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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
623/836

EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その12

「むう、分が悪いな……」


(分が悪い⁉ どういうことだ?)


(私に訊かれても困る!)


(ま、まあ、とにかく、あの物言いこら、この場を切り抜けるチャンスが到来したのかも!)


 と、ウミコの屋敷の物置小屋と化している一階のそんな隠れる場所が豊富な一階の物陰に潜む大フレイヤ達の存在を香水の匂いで察知したっぽいふたりのグランベリー盗賊団のひとりが、そう言うと、大フレイヤ達が実を潜める木箱の手前までやって来たのにも関わらず数歩、後退りをする。


「おい、何を言い出すんだよ!」


「馬鹿、お前にはわからんのか? この香水は人間の女が好む匂いだってことが――」


「ま、まあ、わからんでもないが、それがどうしたんだよ?」


「むう、よくよく考えてみろよ。今の俺達は狐だぞ。まあ、喋れるし、二足歩行で行動もできるが、身体の大きさは普通の狐と変わらん!」


「だ~か~らぁ、それがどうしたっつうの!」


「まったく、馬鹿だなぁ、お前は! 身体の大きさから考えてみろよ」


「あ、ああ、そういうことか! 身体の大きさ的に分が悪いっていいたいんだろう?」


「そういうことだ。オマケに、俺達は丸腰だ。仮に武器を携えていたら、か弱い人間の女とはいえ、驚異的な存在と化す!」


「くそぉ、狐になっちまったことを後悔するぜぇ!」


 ああ、なるほどね。


 そんなワケで分が悪いと――。


 まあ、確かになぁ、腕力は男性に劣る女性とはいえ、武器を携えた状態なら剣術等の修練を積んだモノじゃなくても狐程度の大きさの獣なら退くことが可能だと思う。


 故に、歌姫の大フレイヤ、そして学生である小フレイヤでもなんとかできる相手かもしれない。


(あの狐さん、私達を恐れている?)


(ああ、そんな感じの会話をしてるな)


(で、どうするんだ?)


(決まってるじゃん! ウミコやウクヨミを助け出す前に敵さんを少しでも潰しておくべきよ!)


(うむ、ならば、一斉に襲いかかるぞ! ここには物置小屋だ。武器になるようなモノが……角棒なんかもあるしな!)


(よし、私も手伝うぞガウーッ!)


 ウミコの屋敷の一階は物置小屋である――と、そんなワケで武器になりそうなモノも多々、見受けられる。


 例えば、角棒とか……え、ゴルフクラブ⁉


 兎天原でもゴルフをプレイしてるモノがいるとか?


 それはともかく、大フレイヤ達は角棒、それにゴルフクラブを手に取ると、身を潜めている木箱の陰から飛び出すのだった!


「うおおお、なんだ、テメェらは! グ、グエーッ!」


「通りすがりの正義の味方だ!」


「ちょ、言ってて恥ずかしくない?」


「うっせぇな! とにかく、コイツらをぶん殴る!」


 ドゴォッ――大フレイヤがぶん回す角棒が、ふたりいるグランベリー盗賊団の団員のひとりの脳天にクリーンヒット!


 で、プクゥと大きなタンコブを作りながら、そんなクランベリー盗賊団の団員のひとりは、床に勢いよく突っ伏すのだった。


「ヒ、ヒエエッ!」


「よし、私が奴を捕まえる!」


「アルテミス、ソイツを追いかけちゃ駄目だ! 何がおかしい!」


 仲間がやられた――というワケで、もうひとりのクランベリー盗賊団団員が逃げ出す。


 その後をアルテミスが間髪入れずに追いかけるのだったが――。


「う、うぐぅぅ!」


「ア、アルテミス、どうしたのよ、一体⁉」


「見ろ、アルテミスの足許を――ッ!」


「き、奇妙な幾何学模様が刻まれた円陣がアルテミスの足許に⁉」


「身動きを封じる魔方陣だガウー! アレを踏むと全身が弛緩して動かなかなくなるガウ! 私もさっき同じモノに引っかかったガウー!」


「ちょ、そんなモノが仕掛けられているなら、早く言ってよね!」


「ニャハハハ、すっかり忘れていたガウー☆」


 身動きを封じる魔方陣…だと…⁉


 逃げ出したグランベリー盗賊団団員を追いかけたアルテミスは、そんな魔方陣を踏んづけたおかげで全身が弛緩し、身動きが取れなくなってしまったワケだ。


「ウハハハ、馬鹿めェェェ~~~! タダ逃げ出したワケじゃねぇ……罠があるところ誘き出したんだ!」


「う、うきょおおおっ……か、身体が痺れりゅぅぅぅ!」


「さて、この熊公から始末してやる……う、これは重いぞ! だが、そんなことを言っている場合じゃねぇ! 俺達の目的を……邪魔する奴は、誰であろうと始末する!」


 むう、身動きを封じる魔方陣を踏んでしまったがために動けなくなってしまったアルテミスに対し、グランベリー盗賊団団員は、キョロキョロと足許を見回し、偶然とばかりに近くに落っこちている鉄パイプを拾うと、それを両手に握り、グワンと勢いよく頭上に振りあげると、今度は勢いよく降りおろすのだった――アルテミスの脳天目掛けて!

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