EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その2
兎天原の南方には、テュポネス砂漠という広大な砂漠が広がっている。
で、かつては緑豊かな場所だったという伝承が残っており、そこで栄えた黄金に満ち溢れた古代文明も存在したとか――。
と、そんな古代文明の遺跡は発掘し尽くされたって言われているんだが、それでも新しい〝何か〟が砂の中から出土するのでは!?
なんて夢を見ている連中が多いんだよなぁ……。
ま、その悲願がピルケ遺跡の発見につながったワケだけど、あの遺跡からは何も見つからなかったようだ。
ただ、巨大な〝中身〟が空っぽの石棺は見つかっただけだったとか――。
「ふう、助かりました。まさかホテル街があったワケですし……。」
「そういえば、この辺はサバンナという地帯らしいな。」
「どうでもいいけど、俺達と一緒について来たってこたぁ、魔女になりたいっつう願望があったりするのかい?」
「はい! 追手を追い払える力が欲しいのですわ!」
「そ、そうかぁ……。」
兎天原の南方にあるマーテル王国からは派遣された兵士達の詰め寄り所であるティベレス駐屯地内にはホテル街があり、そこを利用しているケモニア大陸南方を目指す連中などの中継点として利用しているようだ。
そうそう、ここら辺は割と安全な場所だとか――。
兎天原に鎮座するオリン山の天空姫とポース山の女帝の恩恵に反逆するかたちで居座る怪物聖母の子孫と呼ばれる怪物の出現スポットが近場にないようだしね。
さて、ティベレス駐屯地のやって来た俺、それに兄貴とヤス、メリッサとミネルのゾンビコンビと動く骸骨という姿を全身甲冑で隠すアシュトン、フレイヤとサキと一緒にリリス姫……いやいや、グラーニアがついて来た。
彼女が魔女になりたいようだ。
追手を追い払うために力を得たいと思っているみたいね。
守られるだけのか弱い女であるかつての自分に決別したいという気持ちを胸に秘めての行動のようだ。
「まあ、とりあえず、ピルケ遺跡へ行ってみよう。」
「そういえば、考古学者が俺達が今いるホテルにもいるはずだ。一緒について来てもらおう。ピルケ遺跡へ行くなら心強いと思うぞ。非戦闘系の特技なら、俺はいくつもマスターしているが、考古学の知識だけはまるでダメなんだ。」
「うむー、それが一番かもなぁ。」
なんだかんだと、例のピルケ遺跡へ行くなら、考古学者に一緒に来てもらおう。
その方が心強いしね。
それに非戦闘系の特技をいくつもマスターしていると自称するフレイヤでさえ、考古学にはだけは疎いようだし……。
「キョウ様、考古学者なら、すでにここにいます!」
「え、どういうことだよ、メリッサ?」
「フフフ、その考古学者とは、この私のことです!」
「な、なんだってー!」
「し、知らなかった、そんなこと……。」
「ミネルさん、同じく知らんかった……。」
なんと身近なところに考古学者が!?
と、その前にネメシス騎士団の同僚であってミネルとアシュトンは、どうやらメリッサが考古学者であることを知らなかったようだ。
へえ、意外だねぇ!
でも、これは幸先がいいかもしれないぞ。
考古学に疎い俺達にとってメリッサは貴重な戦力と化したワケだし――。
「さ、皆さん、ピルケ遺跡へ行きますよ!」
「わお、一瞬で白衣姿に!」
むう、まさに一瞬の早業ってヤツだな!
メリッサは赤いTシャツと紺色のジーンズという格好をしていたけど、それが一瞬で白いブラウスと黒いタイトスカートという格好に早変わりする。
で、その上から右胸のところに、ニコニコ微笑んだ黒猫のバッジがついた白衣をシャッと羽織るのだった。
「あ、その黒猫のバッジは王立考古学アカデミーの卒業生の証ですわね。」
「ビンゴです! 流石はリリス姫……あ、いやいや、グラーニアさん!」
へ、へえ、メリッサが羽織っている白衣の右胸についている黒猫のバッジは、王立考古学アカデミーとやらの卒業生の証みたいだ……ってことは、メリッサは何気に高学歴なのかも!?




