そんなリュウコだけど、見た目は猫ほどの大きさの小型の空飛ぶ頭に角の生えた蜥蜴……訂正ドラゴンである。
小さいとはいえ、最強生物ドラゴンなのかな?
マンモスを屠り、その食材――脳みそをぶち込んだシチューを振る舞ってくれたワケだし――。
「なあ、お前ら今、暇か? ジャイアントモアの卵を採集しに行かないか?」
「行ってみたいが、今はそれどころじゃない。この猫を狙っている刺客が、どこにいるかわからない状態なんだ。だから下手に動けない!」
ジャイアントモアの卵を採集しに行こう――と、リュウコに誘われる。
うーむ、行ってみたい気もするが、ニャーサーの命を狙う彼の息子ことニャードレットが差し向けてきた刺客が、どこにいるかわからない状況なので、下手に動けないんだよなぁ……。
「そうか、それは残念だ。それじゃ刺客狩りと洒落込もうじゃないか!」
「え、えええ、刺客狩りだって⁉」
「うむ、ならば手伝おう。道は自分で切り開かねばいかんって言うだろう?」
「ニャーサー……やる気なのか⁉」
「うむ!」
むう、リュウコが今度はニャーサーに対し、ニャードレットが差し向けた刺客を狩ろうって言い出す。
え、続けざまにニャーサーが道を切り開くって言う――自分を狙う刺客共をリュウコと共に狩るつもりなのか⁉
「お、ウワサをすればなんとやらだな。俺の家の外を怪しい連中がうろうろしているぜ」
「む、むう、早速、迎え撃つとするか、リュウコ殿!」
「おう!」
ウワサをすれば影――怪しい輩がリュウコの屋敷の外をうろうろしているようだ。
でも、よくわかったなぁ――あ、ああ、なるほど、外の様子を窺える魔法の鏡のついた首飾りをリュウコは首からぶら下げているようだ。
「その魔法の鏡を見せてくれ……ム、ムムムッ……コイツは魔術師コーンズ!」
「ん、有名な奴なの?」
「うむ、アイツ――魔術師コーンズは対象物をどんな方法かは知らんが、身体が雑巾を絞るかのように捻じ曲げるって聞いたことがある!」
対象物を雑巾を絞るかのように捻じ曲げる⁉
が、その方法がわからないと迂闊に近寄れないぞ、魔術師コーンズとやらに――。
「奴の殺人技――いや、殺人魔術って言った方は正しいかな? とにかく、その方法を見破らない限り、こっちが危険だ!」
「よし、それなら私が身を以って味わってきます!」
「うお、フィンネア、いつの間に……あ、ちょっと待て!」
俺の隣に金髪ロン毛の女のコの姿が――フィンネアだ……って、お前、いつの間に⁉
そんなフィンネアは友人であり、ゾンビであり、そして俺のことをお姉様――と、呼んで慕う使い魔でもある。
むう、ゾンビは不死身である――とはいえ、魔術師コーンズの殺人魔術を見破るための人身御供にするワケにはいかないな!
『キャアアアアアッ!』
うお、早速とばかりにフィンネアの悲鳴が!
魔術師コーンズが行使する未知の殺人魔術に被害を受けたようだ。
く、迂闊に近寄ることができないけど、フィンネアを助けに行かねば――俺は急ぎ足でリュウコの屋敷の外へ飛び出すのだった。




