外伝EP10 烏の沙羅と魔族の王国 その41
黄金の単眼巨人――コイツが睨んだ相手を黄金の塊に変える怪物なのか⁉
オマケに真スフィンクスが斃した黄金の蛙人間は、一体ではなくて複数……分が悪い!
とにかく、逃げた方が無難ね!
そんなワケで私達は奴らの目の前から逃走するのだったが――。
「あれぇ? みんなは……はぐれちゃったみたいね。」
「ん、そのまさかだな……。」
「うは、じゃあ、俺と隊長と沙羅だけでありますね。」
むう、どうやらヤマダとノネズミヒコ以外の仲間とははぐれてしまったようだ。
その前に、ここは禁忌王ハビルフの墓の一部のはずだけど、一体、どこら辺なんだろう……。
ああ、ちなみに、今いる区画には、私には読むことができない古代文字が刻まれた石板が、あっちこっちに見受けられる。
所謂、碑文の区画って感じだろうか?
「目の前にドーンとそびえ立っている石板には、俺にはなんて書いてあるかさっぱりであります。それにここは広すぎであります!」
「うん、だから、みんなを探すのが大変ね。」
「だが、アイツはすぐに発見できたな。」
「え、アイツ? ああ、真スフィンクスかな? フフフ、無駄にデカいしね☆」
ユウタ達はどこへ行ったのやら――と、なんだかんだと、はぐれた仲間を発見!
その無駄に巨大な図体は発見しやすいのよねぇ――と、そんなワケで真スフィンクスを発見するのだった。
「フフン、無事で何より☆」
「無事というか、他のみんなはどこって感じだけどね。」
「むう、キョウ様とは一緒ではないのか、損傷した身体を修復してもらおうと思ったのだが……。」
「わ、ゾンビ二号! いや、ミネルだっけ? 残念だけど、キョウは一緒じゃないわ。」
う、スフィンクスと一緒にいるのは、キョウの使い魔その三ことミネルだ。
彼女もまたアシュトンやメリッサと一緒に冒険者達の中に紛れ込んでいたみたいね……って、上半身と下半身が分裂――いや、ドテ腹のところから千切れた状態だ……うわ、当然ながら内臓が飛び出している!
が、そんな痛々しさを通り越し、即死レベルの状態でも平然としているところを見ると、流石は不死身のゾンビだなって誰もが思うだろう。
「そうだ! 自律行動をする黄金の大剣がいる! 私はソイツに遭遇し、このザマだ。」
「ふええ、またまた厄介な守護者みたいな存在がいるのね。」
「ハビルフの奴、面倒くさいモノをたくさんつくりやがって……。」
「ん、その物言い……もしかして禁忌王ハビルフと知り合いなの?」
「ああ、奴が生きている頃は友人だったぜ。ま、あんなことがなければ〝禁忌王〟なんて呼ばれる呪われた存在にならずに済んだのになぁ……と、今になって思う。」
やれやれ、またまた面倒くさいモノの姿が見え隠れしているわね……ったく、〝いつ現れるかわからない〟という恐怖心を煽られるわ。
さて、真スフィンクスは、古代世界を生きた呪われし王――禁忌王ハビルフと知り合いのようだ。
おいおい、どんだけ長生きしているんだ、コイツ⁉
「ところで、五千年近く生きている俺を見てどう思う?」
「す、凄く……長生きです。」
「それより、ミネルの身体をドテ腹のところから切り裂いた自立行動ができるモノ――黄金の大剣は、もしかすると話が通じる可能性はあるんじゃないか?」
「え、そうでありますかぁ?」
「むう、なんだかんだと、説得を試みよう。上手く行きゃ仲間にできるかもしれないしな!」
おいおい、ヤマダ、それはいくたなんでも確率的に難しいと思う。
自立行動ができる大剣――即ち、知能がある、とは限らないと思うしね。
だが、仮に説得できたなら、先に遭遇した犬頭人身の黄金巨神、黄金の蛙人間、黄金の単眼巨人――コイツらも説得可能になるわね。
ん~……私達的には有利になりそうだけど、早々、上手くいかないのが現実なのよねぇ。
「ん、その前に説得するにしても古代の言葉がわからないんじゃ元も子もないじゃない?」
「う、それは確かに……。」
なんだかんだと、考えてみれば、古代の言葉――『あうあう』としか聞こえないティルケが口走る〝あの言葉〟を理解し、流暢に話すことができなければ、説得なんて無理だな。
「ああ、そこら辺は俺がいるから安心しろ。あうあう、はううああァァァ~~~!」
「そ、そう、それは頼もしいけど、なんて言っているのか、それがさっぱりだわ。」
「ん、『任せろ、馬鹿野郎!』だ。」
「む、むう……。」
古代の言葉って、何がなんだかさっぱりだーッ!
ま、まあ、真スフィンクスがいれば大丈夫かぁ――件の自立行動を取ることができる黄金の大剣が現れても。
「お、噂をすれば、現れたぜ――黄金の大剣が!」




