EP7 俺、家出姫と出逢います。その9
「あ、ソイツはリリス姫の婚約者を自称するモノのひとりですね。」
「え、婚約者を自称するモノのひとり!?」
「ですなぁ、彼はフィンソス――父のフィンネスも、確かリリス姫の婚約者を自称してい気がしますねぇ。」
「それだけじゃない。彼の祖父のフィンデルも同じく婚約者を自称していたはず!」
「ちょ、親子孫の三代そろって婚約者を自称してるのかよ!」
ふええ、物好きな一家がいたもんだなぁ。
まさか親子孫の三代でリリス姫の婚約者を自称しているなんて……。
まあ、彼女は美人だし、スタイルもいいし、年齢なんかに問わず嫁に迎えたい気持ちがわかる気がする。
何せ、俺は魂は男だしねぇ……。
「わーん、いきなり殴ることはないじゃないか! パパにもママにも殴られたことがないのに!」
「む、むう……。」
「でも、イイッ……ボ、ボクをもっと殴ってくれ! そして叱ってくれぇ!」
「わあ、なんだ、コイツーッ!」
親に殴られたことがない!?
むう、甘やかされて育ったな、コイツ!
見た目だけなら、ウホッ! イイ男! と、思えるようなイケメン君なのに、これじゃそんな男前の容姿をまるでダメな方向に傾いている気がするぞ、まったく!
オマケにマゾか、コイツ!
いきなりぶん殴ったら、誰だって恨みの感情が芽生える筈なのに、コイツの場合はニタニタと不気味な笑みを浮かべて喜んじゃっているし……。
「キョウ、この男を黙らせよう。こういう輩は鬱陶しくてたまらん!」
「ああ、わかっている。じゃあ、上手く使えるかわからんけど……魔眼発動!」
さてと、上手くいくかはわからないけど、フィンソスに対し、俺は悪意を持って睨みつけてみる……魔眼発動!
「ぐ、ぐあああ、腹が……腹が痛いっ!」
「ふ、腹痛?」
「うわあああ、トイレ……トイレェェェ~~~!」
むう、魔眼の効果だろうか?
フィントスは真っ青な顔で腹痛を訴えると、近くにある武器屋の中にあるトイレを目指して駆け込むのだった。
「へえ、魔眼かぁ! とはいえ、あくまで人間の眼力じゃ、睨みつけた対象を腹痛や頭痛で苦しめる程度か――。」
「あ、ウェスタさん。うーん、ホントにそんな感じだね。」
「ちょ、じゃあ、あのババアが俺の身体をドロドロに溶かしたのって……。」
むう、あの女――アグリッピナ・マウソロスが使った魔眼と俺の使った魔眼では威力そのもの格が違うなぁ、そういえば……。
「魔眼について詳しそうだな、アンタ。」
「まあね。あれは別名、魔女眼とも言われていてね。魔女なら誰でに使おうと思えば使える割と簡単につか特技だったりするわ。」
「へ、へえ、じゃあ、アンタは魔女ってワケ?」
「ま、近いかなぁ……とはいえ、人を殺すほどの威力は発揮しないのが普通なのよね。ああ、仮に人を殺すような眼力を持つモノがいるとしたら、〝ソイツ〟は人間じゃないと思うべきね。」
「うむ、そのコの言う通りだ。魔眼の原典は、元々は古代の魔女が魔族から奪い取った技だ。人を殺すような威力を発揮するような魔眼を使うモノがいれば、ソイツはきっと魔族だ!」
う、じゃあ、あのアグリッピナって女は、実は〝人間〟じゃないのかも……。
アシュトンの身体は、あの女の魔眼の桁違いの魔力を浴びてドロドロの溶かしてしまったワケだし――。




