EP7 俺、家出姫と出逢います。その3
登場人物紹介
・アシュトン――動く骸骨として蘇った男でキョウの使い魔その3。
マーテル王国の家出姫ことリリス姫は、勇気ある女性の鑑として同じ女性達からの人気を集めている人物のようだ。
何せ、婚約者がいながら駆け落ちという暴挙に走ったワケだしね。
この世界での人間の女性の権威は低い。
まさに父権社会真っ只中である。
そう俺が本来いるべき世界では、女性差別だと訴えられてしまいかねないが、この世界では、一昔前……いや、それ以上は昔といった感じの差別社会が息づいているっぽいぞ。
とまあ、権威がない故に、父や兄といった血縁関係にある男性達によって政略結婚等に利用される哀れな女性が多いと聞く。
そんな中、駆け落ちという暴挙に走ったリリス姫は、ある意味で革命を起こした人物なのかもしれない。
あくまでウワサ話だけど、彼女の真似をして駆け落ちする女性達が、一時期、百人を越えたという。
さて。
「ところでマーテル王国の家出姫ことリリス姫は、どこにいるんだ、フレイ?」
「んで、一緒に背の高いイイ男がいませんでしたか?」
「ああ、そのイイ男というのはディルムという人物で、元ネメシス騎士団の騎士団長なんです。」
「まったく、ディルム元騎士団長は疫病神だぜ! あの人のせいで三百年の歴史を持つ由緒正しきネメシス騎士団の勢力が大幅に縮小してしまったし、オマケにあの外道アラフォー女のようなキ○ガイに好き勝手に使い回される下っ端騎士団になってしまうきっかけもつくってしまったワケだし!」
「うーん、そんなに一度に言われると、正直、困る……あ、でも、キョウさんそっくりな人物ことリリス姫と思われる女性なら、エフェポスの村にある宿屋のシモーヌさんのところにいるわ。」
ふーん、俺そっくりな奴――リリス姫と思われる人物は、エフェポスの村にある宿屋にいるワケね。
「な、なあ、派手な格好をした獅子を引き連れた女はいないよな?」
「ん、誰それ?」
「そ、そうか、その様子だと、あの女はいないっぽいなぁ、エフェポスの村には……。」
ふ、ふう、あの厄介な女――アグリッピナ・マウソロスは、エフェポスの村にもういないようだ。
なんだかんだと、安心したかも……。
「むうう、なんで俺はこんなモノを着なくちゃいけないんだ!」
「そりゃ、アシュトンさんは骸骨だし……。」
「そういえば、死神は真っ黒なフードがついた外套を身につけ、オマケに大鎌をたずさえているようだ。全身甲冑が嫌ならそっちでもいいぞ?」
「い、いや、全身甲冑でいいです……。」
全身甲冑なんか嫌だ! と、文句を言うアシュトンだけど、正直なところ死神の格好をするよりはマシだと思う。
死神の格好なんか真似たら、タダでさえ動く骸骨という姿であるアシュトンの場合、余計に怖がられてしまいそうだしね。




