EP7 俺、家出姫と出逢います。その4
ケモニア大陸のほぼど真ん中にあるのが兎天原である。
で、そんな位置的な理由からケモニア大陸の東西南北の主要国へと向う行商人などの連中が、エフェポスの村などを拠点にしていたりするようだ。
俺――異世界から魂だけの状態でやって来て早逝したエリス姫というお姫様の肉体を仮初の肉体としている異邦人である和泉京次郎改めキョウとは、容姿が瓜二つだというマーテル王国の家出姫ことリリス姫は、どうやら行商人と一緒にエフェポスの村にやって来たようだ。
そうそう、ウワサ話じゃマーテル王国の追手が彼女と駆け落ち相手であるディルムって奴を探し回っているらしいね。
リリス姫の婚約者が中心になっているという話も出回っていたなぁ、そういえば……。
さて。
「行商人はいっぱいだなぁ! でも、兎獣人や猫獣人ばかりだなぁ。」
「そりゃそうだ。ケモニア大陸は人間より獣や、その上位種である獣人の方が多い大陸だからね。ウワサじゃ兎天原を支配しているマーテル王国の王様は、鼻が長くて耳が大きな大型草食獣の姿をしているようだ。」
「ちょ、それって象さんでは……。」
「でも、あの王様の場合は、ポース山の女帝を怒らせてしまったが故に、〝あの姿〟になってしまったとか……。」
「そ、そうなんだ……ってか、ポース山の女帝は悪いウワサしか聞かない最恐の女神らしいね!」
うう、怖っ……仮に逢う機会があるとしたら、絶対に気に入られるようにしなくちゃな!
ポース山の女帝と呼ばれる女神には――。
と、それはともかく、俺達はエフェポスの村へとやって来る。
しかし、相変わらず、この村は古臭いなぁ。
立ち並んでいる家屋なんかは、俺が本来いるべき世界の故郷――日本の古代風の家屋である高床式住居しか見受けられないしね。
「シモーヌの宿屋は、あそこです。ほら、あの大きな木彫りの兎の像がある店があるでしょう?」
「あ、ああ、軒先に立っている八頭身のアレね。」
マーテル王国の家出姫ことリリス姫が宿泊中らしいシモーヌの宿屋の軒先には、人参のような剣を頭上の掲げてたスラリとした体格が、まるで人間のような八頭身の兎獣人って感じの木彫りの像が立っている。
どうやら彫刻師である宿屋の主人シモーヌの作品みたいだ。
で、エフェポスの村の村長でもあるフレイ曰く、ハットーシーンというウサギ獣人がモデルだって話。
へ、へえ、大柄な兎獣人もいるのね。
まあ、でも、兄貴やヤスを含めたエフェポスの村に住んでいる兎獣人は、大半が俺が知っている〝兎〟の中でも、特の身体が小さい種類であるネザーランドドワーフが、スッと二足歩行で立ちあがった程度の大きさである。
「キョウ姐さんそっくりなリリス姫かぁ……よし、見に行ってみっか!」
「あ、フレイヤ! まったく、デリカシーがないわね。」
「フレイ、それはいんだよ、細ぇことだしな!」
と、フレイヤが駆け出す――無論、向った場所はシモーヌの宿屋である。
ちょ、興味があるのはわかるけど、ホントにデリカシーがないなぁ!
「と、とりあえず、フレイヤの後を追ってみよう!」




