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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
499/836

外伝EP08 魔族に転生したんだけど、とりあえず仕事を探してみます。24

「あ、わかった! ノブちゃんは追い剥ぎ共に金で雇われたんでしょう?」


「うん、時給八百MGで――。」


 むう、メリッサの友人のノーブルは、追い剥ぎ共に雇われたフリーターみたいな存在か!?


 時給八百MGで雇われたって言っているし――。


 ちなみに、MGとはマーテルゴールドの略である。


 トンでもなく広大な兎天原を支配しているマーテル王国という国が発行している共通通貨のようだ。


「うお、なんでお前みたいな新参者が俺と同じ時給なんだよ!」


「つーか、俺はお前らより二十OG少ない時給七百八十OGだぞ……ど、どういうことだ!」


「わああ、八つ当たりはやめてください!」


「……って、ノーブル、お前の友人と恩師であるハゲのオッサンはどこへ行ったんだよ!」


「ニャハハ、逃げたのかも……ちょ、メリッサちゃん、どこォォォ~~~!」


 さて、時給のことでモメるメリッサの友人ノーブルらの隙を突くカタチで、俺達は追い剥ぎ共のアジトの更に奥へと進むのだった。


「ん、お前らは何者だ……ア、アオオッ!」


「見かけない顔だな、まさか侵入者……アーッ!」


「やったね、ダーリン! 見張りの男は眠ってしまったわ!」


「ヒュー……睨みつけただけで眠ってしまったぞ。夢魔の力だったりする?」


「睡魔眼よ。睨んだ相手の眠気を誘発するだけの比較的弱い魔力波を放出するだけのモノよ。」


「え、そうなの? ううむ、変な声を張りあげたから大丈夫なのか、コイツらって思っていたんだ。」


「でも、妙ね。女性型夢魔(サキュバス)の私と違って男性型夢魔(インキュバス)のダーリンの睡魔眼は、確か同性に対する効果が薄い筈なのに……。」


「あ、コイツらは男装した女っすよ。俺は体臭で人間の男女を見分けられるっす。」


「うむ、ヤスの言う通りだな。ムフフフ……。」


「兄貴、眠っているからって執拗に胸を触っちゃダメっす! 俗に言うセクハラっすよ!」


「気のせいだ、ヤス! その前に何を言うんだ、お前ェェェ~~~!」


「ニャハ、なるほど! そういうカラクリがあったワケね。」


 むう、三度、追い剥ぎ共に遭遇してしまうが、ここで俺の能力――睨みつけた相手を眠らせる睡魔眼という夢魔の能力が発動するのだった。


 さて、俺が睡魔眼で眠らせた追い剥ぎは、どうやら男装した女のようだ。


 まあ、如何にも柄の悪い男共のみで構成されていそうな追い剥ぎ共の中に咲いた可憐な花とばかりに女がいても当然だよなぁ。


 メリッサの友人のノーブルってイイ例だし――。


「あ、階段があるわよ、ダーリン。」


「ああ、二階へ行ってみようぜ。」


 俺が睨みつけたことでゴトンとひっくり返って眠ってしまった追い剥ぎの背後には、上の階へと続く階段が見受けられる。


「ん、声?」


「足音も聞こえてくるっすね!」


「こりゃ、追い剥ぎ共にまた遭遇するパターンかもな!」


 ルリ、ヤス、ハニエルが、逸早く上の階から降りてくる追い剥ぎ共の声、そして足音に反応する。


 人間のように喋るとはいえ、流石は聴力に長けた兎だな。


 それはともかく、このままだと四度、追い剥ぎ共と遭遇するパターンに発展しそうだ。


「この状況を打開する方法はないのか?」


「ちょ、みんなの視線が俺に……た、頼られてる?」


「ニャハハハ、ダーリンったらモテモテね☆ でも、ここは私に任せてよ!」


「ポノス、何か作戦があるのか!?」


 ん、ポノスには何かしらの作戦があるようだ。


 よし、ここは頼るっきゃないな!


「は~い、それじゃやっちゃいましょう!」


「う、うお、ポノスの姿が消えた⁉」


「ニャハハ、ダーリンのすぐ側にいるわよ。」


「え、すぐ側に……あ、この感触は⁉」


「キャッ! ダーリンったらエッチィねぇ~☆」


「ス、スマン! 今、お前の尻を触ってしまったようだ!」


「ウフフ、まあいいわ。それよりダーリン、自分の身体を見てよ?」


「え、俺の身体……お、おわー! 身体が透けていく!」


「むう、これは広範囲に及ぶ隠形の術では⁉」


「ダハーカ教授、ビンゴよ! つーか、あの魔術の元ネタ――原典は、私達魔族が使う技だったりするわね。さて、私が奔流となって、みんなの姿を一時的に見えなくしているわ。これで上の階からやって来る連中には姿が見えなくなった筈よ。」


 ポノスの姿が空気の中に溶け込むように消失する――が、俺のすぐ側にいるようだ。


 その証拠とばかりに、俺の右手が彼女の尻と思われる個所を鷲掴んでしまったし……。


 と、そんな俺の姿も空気の中に溶け込むように消失する――おお、俺の足許にいる筈のユウジ、トモヒロ、ルリの姿も消え失せる。


 当然、小フレイヤと大フレイヤ、それにビリー、メリッサ、ヤス、ハニエル、ダハーカ教授の姿も――。


 で、原理はともかく、ポノスの側にいれば、彼女が奔流となって側にいる俺達の姿を見えなくしているようだ。


「お、上の階から柄の悪いヒゲのオッサンが、同じく柄の悪い仲間を引き連れて降りてきたぞ。」


「ふむ、だけど、本当に私達の姿が見えていないみたいね。」


「よし、面倒くさい輩がいなくなったし、二階へあがろう。」


 上の階から降りてきた追い剥ぎ共は、俺達の存在にまったく気づいていないようだし、二階へ行くなら今しかないな。


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