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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
526/836

外伝EP08 魔族に転生したんだけど、とりあえず仕事を探してみます。51

「ヒキガエルよりもウシガエルの方が美味しいかな? あ、鶏肉のような味がするわよ、ウフフフ……。」


「うわあぁ、あの姐さん、私を食べ物として見ている!」


「バエルは私の親友だから食べちゃダメー!」


「ザリガニとカタツムリを一緒にソテーにすれば、更にうま味よ☆」


「そ、そんなことより、バエルってヤツが504号室の外に出たぞ。俺達も部屋を出よう、捕まえるために――。」


 カエルやザリガニって美味いのか?


 美味いなら一度は食べてみたいもんだが――。


 それはともかく、ターブス・ゴリケインの部下のひとりである重厚な全身甲冑を身に着けた魔族ことエリゴルが、505号室の外へと勢いよく飛び出すのだった。


 さ、なんだかんだと追いかけよう。


 で、アムの親友であるピンク色のヒキガエルことバエルを使って奴を捕まえなくちゃな。


「私に任せるゲロ!」


「お、おう! だけど、どうやって捕まえるんだ?」


「そんなの簡単だゲロ……おい、そこのマヌケな脳筋女!」


「ちょ、いきなり呼び止めるのはいいけど、それは挑発だろう!」


「だだだ、誰が脳筋だァァァ~~~!」


 頭の天辺から両足の爪先までを重厚な全身甲冑で覆う騎士という感じ様相であるエリゴルだが、アムの話では〝中身〟は可愛い女のコのようだ。


 なんだかんだと、こりゃ気になるぜ……って、おい!


 バエルの奴、呼び止めるのはいいけど、相手を怒らせるような挑発的な物言いを――わ、エリゴルが身に着けている銀色の全身甲冑が、赤々と燃え盛る火炎のように赤く染まり始める。


 もしかしてキレちゃった? いや、間違いなくキレている。


 ギャキィ――と、ファイティングポーズを決めながら、エリゴルは505号室の入り口の扉の前にいる俺達の方を振り返ったワケだし――。


「ん、同胞がふたり、それにアム! お前、どこに……ヒ、ヒィィッ!」


 むう、見ただけで俺とポノスが、同胞である魔族だってわかるワケだ。


 と、その刹那、俺の頭の上にあがってゲコゲコと鳴くバエルの姿を見た途端、喉の奥で悲鳴をあげるエリゴルが身に着けている赤々と燃え盛る火炎のように赤く染まる全身甲冑が、サーッ――と、くすんだ灰色に変色し始めるのだった。


 ヒキガエルのバエルの姿は、重厚な全身甲冑を身につける物々しい騎士であるが、その中身はアムの話じゃ可愛らしい女のコらしいエリゴルにとっては、忌まわしいトラウマを刺激するモノとなった筈だ。


 全身甲冑が変色し始めたのは、そんな精神的ダメージの大きさを意味するモノだろう……多分。


「ア、アムッ……わ、私がヒキガエルが嫌いなことを知っているだろう?」


「勿論! バエル、お兄様の頭の上からエリゴルの頭の上に移動よ。」


「ほいほーい! んじゃ……でやー!」


「うわああ、わああっ……ううう~……ガクッ!」


「あ、気絶したぞ。」


 ガクンッ――と、エリゴルは膝から崩れ落ちるように仰向けにぶっ倒れる。


 やれやれ、気絶するほどのことでもないと思うんだが……。


 一体、どんなトラウマはあるのやら――。


『エリゴルはちゃんと迎えたのかしら? アイツ方向音痴だし、一緒について行ってやらないと……。』


「あの声はゴモリーよ。エリゴルと一緒に行動する気よ、お兄様!」


「コイツをとりあえず505号室に――。」


「うむ、尋問と洒落込むか……それとも説得するか――。」


 ゴモリーの声が聞こえる。


 アイツが504号室から出てくる前に、監禁も兼ねて気絶しているエリゴルを505号室に連れ込まなくちゃ――。


「よし、両手足を縛ったぞ。これで暴れても大丈夫だ。」


「んじゃ、私が起こしてやろう、ゲロロ~ン。」


 普通の客室としても利用できる以外に、他の部屋を覗き見することができる監視室としての機能も備えるマモンセントラルホテルの505号室の中に連れ込んだエリゴルに手足をポノスがつくった魔法の縄で拘束する。


 ついでに、重厚な全身甲冑を脱がす――お、〝中身〟は小柄な髪の長い可愛い女のコだ。


 あんな重厚な全身甲冑を身に着けていたわりには、意外かも――。


 さて、真の姿を晒すこととなったエリゴルの可愛らしい素顔をバエルが、長い舌でベロベロと舐め回すのだった。


「あうあうあうっ……くずぐったいのですぅ……モ、モギャアアアアッ! カカカ、カエル! ヒキガエルだァァァ~~~!」


「おはよう、エリゴル君!」


「ヒイイイッ! ゴ、ゴフッ……!」


「な、何故、吐血!」


 目を覚ました途端、エリゴリは口から血を吐いて再び気絶するのだった。


 お、おいおい、何故、吐血なんて……。


 あ、ああ、精神的ダメージが肉体的ダメージに変換されたのかも――。

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