EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その5
「あ、ホントだ! ハンマーで石棺の下を叩いたら、音が妙に甲高いぞ!」
「お、僕は何気に大発見をしたのかも!?」
「流石は我が甥だ! 私は超がつくほと嬉しいぞ!」
「フ、フン! お前に誉められてもちっとも嬉しくなんかないぞ、ババア!」
「私は永遠の十七歳だ! ババアなんてどこにいるというんだね、デュオニス君!」
ウェスタとデュオニスは一見すると仲が悪そうだけど、実際のところは仲良しかもしれないなぁ。
仮にウェスタのことを嫌っていたら、こんな辺鄙な場所にデュオニスが一緒になんかついて来るワケがないしね。
それはともかく、兄貴とヤス、それにデュオニスはピルケ遺跡の深奥にある空っぽの石棺の中へと、いつの間にか潜り込んでいる。
ん、よ~く見ると石棺には、大人が潜れるくらい大きな穴が見受けられるので、そこから入り込んだみたいだ。
で、まさかそんな石棺の底に空洞があるかもしれないという大発見に繋がったのは意外な話である。
「なあ、仮にその石棺の下に空洞があるなら、その前にどうやって退けるんだよ? そのクソ重そうな石棺を……。」
「爆弾で石棺をぶっ飛ばすってのはどうかな? あ、でも、そういうワケにもいかないしなぁ……。」
「そうですよ! 中身は空っぽでも歴史的重要文化財ですからね!」
と、フレイヤが素朴な質問を……む、むう、言われてみればそうである。
で、フレイヤの言う通り、空洞へ足を踏み入れるなら、まずはその必須条件となる石棺を退けるという単純な行為ではあるけど、なんだかんだとメリッサが歴史的重要文化財だと言っているし、爆弾を使って手っ取り早く爆発してしまうことができないのが問題だ。
「私にイイ考えがある!」
「ん、ブックス……イイ考えだって!? わ、それは使い魔強化用カードデッキじゃないか!」
私にイイ考えがある――と、何か円満な方法で石棺を退ける方法でも思いついたのか!?
その刹那、ボコンとブックスの表紙を飾るダンディーなヒゲのオッサンの口の中から使い魔強化用カードが飛び出してくる。
まさか、これを使えと……う、微妙に使い魔強化用カードデッキが湿ってるんですけどぉ!
「<怪力>のカードを使うんだ、キョウ! メリッサ達の石棺を退けさせよう。」
「え、私達がやるんですか!」
「じゃあ、キョウ様、早速、<怪力>のカードを! なんだかんだと、石棺の下にある空洞が気になっていますし……。」
「おや、奇遇ですなぁ、俺もですよ、ミネルさん。しかし、こんな肉のない俺に、こんな重いモノを退ける力が出るのかと……。」
「それじゃ使ってみるか、<怪力>のカードを!」
お、ミネルとアシュトンは石棺の下にあるっぽい空洞に興味津々な様子である。
そんなワケで早く<怪力>のカードを使ってくれ――と、言い出す。
じゃあ、要望に応えて――というか、俺自身も興味津々なんだよなぁ!
「<怪力>……発動! お、おおお、黄色い光りが拡散していく!」
シャッと左手に持った使い魔強化用カードデッキの中から、勢いよく右手の人差し指と中指で<怪力>のカードを俺は引き抜くと、それと同時に黄色い光りが<怪力>のカードから呼び出し、バッと拡散し、メリッサ、ミネル、アシュトンの身体を包み込む!
「むふう、この肉のない身体に力が湧いてきた気がします……ウガアアアッ!」
「アシュトン君、大袈裟だぞ。まあ、力が湧いてきたのは確かですね。」
「うええ、私もやるんですか? 仕方がないですねぇ……。」
見た目は何も変わらないようだけど、メリッサ達の身体には、とてつもない力が宿ったっぽい気がする。




