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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その22

 魔術カード<爆裂の赤い石>から吹き出した赤い光は、徐々に青い光へと変わり、そして最終的に真っ白な炎に変わったところで消え失せる。


 まるで何もなかったかのように――。


「うう、サウナの中にいるかのような熱も感じたんだが……気のせい?」


「しかし、あの光は目に悪すぎる……あ、あれ、ヨーヘインって狐がいないわ⁉」


「見ろ、奴なら……あ、あれ、小さくなっちゃいないか?」


「子狐になってしまったって感じっすね」


「さて、あやつを救ったのだな?」


「ま、そうなるかなぁ、〈爆裂の赤い石〉は〝偽者〟を省き〝本物〟を炙り出す効果があるからな。そんなワケで偽者――分身が消え失せたって感じだ」


 赤、青、白と変化し消えていった魔術カード<爆裂の赤い石>から吹き出した光が消え失せると同時に、俺は両目をゆっくりと見開く――ん、ヨーヘインが子狐と化し、大の字になってぶっ倒れている!


 お、奴の五十体にも及ぶ分身を上手い具合に、すべて消え失せたようだ。


 魔術カード〈爆裂の赤い石〉は、名前から考えて如何にも爆風を引き起こし、周囲の物体を破壊するって感じだが、その実態は上で説明した通りの効果だったりするワケだ。


「ちょ、なんで子狐になってんだよ、アイツ!」


「うむ、分身の術を乱用し、術者自身が消えてしまう副作用のよって消えかけたヨーヘインの残りカスと言ってもいいだろう」


「ふーん、残りカスねぇ……」


 なんだかんだと、俺はヨーヘインを救ったことになるワケだ。


 あそこで〈爆裂の赤い石〉を使ってなかったら、多分……いや、間違いなくヨーヘインは分身の術の乱用をしたことで起きる副作用によって消えていただろうし――。


「よし、とりあえず、この鳥籠の中に閉じ込めておこう。子狐と化したコイツなら……お、入った入った」


「ウミコ様、早く鳥籠の扉に鍵を! ヨーヘインとやらが目を覚ましたし――」


「う、うおおお、俺は何故、何故……こここ、こんなに小さく⁉ き、貴様、俺の身体に物体縮小魔術をかけたな!」


 さて、子狐の姿と化したヨーヘインをウミコとウクヨミが、鳥籠の中に放り込む――と、その前に、お前達、いつまで人間の姿でいるんだぁ?


「さてと、なんだかんだと気になっていたんだよなぁ。お前らにニャーサーを捕まえろって依頼したモノが何者かってことが――」


「さあ、話してもらうぞ、ヨーヘインとやら!」


「だ、誰が語るかよ! 俺達グランベリー盗賊団の頭目であるシュガーラを牢獄から解放する代わりに、元ニャメロットの王ことニャーサーとかいうオッサンを捕まえてきてくれって依頼してきた御方……魔女モルニャン様のことを口が裂けても――アッ!」


 むう、ヨーヘインの裏にいる奴が気になるぜ。


 この際、ソイツが誰なのかってことを明らかにしなくちゃいけないな! 


 しかし、素直に語るワケがないよなぁ……え、なんだか呆気なく暴露してしまったぞ、魔女モルニャン様って――。


「むう、モルニャンだと⁉」


「知っているのか、ニャーサー!」


「うむ!」


「で、どんな奴なんだ?」


「ありていに言おう――兎天原西方で悪名高き魔女だ!」


「ま、魔女⁉ ハハハ、東方(こっち)じゃ特に珍しい存在じゃないな」


 魔女モルニャンか、兎天原の西方じゃ悪名高き存在のようだけど、東方じゃ魔女は特に珍しい存在ではないんだよなぁ。


 エフェポスの村を筆頭に兎天原東方にある村や町には、必ずひとりは住んでいるしね。


 とはいえ、魔女といっても獣の姿をしているモノも多々――あ、俺も魔女に種別(カテゴリー)されているモノだってことをすっかり忘れていたぜ☆


「あの魔女がニャードレットと手を組んだのかもしれん! こりゃ一大事だ!」


 ギンッ――と、恐怖心からなのかニャーサーの真っ白な全身の毛が逆立つ!


 うーむ、モルニャンって魔女は、そんなにヤバい存在なのか⁉


「モルニャンはエフェポス魔術会議で決められた魔術に関しての禁止項目を無視しまくる外道だ! 例えば、操屍術を行使し、戦争で死んだ兵士をソンビとして再利用するなど――」


「そ、そうなのか、死んだ兵士をゾンビとして再利用ねぇ……」


 エフェポス魔術とは、確か五百年ほど昔、兎天原全土の有力な魔術師達が、エフェポスの村に一堂に会し、ジャンルに問わずありとあらゆる魔術が混在し、混沌としていた当時の魔術界の今後をどうするか――という感じで行われた会議のことだったな。


なるほど、件のモルニャンとやらは、そんなエフェポス魔術会議において取り決められた使用の制限、或いは使用することを禁止された系の魔術を自由気ままに使う輩ってワケだな。


 うーむ、それが本当なら、確かにヤバい相手はかもしれん――う、そういえば、俺も操屍術を使える危険人物のひとりかもしれん!


 何せ、俺は死霊使い手というワケだし――。

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