外伝EP10 烏の沙羅と魔族の王国 その12
人間の身勝手な生き物である。
今日から、あの獣は保護の対象な!
勝手に捕獲したら罰金刑な!
などと綺麗事を謳いながらも裏では――。
うおりゃあああ、稀少動物狩りだァァァ~~~ッ!
あの獣を捕まえて好事家に売れば多額の賞金GETだぜ!
と、真逆なことを行っているモノもいるから困る。
そんな身勝手な人間のせいなのか?
それとも自然の摂理なのか?
人間の領域と呼ばれる兎天原の北方と西方では、絶滅してしまったり、生息数が極端な減ってしまいその姿を見ることが稀になってしまった動植物が、けっこういるっぽい。
例えば、ドードーとかモアといった私――烏の沙羅と同じ鳥類の仲間などなど。
「アイツらを連れ戻そう!」
「鳳凰は最強クラスの幻獣だ。アレを狩ろうだなんて自殺行為も甚だしいしね!」
それはともかく、ラックスター卿の屋敷内にいた幻獣ハンターと呼ばれる輩が、鳳凰狩りに出張ってしまったワケだが、これは連れ戻した方がいいかもしれない展開ね。
一夜にて人口百万人が暮らす大都市を焼き尽くしたという伝説的最強クラスの幻獣である鳳凰を狩れる人間なんていない――間違いなく返り討ちに遇うのが関の山だと思うしね。
「鳳凰とドラゴンはどっちが強いんだろう?」
「ウニャ、そりゃもちろん、ドラゴンだニャ☆」
「うむ、ドラゴンは個体によって脳みそがすっからかんの阿呆と人知を超える叡智を持つ賢者に別れるって聞いてたことがあるわ。」
「ニャんだってー!」
「まあ、純粋な力だけなら前者の脳みそがすっからかんの阿呆だろうねぇ。」
「そんなことよりメイドさん。幻獣ハンター達が向かった先を教えて!」
「は、はい、ジュデカ山の火口へ向かうとか言ってましたけど……。」
「ジュデカ山といえば、三十周期ごとに噴火している――と、そんな記録があった筈の活火山だったな。」
「活火山かぁ、なんだか如何にも鳳凰が住んでそうな山よね、あそこは――。」
ジュデカ山は、大体、三十周期――三十年に一度の割合で噴火するらしい有名な活火山である。
で、あの山が噴火すると、その噴煙が兎天原の東方にまで風に乗って流れてくる場合もあるそうだ。
さて、前回の噴火の際、超がつくほど迷惑をした――と、エフェポスの村の古老のひとりであるウミコという黒兎が言っていたことを私は思い出す。
「なんだかんだと、幻獣ハンター達が向かった先がわかったわ。私が引き留めに行って来る。」
「んじゃ、一緒に行くニャー!」
メイドのアミー曰く、幻獣ハンター達が件のジュデカ山へ向かったそうだ。
確か、今いるラゴモの町の南南東だったかしら?
とにかく、私と猫ドラゴンのニャルは、今いるラックスター卿の執務室の窓の外に飛び出す。
手っ取り早くジュデカ山へ向かった鳳凰を狩ろうと目論む幻獣ハンター達を引き留めに行くなら、それを飛べる私やニャルが打ってつけの役だと思うしね。
「お、気が合うわね。」
「ニャハハ、そう? ん~……とはいえ、勝てない相手に果敢に挑もうとする無謀な奴らを見殺しにできない性質でね。」
「ウフフ、とにかく行くわよ。」
「ウニャ、まだ遠くへ行っていない筈だニャ!」
「お、なんだかんだと、アイツらのことかしら?」
「あ、丁度イイ具合に馬に乗ってラゴモの町の外に飛び出した奴らが……一、二、三……アイツの筈だニャ!」
鳳凰を狩ろうと目論む無謀な幻獣ハンター達は、まだ遠くへは行っていない筈だ。
というか、私もニャルと同じ考えね。
ああいう無謀な輩を見殺し気になれないというか――お、いた!
ラックスター卿の執務室の外に飛び出して早々、幻獣ハンターを発見――どうやら三人だけのようね。
やれやれ、あんな少数で最強クラスの幻獣である鳳凰を狩ろうだけんて無謀の極みだわ!
「よし、声をかけてみましょう! おーい、そこのアンタ達ィ!」
私は空中を滑空しながら、三人の幻獣ハンターのひとりに近づき呼び止めてみる。
ふう、あっさりと鳳凰狩りを諦めてくれればいいけど――。




