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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その30

 魔族って連中は神々の敵だとか言われているけど、実際のところはどうなんだろう?


 大昔の人間が、そんな魔族達の異形の容姿を忌避し、神々の敵に据えたんじゃないだろうか――。


 ま、そこら辺の詳細は迷宮図書館へ出張ればわかるんじゃないかなぁ?


 あそこは兎天原にまつわるすべての歴史が記されている筈だしね。


 それはともかく。


「殺し屋を探して捕まえる……イイですね。活動資金を欲しかったところですし、協力してもいいんじゃないですかぁ、愛梨さん☆」


「え、メリッサさん、賛成なワケ⁉」


「うん、私はゾンビですので、きっと役に立ちますよ☆」


「うむ、これで決まったな! よし、早速、殺し屋を探すわよ、愛梨!」


「ちょ、あっちゃんまで……か、勝手に決めないでよォォォ~~~!」


 なんだかんだと、愛梨以外は賞金稼ぎのヴィネの協力要請に前向きだな――ったく、無謀な奴らだ。


 殺し屋――またの名を暗殺者(アサシン)は殺人、殺獣のプロである。


 故に、油断のできない相手だ。


 どんな殺人技を有しているかわからない存在でもあるし――。


「お嬢様、手配書の男です」


「シュルツ、ご苦労様。さて、早速だけど、あの男を捕まえるわよ。捕まえれば、そこそこの報酬をもらえると思うわ!」


「え、捕まえたら賞金がもらえるようなド外道がいるの!」


「ああ、あの男だ。人間の領域じゃそこそこ有名な殺人鬼だ。このまま野放しにはできないだろう?」


「えええ、殺人鬼⁉ 見た目は優しそうな太ったオッサンだけど、殺人鬼なら確かに野放しにはできないわね!」


 如何にも無愛想な背の高い若い男が駆け寄ってくる。


 で、名前はシュルツ。


 執事の爺さんと同じくヴィネの仲間のようだ。


 ん、それはともかく、殺人鬼だって⁉


 シュルツが指差す先に太った眼鏡の大男がいるけど、もしかしてアイツが――。


「ちょっと、その手配書を見せてもらいますね。ん~健康薬品と偽って毒薬を売るエセ薬剤師ゾルゴンですね。被害は十人程度ですが、あのオッサンにつくった薬のよって亡くなったモノも……」


「ふええ、そういう輩はどの世界にもいるんだ……困った、困った」


「でも、なんだか弱そうですね。私でも捕まえられるかも……よし!」


「あ、メリッサ! そういう油断が命取りになるわよ!」


 ふむ、エセ薬剤師のゾルゴンねぇ。


 で、コイツがつくった毒薬を健康薬品と信じて飲んでしまったモノが十人もいるのか――。


 外道、奴は魔術師ではないけど、同じく薬剤を使うモノとしては許されざる!


 だからといって油断しちゃいけない相手だと思うのだが、メリッサがズカズカとそんなエセ薬剤師のゾルゴンの歩み寄る……おいおい、大丈夫かぁ?


「そこの太ったオッサン……いや、エセ薬剤師でオマケに殺人鬼のゾルゴン! お前のようなド外道がお日様も下を歩くだなんて言語道断! 捕まえて牢屋にぶち込んでや……ぐぎゃ!」


「あん、なんだ、コラ! これ以上、痛ぇ目に遭いたくなきゃ、俺様に近寄るんじゃねぇ!」


「はうう、いきなり……いきなり攻撃をするだなんて……卑怯ですよぅ!」


「あ、ああ、メリッサさん! エセ薬剤師のゾルゴンを指差したメリッサさんの右手の人差し指が破裂した! ま、魔術を使ったの?」


「アレは魔術と異なる技よ、愛梨。きっと爆砕丸薬を指弾って感じで爪弾きにしたんだわ。それでメリッサの右手の人差し指に直撃し……あ、ああ、そういえば、メリッサはゾンビだったわね。うん、右手の人差し指が吹っ飛んだ程度じゃ痛くも痒くもない筈よね?」


「アフロディーテさん、キョウ様がいないと修復できませんし、無事でとは言えません!」


「さて、ちと気になったんだけど、あのゾルゴンというエセ薬剤師は、毒薬秘拳の使い手かもしれないわね」


「ふええ、名前から想像すると、如何にも暗殺拳って感だわ!」


「そ、そんなことより、あのゾルゴンってエセ薬剤師が逃げ出したわよ!」


 むう、爆裂丸薬⁉ 


 飲み込んだモノを体の内側からパーンッ――と、爆破する毒薬秘拳都やらの使い手が使う暗殺用錠剤ってところかな?


 ソイツをゾルゴンの奴が指弾――つまり爪弾きにしてきたってワケかだ。


 しかし、なんという外道!


 メリッサが話しかけた途端、先制攻撃をしかけてきたことだし――え、逃げた⁉


「奴はなんだかんだと殺人鬼として手配書に名を連ねる悪党だ。居場所等がバレりゃ同然、逃げる筈だ」


「そんなことはどうでもいいわ。さっさと捕まえるわよ、シュルツ!」


「ウィーッス、お嬢。面倒くさいけど、追いかけますか――」


「ジイも負けてはいられませんなぁ!」


「愛梨、私達も追いかけるわよ!」


「う、うん!」


「あのオッサンには右手の人差し指の治療費を払ってもらわねば!」


 ゾルゴンの奴、太ってるクセに意外にも俊敏だぞ!


 ひょいひょいとエフェポスの村の中を行き来している通行人、通行獣を素早く避けながら、商店街がある村の中心へと向かって疾走する。

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