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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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EP14 ニャーサー王と円卓の騎士 その4

 その存在が神話というカタチとなり語り継がれる禁忌王ハビルフって古代王は、常に兎天原の北方、そして西方に住む人間達を警戒していたという。


 故に、自分が支配する兎天原の南方、それに直接ではないが支配が及ぶ兎天原の東方に様々な魔術的罠を仕掛けたとか――。


 で、もっとも強力無比なモノは、訪れた人間を獣に変化させる呪いが降りかかる結界を兎天原の東方と南方を覆い尽すかのように張り巡らせたことだ。


 兎天原のケモニアと呼ばれる大陸の中央にある超広大な盆地だ。


 俺が本来いるべき世界の某大陸と同等か、それ以上の――。


 そんなワケだ、トンでもない規模の結界である。


 だが、遥かなる神話の時代――数千年の前の話である。


 従って兎天原の東方、南方を覆い尽すかのように張り巡らされた結界内の呪いの効果は薄れている。


 そのせいもあり、約千年ほど前から兎天原の東方に移住する人間が増え始めている。


 と、それはともかく。


「それにしても、ここは獣化していない人間がいねぇな、ここは!」


「ウフフ、調べた限りでは獣化の具合は、〝魔力〟に比例するらしいわ」


「へえ、それじゃ完全に獣化してしまう魔力0野郎もいるワケだな?」


「まあ、そうなりますね。で、この村の住人達は、そういった連中の子孫というワケで、私達、人間のように言葉を喋ったり、二足歩行で歩けたりするんでしょうね」


「フーン、そうなんだ……っと、ニャードレットさんがうっせぇから、さっさとニャーサー王を探しに行こうぜ、マルタ姐さん!」


「ウフフ、せっかちね。もう少しまったりしていきましょう――獣化していない珍しい人間のお仲間は側にいるワケだし☆」


「ギョッ!」


 む、マルタとアオイがニャードレットの名前を口にしたぞ⁉


 やっぱりコイツらはニャーサーの命を狙う刺客かもしれない……いや、間違いないと思う!


 さて、マルタとニタニタと笑い眼鏡を右手で弄りながら話しかけてくる――あ、確かに、俺は獣化していない珍しい人間だな。


「うおお、身体のどこの部位も獣化してない人間だ! め、珍しくねぇ?」


「そ、そうか? 俺はレアモノだったのか……」


 獣化していない珍しい人間だ――と、アオイが俺を見て驚く。


 うーむ、そうかぁ……大、中、小フレイヤとか、手足、それに耳などが獣化していない人間は、そこそこいるんだけどなぁ。


「さて、この出逢いから何かしらの縁を感じます。そんなこんなでアナタにお訊ねます。この写真のおじ様を知りませんか?」


 この出逢いから何かしらの縁を感じるだって?


 ああ、気のせい、気のせい――と、それはともかく、マルタが懐から一枚の写真を取り出し、俺の目の前に突きつけてくる。


「マッスルなアフロヘアーのヒゲのオッサンの写真? 誰、このオッサン?」


「はい、私達が捜索中の人物でニャーサーという名前のオッサンです。この村にいると聞いたのですが――」


「へえ、そんなんだ。だが、俺は知らんな。探すなら、酒場に集まっている冒険者達にでも訊いてみるんだね」


 マルタが目の前に突きつけてきた写真には、モコモコしたアフロヘアーが特徴的なヒゲマッチョな大柄なオッサンの姿が写っている。


 どうやら〝人間だった頃〟のニャーサーの写真のようだ。


 で、なんだかんだと、俺はマルタに対して嘘を吐く――お探しのニャーサーが猫になってしまっていることを知らないようだし、上手く騙せたかな……かな?


「あ、これは嘘吐き臭だ! オマケに死臭のような悪臭も……」


「ちょ、何やってんの! き、気持ちの悪い女だな、おいィィ!」


 う、気づけば、ガングロギャルことアオイが、俺の背後に回り込んでいる――ちょ、お前は犬か! とにかく、俺のうなじに花を押しつけてクンクンと嗅いでいるぞ、コイツ!


「嘘吐き臭…だと…⁉」


「今、命名した。つーか姐さん、アンタから特殊な臭気を感じたんでね」


「ななな、何を言い出すんだ、君ィィ! まあ、ゾンビやスケルトンが側にいるから死臭はするかもしれんが、俺は嘘吐きなんじゃないぞ!」


「ふーむ、それじゃアナタは死霊使いの類ですか?」


「ま、まあ、そんなところだな」


「それじゃ嘘吐き決定ですね」


「ちょ、何故、そうなるんだァァァ~~~!」


 お、おいおい、勝手に決めつけんな!


 俺は死霊使いだ。


 死んだ人間をゾンビ等の不死者(アンデッド)として復活させることができる外道魔術師ではあるが、嘘吐き野郎呼ばわりされるつもりはないんだがなぁ。


 ま、まあ、ニャーサーに関しての嘘を吐いたが、彼を守るためさ……うん、そのためさ、仕方がないことさ!


「お、おい、どうするんだ!」


「ヤバい雰囲気っす!」


「ああ、あの二人組は嘘吐き殺すガールと化したっぽい! 眼に殺気が……」


「え、あのガングロ女はともかく眼鏡女の方はガールって歳じゃねぇだろ!」


「わあ、そんなことより、逃げた方はイイと思うっす!」


「チッ……様子見に来たつもりだったは、やっぱりこういう展開になるのかよ! よし、逃げよう!」


 うーん、ここは逃げた方がいいかも――。


 そんなワケで俺は兄貴とヤスと共にモモウサヒコのカフェの外へと逃走するのだった。


「待て、この野郎!」


「ウフフ、私はここでまったりしているので、ソイツの処遇はアオイちゃんにお任せぇ~☆ あ、コーヒーのおかわりを――」


 むう、当然、二人組は追いかけて……あ、あれぇ、追いかけてきたのガングロギャルのアオイだけだ。


 一方でマルタは何もせずコーヒーのおかわりを今いるモモウサヒコのカフェの店員に注文している。


「キョウ、どうするんだ?」


「決まってるだろう、兄貴……アイツを……追っ手を撒くんだよ!」


 やれやれ、面倒くさいことになったな。


 とりあえず、今は追いかけてきたアオイを撒くことを考えるとするか――。

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