EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その4
メリッサは学者肌な騎士である。
王立考古学アカデミーとかいう由緒正しき学術機関の出身者だしね。
とまあ、そんな学者肌の彼女が何故、ネメシス騎士団なんかに……。
んで、学者肌で剣術、体術などなどに疎いせいか、虎獣人のボリスに呆気なく首へ圧し折られて殺害されてしまったワケだ。
ま、なんだかんだと、ゾンビとして蘇ったからいいけど、剣術や体術を覚えさせるべきかなぁと俺は思う。
あ、ああ、使い魔強化用のカードデッキがあれば、俺の魔力が効いている間だけなら、達人クラスの剣士とかになれるかもしれない。
<剣士>、<弓兵>。<槍兵>といったカードが使い魔強化用のカードデッキの中のあったワケだし――。
それはともかく。
「ええと、解読した感じでは……盗人共、残念だったな。ここに我は眠ってはいない。ざまあみろって感じの言葉ですね。」
さて、ピルケ遺跡の入り口のところには、たくさんの絵文字刻まれている。
所謂、象形文字ってヤツかな? 古代文字のひとつとして、俺が本来いるべき世界でも、けっこう有名なモノだったなぁ、確か――。
で、それを古代文字の解読が専門分野の考古学者であるメリッサが解読すると、古代人の煽り文句のような文言になるようだ。
「おい、でっかい石の箱があるぞ!」
「兄貴、それは石棺っす!」
「石棺? うお、石の棺ってヤツか!」
「そのままの意味っすよ、兄貴……。」
ん、兄貴とヤスはピルケ遺跡の深奥へと移動している。
と、そんな深奥には、ドーンと巨大な石棺が鎮座しているワケだが、その中身は空っぽのようだ。
「ここは偽の玄室っぽいわ。そこにいる瓶底眼鏡のお嬢さんが解読した古代文字の文言が正しければね。」
「ん、ウェスタちゃん!」
「やあ、リリッ……んんん!」
「今の私はグラーニアです!」
「はうっ……わかったわ。時に仮の名前を名乗らなくちゃいけないこともあるよね。」
「うん、そういうこと!」
ん、あの行商人であり、魔女(?)でもあるウェスタの姿が考古学者の中に紛れ込んでいるぞ。
「あ、私は考古学者でもある。甥であるデュオニスと一緒にここへ来ているわ。」
「おい、ババア! ここに何もないぞ! まったく、僕はこれでも忙しいんだ! それに自分と同じ格好をさせやがって……は、恥ずかしいじゃないか!」
「だ、誰がババアよ!」
「お前のことだよ! つーか、お前は見た目だけは若いからなぁ……ぐえっ!」
ウェスタは甥のディオニスという少年と一緒のようだ。
そんなデュオニスだけど、ウェスタと同じ白いワンピースと麦藁帽子という格好をしている――つまり女装少年ってワケだが、すっごく似合っている……ほ、本物の女のコのようだ。
「あ、どうでもいいことだけどさ。この石棺の下は空洞かもしれない……ほら、ハンマーで叩いたら、妙に高い音がするんだ。」
ん、ウェスタの甥である女装少年デュオニスが妙なことを言い出す――石棺の下に空洞があるだって!?




