外伝EP10 烏の沙羅と魔族の王国 その40
「さ、アイツを倒す方法を考えなくちゃ!」
「おい、そんな悠長なことを言っている暇はないぞ! うかうかしていると、ユウジとトモヒロが黄金の塊に変えられてしまう!」
「むう、それじゃアンタも考えなさいよ、ユウタ!」
まあ、確かに悠長なことを言っていられないわね。
黄金の蛙人間は、自分に攻撃を仕掛けてきたユウタとトモヒロのお猿コンビに対し、キレてドバドバと連続で触れたモノを黄金の塊に変えてしまう黄金の液体を吐きかけているしね。
「ヒイイッ! ヤバい……追い詰められた!」
「このままだと黄金の塊になっちまうぜェェェ~~~!」
「ちょ、マジで助けなきゃヤバいぞ!」
「う、うん、ダーリン! だけど、近づいたら私達まで――。」
「く、障害物が多いわね! ここら辺にある黄金の骸を手当たり次第、壊しちゃおうか、お兄様☆」
「おいおい、壊したら不味いんじゃないか、アム? 一応、生きてるかもしれないしなぁ……。」
まったく、その通りである。
今いる区画は障害物が多すぎる!
黄金の蛙人間、それにまだ見ぬ睨んだモノを黄金の塊に変えてしまう怪物に襲われた犠牲者達の苦悶の表情を彩らせた黄金の骸が、まるでゴミ邸の中へと足を踏み入れたかのように所狭しと立っているワケだし――。
そんなワケでユウジとトモヒロは、黄金の骸が何体も同じ場所に集中した地点に追い込まれてしまうのだった!
「ん、待て……今、気づいたんだが、なんか変だぞ、アイツ⁉」
「な、何がだよ!」
「よく見ろ! あの黄金の蛙野郎が苦しんでいるだろう?」
「んんん、そうかぁ?」
黄金の蛙人間が苦しんでいる⁉
と、トモヒロが言う――が、ユウジは気づいていない感じだ。
一体、何に気づいたんだろう?
「多分、奴が苦しみ始めたのは、触れたモノを黄金の塊に変える液体が尽きたのかも? で、それが原因で苦しんでいるじゃないかな……かな?」
「じゃあ、倒すなら今ってワケだな?」
「だけど、爆風を引き起こす魔術をぶちまけても無傷だったワケだし、どうやって――。」
黄金の蛙人間は、その身に貯蔵された触れたモノを黄金の塊に変える液体が尽きかけてきたので苦しんでいるのかも⁉
だとしたら、今が倒すチャンス到来かも――が、奴を倒す術はあるだろうか?
ユウジとトモヒロのお猿コンビが放った爆風を発生させる魔術をぶちまけても無傷だったタフな輩なワケだし――。
「あの蛙人間の身体は黄金だ。ちょっとやそっとの攻撃じゃ斃すなんて無理だな。だから、この俺が見本を見せてやるっつーか、頼りないから手助けしてやんよ……オラァ!」
ん~……正論だな。
ちょっとやそっとの攻撃じゃ金属の――黄金の身体を持った黄金の蛙人間を斃すことはできない。
そんなワケで真スフィンクスが、一瞬だけ本気を出す――う、両目から赤い光線を発射したわ!
「わ、黄金の蛙人間の頭が吹っ飛んだ!」
「いや、ぶっ飛んだというより溶けたって言った方が正しいんじゃ……。」
「お、おわーッ! この野郎、俺達まで溶かす気かァァァ~~~!」
「しかし、危ないわね。黄金の骸も数体、溶かしたちゃったわよ!」
ム、ムムム、真スフィンクスの両目から発射された赤い光線は、直撃した黄金の蛙人間の頭を溶かすだけならいいが、周囲の物体――黄金の骸を数体だけではなくユウジとトモヒロまで溶解してしまうところだったみたい……危ないわね、まったく!
「ふ、ふう、連射することができんが、金属をも溶かす威力があるぞ!」
「そ、そうなんだ、へぇ~……。」
連射できない?
だが、あの威力は決して侮れないわね。
ユウジとトモヒロが放った爆風を発生させる魔術の直撃を受けても無傷であった黄金の蛙人間をたった一撃で再起不能にしてしまったワケだし――。
「それよりも、この場から早いとこトンズラしよう。また何かに厄介なモノが近づいてきているようだしな。」
「まさか睨んだモノを黄金の塊に変える怪物⁉」
「そのまさかだ! うお、顔面の真ん中の巨大な眼がある巨人……黄金の単眼巨人キター!」
「わお、黄金の蛙人間を複数、連れている!」
「ちょ、まだいたのかよ、黄金の蛙人間は――ッ!」
「と、とにかく、逃げろ!」
大体、二メートル弱だとは思うけど、顔面の真ん中でギラギラと巨大な一つ目を輝かせる単眼巨人が現れる。
ああ、無論、その身体は黄金だろう――コイツも黄金巨神の一種か⁉
と、コイツと一緒に黄金の蛙人間が複数――ちょ、一体だけじゃなかったのぉ!
む、むう、なんだかんだと分が悪いわね。
触れたモノを黄金の塊に変えるモノが何体も現れたワケだし……に、逃げるっきゃないわね! 今はにげた方が無難だ!




