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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
543/836

外伝EP09 烏の沙羅と黄金の巨人

主人公は変わりますがEP08で登場したキャラは引き続き登場します。


登場人物紹介


・沙羅――人間を自称する烏。亡き友人の願いを叶えるために黄金文明を探しに向かう。


・ノネズミヒコ――沙羅の同行者である喋る鼠。

「兎天原南方には、何もかもが金銀財宝に彩られた黄金文明が存在したって話を聞いたわ。」


「その話なら知ってる。さっき看護婦達が、その話でワイワイガヤガヤと盛りあがっていたしね。きっと、あのマモンさんの話だと思う。」


「マモンさん? あ、ああ、未発掘の古代遺跡から金銀財宝を掘り起こして一夜にして巨万の富を得たっていう、あの……羨ましいなぁ。」


「確かに羨ましいわね。でも、あの人の事例は奇跡に近いわね。兎天原の南方は大半が砂漠に埋もれて昔、そこに何があったのか、何もかもがさっぱりわからない状態だし――。」


「ウフフ、でも、行ってみたいなぁ……私が生きていられるうちに。」


「そんな悲しいことを言わないで――きっと行ける! 行けるってば!」


「そうだと嬉しいな、アハハハ……あ、そうだ。もしも私が死んだら、アナタが代わりに黄金文明の遺跡を探してくれるかな、かな?」


「うーん、そんな不吉なことを言わない! ま、いつかは兎天原の南方へ行ってみたいとは思っているわ。」


 消毒液の臭いが鬱陶しかった記憶も強いけど、何もかもが真っ白く染まった病室で叶わぬ夢を語る亡くなった親友との思い出を、私は不意に思い出す。


「ちょ、飛びながら眠らないでほしいのであります!」


「あ、ゴメン……え、眠っていた?」


「間違いなく眠っていたであります! 危なく落っこちるところだったでありますよ、まったく!」


「わお、そりゃ悪い。」


 トンでもなく広大な盆地だと言われる兎天原だけど、その南方の大半が砂漠地帯である。


 だけど、数千年前までは、緑溢れる豊かな緑地だったとか――。


 とまあ、そんな時代に栄えた通称、黄金王国と呼ばれる何もかもが金銀財宝に彩られた文明社会が存在したという。


 そんなワケで兎天原の南方は、人跡未踏の地や稀少動物の宝庫である兎天原の東方と同じく一攫千金を狙う冒険者と呼ばれる無謀な連中垂涎の地域でもあることは言うまでもない事実。


 さて、私の名前は沙羅。


 見た目はハシボソガラスだけど、人間のつもりだ。


 ああ、ついでにだけど、私の背中にはノネズミヒコというペチャクチャとやかましく喋る鼠が乗っている。


 ん、それはともかく、何故、兎天原の南方の話をしているのかって?


 その理由は亡き親友との約束を果たすためである。


 ついでに、私が所属する武装勢力こと獣人飛行隊の新事業のひとつである稀少動物の保護も兼ねて――。


「あ、隊長が言っていた連中を乗せた馬車であります。」


「頭に角が生えた男と女……魔族か?」


「とりあえず、接触を試みるのであります。」


「うん、行こう……おーい!」


 獣人飛行隊の隊長であるヤマダシロウサヒコから話は聞いている。


 〝とある希少動物〟を保護するために新人を何人か兎天原の南方の町のひとつラゴモへ向かわせていると――。


 まあ、そんな新人が乗っている場所を上空から発見したので接触を試みるとするか――。


「ウホッ! イイ男……じゃなかった。お兄さんが獣人飛行隊の新人さんかな、かな?」


「う、うわ、喋る烏! だが、俺はもう驚かないぞ!」


「ムムム、何もそんなに驚かなくても……ま、それはともかく、ムジャトへ行くなら動向させてもらうわ。」


 ん~……鼻筋がすっきりとしたイケメン君じゃないか、獣人飛行隊の新人とやは――。


 だけど、烏である私が喋った――と、声をあげて驚く新鮮な反応を見せてくれる男だわ。


 兎天原の北方、或いは西方にある人間の領域からやって来たのかな?


 確か北方と西方には、私のような喋る烏――いや、鳥獣は生息していないと聞くしね。


 ついでにイケメン君は、三人の可愛い女のコを連れており、オマケに頭に山羊のような角が見受けられる。


 ん、三人の女の頭にも山羊のような角が見受けられる――有角人、或いは兎天原の嫌われモノこと魔族かもしれないわね。


「あ、ああ、ムジャトへ行くぞ。兎天原の南方へ向かうモノ達の中継点として機能する町みたいだしな。」


 エフェポスの村が兎天原の東方にある数多くの人跡未踏の地に臨む冒険者達の中継点として機能する村なら、件のムジャトという町は兎天原の南方――厳しい環境下である砂漠地帯にあるオアシスの町や村に食糧などの物資を届けるのが目的の行商人を中心とした連中の中継点として機能する町ってワケだ。


「そういえば、ムジャトの町は、確か――。」


「ハイドラ川の畔にある町であります。」


「むう、先に言われてしまったか……。」


「ハイドラ川? 俺はそれを知らんかった。」


「え、お兄さん知らないの? ええと、そんなハイドラ川は――。」


「兎天原最大の河川であります。」


「し、知らなかった。俺は無知だなぁ……いや、この世界に来て間もないし仕方がないだろう?」


「この世界に来て間もない? まるで異世界からやって来たって言ってるみたいね。」


 さて、ムジャトの町という場所は、兎天原最大の河川であるハイドラ川の畔にある町であると同時に、そんなハンドラ川は外洋へと繋がっているそうだ。


「お、見えてきたぞ。ムジャトの町が――。」


 なんだかんだと、そんな近くまで――。


 よし、ムジャトの町で兎天原の南方へ向かう準備と洒落込みましょうか――。

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