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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その13

 身動きを封じる魔方陣を踏んでしまったがために全身が弛緩し、動けなくなってしまったアルテミスの脳天目掛けて、グランベリー盗賊団団員は頭上に振りあげた鉄パイプの冷酷な一撃は繰り出そうと振りおろされる。


 その刹那、グシャァッ――と、そんな甲高い嫌な音が響きわたる。


 例えるなら、飛び降り自殺を決行したモノが、勢いよく地面と衝突する時に生じる音、或いは巨人族や巨大怪物の巨大な足の下敷きとなってしまったモノが、その重みに耐えられる潰れてしまう時に生じる音ってところだろうか?


「熊公、脳みそが潰れた感想を言ってみろや! ああ、脳を破壊されりゃ一撃で再起不能か……な、なんだとー!」


「イタタタァッ……お、おい、何をする馬鹿!」


 プクゥ――と、脳天に痛々しい大きなタンコブができてしまったけど、アルテミスは無事である。


 ああ、無事で済まなかったのは、そんなアルテミスの脳天目掛けてグランベリー盗賊団団員が降りおろした鉄パイプの方である。


 で、本来なら決して曲がらない方向にグワンと湾曲してしまっているしな。


「う、うおおお、なんて石頭なんだ!」


「石頭というか鋼の頭って言ってもらいたいところだ! く、だが、この〝頭〟で反撃できんのが辛い! ううう、なんとかならんのか!」


 アルテミスの頭蓋骨の強度は、まさに鋼である――いや、多分、それ以上の強度はあるだろうなぁ。


 で、そんな頭で頭突きをされたらって思うとゾッとするぜ。


 だが、そんなアルテミスは一切、動けない。


 足許で煌々と輝く魔方陣の効果によって金縛り状態が続いているというワケで――。


「うーむ、もしかすると熊の姿に変化した生きてる液体金属?」


「金属生命体ってヤツか! す、すげぇ、捕まえたら多額の賞金間違いなしって感じの超レアな生き物だぞ!」


「そういや、そんな液体金属生命体は逃げ足がトンでもなく早いって聞いたことがあるガウ」


「コ、コラーッ! 私はそんな奇妙な生き物と一緒にすんな!」


「え、違うの?」


「違うに決まってるだろう! 私はタダの可愛い子熊だ!」


「お、おい、テメェら! 俺様を無視すんな! つーか、頭の硬さは鋼でも胴体はどうかな……うらぁ!」


「アイターッ! おおお、お前、今、私の尻をひん曲がった鉄パイプで叩いたな! ケツバットはマジで痛いッ!」


 アルテミスは熊の姿に変化した命を持った液体金属なのかも⁉


 本気でそう思ったけど、どうやら鋼の硬度があるのは頭蓋骨だけっぽうなぁ。


 とまあ、そんな感じで弱点(?)に気づいたグランベリー盗賊団団員は、ひん曲がった鉄パイプでアルテミスの尻をぶん殴るのだった。


「アルテミスを助けるぞ!」


「うん、だけど、容易に近寄れないわよ。ほら、アルテミスとあの狐がいる周辺の床を見て!」


「わ、わお、魔方陣があっちこっちに……む、むう、これじゃ近い寄れない!」


「流石は狐……狡賢くあっちこっちに魔方陣を仕掛けていたなガウ!」


「ちょ、その前に、私達もいつの間にか魔方陣に囲まれている! と、とりあえず、今いる位置は大丈夫だけど、下手に動くと魔方陣を踏んでしまうわ。むう、アルテミスみたいに動けなくなっちゃうかも!」


 気づけば、ドーンッ――と、大フレイヤ、小フレイヤ、サキの足許にも無数の魔方陣が――。


 むう、下手に動くと、そんな魔方陣を踏んでしまいかねない状況に、大フレイヤと小フレイヤ、それにサキは陥ってしまっている!


「ワハハハ、俺様は人呼んで魔方陣マスター! その名はタケ……う、うわああ、なんだ……なんだァァァ~~~! くくく、来るなァァァ~~~!」


「ちょ、何が起きたんだぁ?」


「う、動けるようになったぞ! この駄狐がァァァ……って、白目を剥いて口から泡を吹いているぞ⁉」


「よっしゃ、上手くいったぜ。〈幻覚〉のカードは効果抜群だ!」


「あ、キョウ! 遅かったな……ん、奴の額にカードのようなモノが……」


 魔方陣マスター…だと…⁉


 なるほど、それであっちこっちに魔方陣を仕掛けられたのか――。


 が、名前を名乗る前に当然の再起不能である。


 何せ、丁度イイ具合に駆けつけた俺が投げ放った俺専用の魔術カードデッキの中の一枚――〈幻覚〉のよって魔方陣マスターを自称するグランベリー盗賊団団員は、大フレイヤ達が名状しがたきトンでもなく恐ろしい怪物に変化するカードの名称の通り〝幻覚〟を見てしまったワケだ。


 ま、そんなワケで正気でいられなくなり、ギュルンと白目を剥いて口から泡を……ああ、気絶しただけだぞ。


「俺は人を……ああ、獣は殺さない。不殺ってヤツさ! さて、二階へ行くぞ!」


「イイところを持っていかれた気がする……」


「ちょっと、待って! また誰か降りてくる! 赤い鍔広の帽子を被っている狐だ」


「ム、ムムムッ……アイツが被っている帽子は、確かアグラニャイン卿の部下の証……むう、余の命を狙う愚息ニャードレット以外の円卓の騎士も余の命を狙っているのか⁉ く、ニャードレッドに与するモノが増えたということか――」


 ニャードレットといえば、ニャーサーの命を狙う存在であり、彼の息子でもあったな。


 で、そんなニャードレッドに与するモノかもしれない円卓の騎士アグラニャインかぁ……。


 なんだかんだと、ニャーサーには命を狙うモノ――敵対者が多いのかもしれない。

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