EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。
安定した仕事を求めるなら鉱山が多数存在したり、新興の町をいくつも建造中だという北方のマーテル王国領内へ――。
最先端の魔術や化学を欲するなら、西方の大国オルゴニア帝国を領内へ――。
自身の腕試しを臨むならば、未だに未開の地が多いという東方へ――。
そして一攫千金を求めるなら、金銀財宝が数多く眠る砂漠の古代文明の遺跡の発掘をしに南方へ――。
と、そんな話をフレイヤから聞く。
で、兎天原は中継点として利用される場所だ。
なんだかんだと、ケモニア大陸のほぼど真ん中にある区域だし、オマケにオリン山の天空姫とポース山の女帝という二柱の女神の恩恵を受けた地なのかは知らないけど、この地に住まう魔物の王者とか神の使いなどとも言われるドラゴン族は友好的なんだとか――。
あ、ああ、でも、例外として二柱の女神の反抗的な存在だという怪物聖母の子孫と呼ばれる怪物共も生息していたりするんだよなぁ。
とまあ、そんな怪物聖母の子孫が巣食う場所に好奇心や探究心から足を踏み入れるモノが、けっこういるという――冒険者という名の無謀の輩がね。
故にかは知らないけど、兎天原を支配しているマーテル王国から派遣された警備兵達の駐屯地が、〝危険地帯〟に指定されている場所に足を踏み入れようと目論む無謀な冒険者達を取り締まる名目も兼ねているかのように、兎天原の各地に何か所も見受けられたりするんだよなぁ。
さて、俺――新米魔女キョウは、仲間達と一緒に、そのうちひとつである兎天原の南方にあるティベレス駐屯地に訪れていた。
ええと、その目的は――。
「なにィ、ピルケ遺跡へ行きたいだって!?」
「ああ、一攫千金を求めてね!」
「むう、まあいいだろう。だが、どうせ〝何も見つからない〟だろうし、無駄足になるだけさ。」
と、呆気なく先へ進むことを許すティベレス駐屯地の兵士は、ふあ~と大きな欠伸をする。
さて、俺は一攫千金を求めて兎天原の南方へやって来ている。
最近、発見されたというピルケ遺跡という古代文明の発掘を手伝う名目も兼ねて――。
「お、ここには俺達と同じ目的な連中がたくさんいるみたいだな。」
「ああ、一攫千金を夢見てる奴が多いんだよ。」
「兄貴もそのひとりっすね!」
「うむ、言わずもがな!」
「だけど、さっきの兵士が〝何も見つからない〟とか言ってるガウ!」
「すでに発掘し尽くされたんじゃないでしょうか! ここは新しい遺跡が発見されたとはいえ、昔から知られている古代遺跡ですわ。」
「そ、そうなんだ……って、アンタまで一緒に来るこたぁないんじゃないか? リリス姫……あ、いや、グラーニア?」
「いえ、キョウさん達と一緒にいた方が無難かなと思いまして……。」
「むう、そうとは限らないと思うぞ。俺は弱いしな……。」
さて、俺達が今いるティベレス駐屯地の周辺は古代遺跡の宝庫である。
と、そんなワケで昔からよ~く知られた場所のようだ。
ちなみに、最近、発見されたというピルケ遺跡だけど、〝中〟に財宝なかったとか――。
それでも新しく発見された遺跡というワケで、きっと何か隠されているはずだ!
と、そう信じる俺と同じ目的の連中がたっくさんいるんだよなぁ。




