外伝EP08 魔族に転生したんだけど、とりあえず仕事を探してみます。21
別名、宝石の森と呼ばれる美しい宝石のような草木が生える特異な森であるマシュルカの森には、稀少動物として好事家に人気の洞窟ペンギンという珍鳥が住まい一方で、追い剥ぎのような小悪党も巣食っている。
奴らの狙いは、収穫から三十分程度で鮮度が急激に落ちて食べることができなくなる翡翠草や瑪瑙茸のような珍味(?)を求めてやって来るモノ達である。
オマケに、マシュルカの森の中は、危険な魔獣が住んでいないというワケで気軽にやって来るモノが多い。
悪党にとって絶好の標的になりそうだよなぁ……。
さて、考古学者であるが生ける屍ことゾンビだと自称しているメリッサの考古学の師であるダハーカ教授と俺達は、マシュルカの森の中で出逢う。
だが、追い剥ぎに身ぐるみを剥がされ上半身裸の状態で彷徨い歩いていたワケだ……。
「ところでダハーカ教授、何故、マシュルカの森へたったひとりで来たんですか?」
「勿論、洞窟ペンギンの保護のためだ。しかし、まさか追い剥ぎ共とハンターが手を組んでいるとは予想外だった……。」
「ハハハ、相変わらず無謀ですねぇ。」
「無謀? 私のように活発に保護活動を行いモノがいないと稀少動物が好事家共によって絶滅に瀕してしまうじゃないか!」
ふむ、ダハーカ教授の目的は、どうやら俺達と同じっぽいぞ。
でも、返り討ちに遭ってしまったワケだし、実力のほどは……。
「さて、こうして出逢えた縁もある。私の手荷物や衣服を追い剥ぎ共から奪い返す手伝いを頼む!」
「え、私は手伝ってもいいのですが……。」
「俺もいいぞ。どうせ、洞窟ペンギンの住処がある金剛石の壁へ向かうついでだしな。」
「お、ダーリン、優しい☆ 勿論、私もイイわよ。」
ま、追い剥ぎ共に奪われた手荷物や衣服を取り戻すのを手伝ってやるとするか――。
なんだかんだと、追い剥ぎ共と洞窟ペンギンを捕獲しようと目論んでいるハンター共には繋がりがあるっぽいしね。
上手くいけば、マシュルカの森の中に潜んでいる連中を一網打尽にできるかもしれないしな!
「よし、ならば即、行動に移ろうではないか! さあ、奴らのアジトはこっちだ――ッ!」
「まったく、忙しないオッサンだなぁ……。」
「だねぇ、ダーリン。」
「兄貴、あのオッサン、怪しくないか?」
「ん、確かになぁ。あのオッサン、追い剥ぎ共のアジトの場所を知っているっぽいし……。」
「ニャハハ、杞憂ですよぅ、魔族のお兄さん。ダハーカ教授は人を騙すような悪党じゃありません!」
思い立ったら即、行動に移るのはイイことだとは思うけど、何か裏がありそうな気がするのは、メリッサの言う通り、杞憂なんだろうか……。
「追い剥ぎ共のアジトが見えてきたぞ!」
「ん、廃屋?」
「うむ、だが、ああ見えても以前はそこそこ有名な森のホテルだったようだぞ。だが、アライグマのウルカヌスのホテルの方が人気が出てしまい廃業に追い込まれてしまったようだ。」
「へえ、そうなんだ。詳しいですね、ダハーカ教授。」
「ハハハ、私はホテル通でね。ま、そういうことだ。」
ふーん、ホテル通ねぇ……。
さて、俺達はダハーカ教授に案内されるカタチで、今いるマシュルカの森の中にある廃墟の裏口へとやって来る。
ちなみに、二階建てのそこそこ大きな建物である。
ウルカヌスの鍛冶工房兼ホテルの方に人気が集まってしまい廃業に追い込まれてしまい廃墟と化してしまったホテルのようだ。
ここを追い剥ぎ共がアジトとして再利用している――と、ダハーカ教授は言っている。
「そこに扉がある。さ、入るぞ!」
「あ、待ってくださいよぅ!」
「お、おい、ダハーカ教授、それにメリッサ、迂闊だぞ!」
迂闊だ、オマケに無謀だ!
と、ダハーカ教授とメリッサが追い剥ぎ共のアジトとして再利用されている廃墟化したホテルの裏口から、その中に入り込んでしまう。
「ダーリン、追わなくてもいいの?」
「しかし、あのダハーカ教授って怪しいよなぁ……。」
「うん、追い剥ぎ共のアジトを知っていたしね。」
「で、どうする? 追うのか?」
「仕方ねぇ。追うぞ、なんだかんだと放っておけないしな。」
ダハーカ教授は怪しいのは確かだ。
一切、迷いもせずに追い剥ぎ共のアジトに俺達を案内したワケだし――。
おっと、そんなことより、先行するカタチで追い剥ぎ共のアジトの中に入り込んだダハーカ教授とメリッサが心配だし、追いかけるっきゃないよな、やれやれ……。




