EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その17
メフィストは本当に正体不明の存在だ。
それを顕著に見せつけてくれた例を言うならば、霧とか雲といった空中を漂う不定形なモノに変身したアイツを食べてしまった死霊使いズフォックの下僕である複数体の悪霊が、なんと食べてしまった筈のメフィスト――新たなメフィストとして新生したことかな?
しかも九体――メフィストナインと言っても間違いない数の新たなメフィストが誕生したワケだ。
ハハハ、数的に野球チームを組めるじゃん!
さて、そんなメフィスト……いやいや、メフィストナインがズフォックを一斉に攻撃を仕掛けるのだったが、その攻撃がスルスルとすり抜けていく……ちょ、これじゃズフォックに攻撃を仕掛けた意味がないだろう!
「おいおい、あの狐は無傷だぞ!」
「数が増えても、どいつこいつも実体がない。だから物理的ダメージを当たらないって原理だろう」
「お、兄貴が珍しく知的なことを言っているっす!」
「ハハハ、俺だってたまには……ん?」
「兄貴、どうしたんっすか?」
「むう、あのズフォックって野郎、気絶しちゃいないか?」
「気絶してる? ああ、ホントだ。白目を剥いて気絶している!」
え、ズフォックは気絶している⁉
どこからどう見ても無傷なんだが……。
「あ、わかった! メフィストはアイツの精神を攻撃したんだわ。だから、アイツは……」
「あ、ああ、なるほどォォォ~~~!」
「ビンゴ! ボクは……いや、僕達は奴の精神を破壊したんだ」
む、実体がない故に物理的なダメージを与えることができなかったが、その一方で精神的なダメージは通用するようだ。
それでズフォックは精神を破壊されて立ったまま気絶してしまったのかな……お、一応、生きているみたいだ。
「ニャハハハ、殺さずに倒す……素晴らしいとは思わないかい?」
「お、おう、だけど、精神を破壊されたワケだし……」
肉体的な傷は、傷薬や魔術でなんとかなるけど、ズフォックは精神を破壊されたワケだし、そう易々と回復することができるんだろうか……。
ま、俺に関係ないが、とりあえず回復することを願っておくか、一応、同じ死霊使いだしね。
「あ、コレはもらうよ☆」
「うお、いつの間に……ま、まあ、約束だしな」
「しかし、ズフォックとやらに訊きたかったなぁ。アラグニャインや他の円卓の騎士の現状を……」
むう、いつの間にかヘルメススイーツの無料チケットがメフィストの手に……ア、アレ、ひとりしかいないぞ⁉
ま、まあ、とにかく、ウミコの屋敷の二階へと進もう。
もう一階には、グランベリー盗賊団の団員はいないしな。
「はい、この縦笛が欲しかったんでしょう?」
「あ、ああ、コイツを吹いたら何が来るか楽しみなんだ。ウミコとウクヨミを助けた後に試してみるかな」
「フーン……あ、それじゃ、ボクは早速、ヘルメススイーツへ行こうかな」
「ちょ、最後まで付き合え!」
「ニャハハ……断る!」
「断るだって⁉ おいおい!」
「あ、そうだ。上の階には、荒縄で拘束された二羽の兎と柄の悪い狐がいるだけだよ。だから、ボクがいなくても大丈夫☆」
「うお、メフィストが消えた……その他も一緒に……ったく、身勝手な奴め! 最後まで付き合う義理もないのか!」
花より団子、仲間よりケーキ――とばかりにメフィストの奴、最後まで俺達に付き合う気はないようだ。
だが、二階を偵察してくれただけでも、とりあえず、ありがたく思わないね。
それにズフォックの縦笛もGETできたしな☆
で、どうやら残りのグランベリー盗賊団の団員は、二階にいるひとりのみのようだ――と、
判明する。




