外伝EP10 烏の沙羅と魔族の王国 その43
真スフィンクスは黄金文明が栄えていた頃から生きているトンでもなく長生きをしているナマモノである。
で、禁忌王ハビルフとも知り合いだったようだ。
そんな縁からなのか⁉
そこら辺はわからないけど、真スフィンクスは禁忌王ハビルフの遺体の一部――右腕を所持していたようだ。
「キュ、キュリリリン、キュイイイイン……。」
「あうあうあう! あうあうううあああ!」
「キュイン、キュリリリン、キュインキュイイー!」
「あうあうあうあう! あうあああ! よっしゃ、説得が成功したぜ、お前ら。」
まったく、何を言っているのか、そこら辺がさっぱりだー……えええ、説得が成功したですって⁉
「ハハハ、なんだかんだと、話してみるもんだぜ。」
「は、はあ、上手くいくもんですね。」
「まあな! フフフ、それもこれもハビルフの遺体の一部を持っていたおかげだなぁ☆」
「むう、しかし、なんであんなモノを――。」
「ああ、話せば長くなるが、それでも聞くか?」
「び、微妙……でも、凄く気になる……。」
「んじゃ、話すとするか――。」
「おお、そこにいたのね! 探したわよ!」
「あっちゃん! う、うわ、合流できたのはいいけど、それは何ィィ!」
真スフィンクスが禁忌王ハビルフの遺体の一部こと右腕を何故、所持することになったのか――とまあ、その詳細を語ろうとした直後、黄金の単眼巨人の目の前から逃げる際にはぐれてしまっていた仲間のひとり……いや、一羽であるアヒルのアフロディーテことあっちゃんが、黄金巨神の一種と思われる黄金の怪物に追われるカタチで現れるのだった。
「胴体は黄金の大型犬だけど、頭はバーコードハゲのオッサン⁉」
「うわ、奇妙なモノがいたもんだ。」
「所謂、人面犬であります。」
頭はバーコードハゲのオッサンじゃなれば、強敵に見えるところなんだよなぁ、あっちゃんを追いかけてやって来た黄金の人面犬は――。
「ききき、気をつけて! ソイツは魔術を跳ね返すわ!」
「魔術を跳ね返す……だと⁉」
「うん、こんな風に……えいっ!」
「ちょ、あっちゃんッ……う、うわあ、人面犬のバーコードハゲが光った! そして、あっちゃんの放った光術を跳ね返した!」
あっちゃんは喋ることができる以外は普通のアヒルである――否、その出自は兎天原東方で信仰されている女神らしい(本人談)
それはともかく、相棒の愛梨が一緒にいなくても、そこそこ魔術を使えたりするのよね。
だけど、黄金の人面犬が、いくら魔術を跳ね返す危険な存在だってことを証明したいからって、それを実践するのはやめてほしいわ!
「デュフフフ、拙者に魔術は利かないでござる☆」
「うお、喋れるのか⁉」
「しかも現代の言葉だ!」
「当然でごさる! つーか、そのメカニズムを知りたいでこざるか……うごッ! 熱いッ……熱いでこざるゥゥゥ~~~ッ!」
「ふむ、側面からの魔術攻撃は効果ありって感じだな! よし、それなら戦えるな。」
「こ、こここ、このウサ公! 今のは不意打ちですぞー! ンンンン、卑怯ですぞー!」
「ああ、悪いな。側面からの魔術攻撃を試してみたかったんだ。」
黄金の人面犬は、現代の言葉を喋ることができるようだ。
それはともかく、魔術攻撃を跳ね返すことができるのは、あくまで正面を向いている時のみっぽいわね。
ヤマダが放った光の弾丸を飛ばす魔術が、奴の脇腹にクリーンヒットしたけど、跳ね返ってくることはなかったしね。
「おお、魔術を初めて使ってみたが、威力はイマイチだなぁ……。」
「まあまあのデキだと思うわよ。でも、相手が悪いかな? アイツの身体は、なんだかんだと金属……黄金だしね。」
へえ、ヤマダは初めて魔術を――攻撃系魔術を使ったワケね。
ああ、ちなみに、ヤマダの場合、愛用の拳銃を媒介にするカタチかな?
光の弾丸をズドーン――と、放つって感じね。
だが、黄金の人面犬を斃すに至らず――側面からの攻撃は通じるが、流石は黄金の身体を持っているだけあるわね。
「ウヌオオオオーッ! なんだか腹が立ってきた! ぶっ殺してやるますぞォォォ~~~!」
「黄金の人面犬が飛びかかってきた! わ、危ないッ! つーか、私を狙っているでしょ!」
「デュフフフ、お前、美味そうだからな☆ では、いただきま……グ、グワーッ!」
む、黄金の人面犬の攻撃が始まる――あっちゃんに狙いを定めたようね。
だけど、何かが、そんな黄金の人面犬を弾き飛ばす。




