外伝EP10 烏の沙羅と魔族の王国 その44
「わ、わお! まさか、アンタに助けられるとは予想外ね! う、そういえば、現代の言葉が通じないんだったわね。」
「ギギギギィ! バミィィィ!」
「むう、何をいっているのか、私にはさっぱりわからんけど、とりあえず、ありがとう!」
黄金の人面犬の攻撃からあっちゃんを守ったのは、自律機能を持つ黄金の大剣である。
ふう、真スフィンクスの説得が上手くいった証ってヤツだわ!
「ちょ、何をするでごさるかァァァ~~~ッ! 仲間である拙者を裏切るのか、この野郎……ギャイン!」
「ギギギギッ! ガギギギギィィ!」
「ウギャー! せせせ、拙者の尻尾が斬られたでござるゥゥゥ~~~! おおお、お前、拙者を殺す気なのかァァァ~~~!」
「ウィンウィンウィン……ギガガガガッ!」
「ウ、ウッヒャワァ! まだ死にたくないでござるゥゥゥ~~~!」
「ふむ、まだ死にたくないねぇ。それじゃ、ハビルフの遺体が納められている石棺がある玄室に案内してもらおう。」
「ちょ、おまっ……なんでお前が、拙者に対し、そんな命令を……ヒ、ヒイイッ! わかったでござる! だから、ソイツに攻撃するなって頼んでほしいでござるゥ!」
む、空中を回転しながら飛び交う黄金の大剣は、まるで豆腐を切り裂くようにスパッ――と、人面犬の尻尾を胴体から切断する……き、切れ味抜群じゃん!
それはともかく、真スフィンクスが禁忌王ハビルフの遺体が納められている石棺がある部屋である玄室へ案内しろ――と、黄金の人面犬に対し、追及するのだった。
「ド、ドヒャー! それは勘弁……つ、つーか、拙者は縄張りの外に出たくないでござる! いや、働きたくないでござる! うおおお、こうなりゃ自棄だ……分身の術だァァァ~~~!」
なんだかんだと、簡単に禁忌王ハビルフの遺体が納められている石棺が安置された玄室に、そう簡単に案内してくれるワケがないか――。
というワケで黄金の人面犬の攻撃が再開する――むう、そんな黄金の人面犬が三頭に分裂したわ……分身の術ってヤツ⁉
「デュフフフ、拙者の三位一体攻撃を受けてみろ!」
「デュフフフ、トライアングルアタァァァ~~~クでごさる!」
「デュフフフ、その前に本物の拙者がどこにいるかわかるまい!」
むう、分身し、三頭に増えた黄金の人面犬は、私達を三角形を描くカタチで取り囲む。
さて、どうしたモノか――。
「本物は……そこだ! ベトッフ・デ・ウフクバ!」
「わ、わおおお! 何故、バレた……グ、グフッ!」
「答えは簡単よ。例え三頭に分身しても、本体と分身とでは髪型が違うしね!」
「な、なんだと⁉」
「気づいていないワケ? 分身の髪型はアフロとモヒカンだけど、本体のアンタはバーコードハゲだしね。」
「む、むう、分身の髪型が変化していた……だと⁉ 気づかなかった、そんなの……ええい! とにかく、トライアングルアタックを食らうでごさる!」
まさか本体と分身では髪型が違うとはね――てなワケで私が放った衝撃波の魔術が本物を側面から弾き飛ばすのだった。
つーか、分身の術の盲点に気づけよって感じだ。
「む、無念でござる……ビキビキ……パキーン!」
「むう、黄金の人面犬の身体が砕け散ってしまったであります!」
「あちゃー……やりすぎた?」
「ん、分身も消えた⁉」
「あ、見ろ! 砕けた黄金の人面犬の身体から小さな黄金の生き物が……あ、逃げた!」
「黄金の鼠であります!」
「ハハハ、タダのドブ鼠であるお前と比べるとゴージャス度ってヤツが違うな☆」
「ううう、それを言われちゃ立つ瀬がないであります……むう、追いかけるであります!」
バキーン、ガシャーン――と、甲高い音を奏でながら、黄金の人面犬の身体がバラバラに崩れ落ちるのだった。
あ、あれぇ、もしかして斃しちゃった⁉
いや、本体――黄金の鼠が、バラバラに崩れ落ちた黄金の人面犬の身体の中から飛び出し、逃走を図る。
さて、同じ鼠でもタダのドブ鼠であるノネズミヒコが、そんな黄金の鼠を追いかけるのだった。




