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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
487/836

外伝EP08 魔族に転生したんだけど、とりあえず仕事を探してみます。12

 まったく、異界化し、広大な場所と化しているだけじゃない面倒くさい場所のようだなぁ、魔獣ピコポンの胃袋の中は――。


 猫や兎ほどの大きさの赤黒い芋虫の姿をしたゴルゴンワームとかいう寄生虫が、胃液の中に大量に潜んでいたワケだし――。


「う、うおーッ!」


 俺は意を決し、下段から大剣を振りあげる!


 ドバババッ――と、真っ赤な血が吹き出すと同時に、俺達が今いる異界化したピコポンの胃壁に縦一線に傷が入る。


「お、胃壁は意外と薄いようだわ、ダーリン。切り口を広げて、外に出ましょう!」


「だが、出たところでどうする? あくまで胃袋の外に出ただけってことにならないか?」


「いわれてみれば、そうなるわね。さて、どうしましょう……。」


 異界化した胃袋の外に出たところで、ピコポンの身体の外に出たことにはならないんだよなぁ……。


 うーむ、なんとかして内側から表皮を切り裂く方法も考えなくちゃいけないぞ、まったく!


「わしにイイ考えがあるぞ、魔族の小僧。」


「イイ考え? それは一体……。」


「その剣にありったけの魔力を注ぎ込むのじゃ。わしの眼に狂いがなければ、今の状態以上に巨大な刃をつくることができる筈じゃ。」


「お、おう、ゴルゴンワーム共が集まってきたしな! でも、どうやって魔力を注ぎ込むんだ?」


「ウフ、そこで相棒であり彼女である私の出番ね! さ、私がエスコートするから早速、やっちゃうわよ!」


「お、おう! ぐえーっ!」


 イイ考えがある――と、ウサエルが言う。


 それを俺が持つ大剣の刃にありったけの魔力を注ぎ込み更に巨大化させることである。


 むう、短剣から大剣に化けたモノだし、更なる変化がある筈だろうけど、どうやって魔力を注ぎ込むのか、俺にはその方法がわからん。


 とまあ、そんな俺をエスコートすると言い出すポノスが、再び俺と合体する。


 だが、今度は俺の口の中に入り込んできたぞ……く、苦しい合体だな!


「ポノス、身体が小さいからって口の中から入り込むとかふざけんな!」


「ニャハハハ、これも合体のひとつよ、ダーリン☆」


「む、むう、口が勝手に……だが、妙だ。力が湧いてくる……。」


 まったく、口の中に潜り込むとか嫌すぎる合体法だな。


 オマケに、合体してもポノスの人格は独立しているので、今の俺はころころと人格が交代する多重人格者のような感じになっている。


 だが、力が湧いてくる……おお、身体が熱い!


「お、おおお、今なら引き出せるかもしれん……うおーッ! なんか身体が勝手にィ!」


「ニャハ、ダーリンはその大剣に魔力を注ぎ込み方に慣れてないから、全部、私がやっておくわね。」


「お、おいィィ!」


 ポノスと合体したことによって大剣に全魔力を注ぎ込むことができそうだ……いや、既にポノスが勝手に俺の魔力を大剣に注ぎ込んでいる状態だ!


「ホッホッホ、凄いのう。流石は魔族じゃのう。」


「凄い、凄いぞ、大剣の刃が更にデカくなっていっている!」


「そ、そんなことより、ゴルゴンワームをどうにかしてください! わ、私の左の二の腕の下の部位が血を吸われてミイラのような状態になってしまっています!」


「ダーリンの足許に見受けられるミイラって、もしかして……いや、間違いなくゴルゴンワームに襲われてしまった犠牲者だと思うわ。ほら、血を吸われた痕跡があるしね。」


「マジかよ! 眼鏡ちゃん……いや、メリッサ、お前は大丈夫なのか⁉」


「ええ、私はとりあえずゾンビなので、例え体の一部がカラカラに乾燥したミイラのような状態になってしまっても平気です。あ、輸血をすれば元通りに修復しますよ☆」


「な、なんだってー!」


 うは、元は刃渡り三十センチ程度の短剣だったモノとは思えないほどの大剣と化したぞ!


 今や、その刃渡りは五メートルは確実にあるぞ!


 さて、その一方で異界化したピコポンの胃袋の中に巣食うゴルゴンワームをどうにかしなくちゃいけないな。


 で、奴らは吸血生物のようだ。


 その証拠とばかりに、メリッサに襲いかかって個体が彼女の左腕の二の腕から下の血液を吸収し、カラカラに乾燥したミイラのような状態にしてしまったワケだし――。


 しかし、彼女はゾンビと自称しているので、例え左腕の二の腕から下の部位がミイラのようになってしまっても大丈夫かな……かな?


「ダーリン、もういいわよ。」


「お、おう……って、お前が勝手にやったことだろう? つーか、余計なくらいデカくなっちまったな、おい!」


 むう、なんだかんだと、ポノスのおかげで大剣の刃渡りが八メートルには達しただろうなぁ。


 とはいえ、羽毛のような軽さである。

 

 これなら思う存分に振り回すことができそうだ。


「コイツを胃壁に再びぶっ刺せばいいのか?」


「ん、今度はこうやるのよ、ダーリン!」


「うわ、身体が勝手にィ!」


 うわあ、身体が勝手に動くッ……ポノスの肉体の自由を奪われたのか⁉


 人格が独立しているという弊害が、ここに来て出てしまったのかも――。


「大剣が……超大剣の切っ先が異界化した胃袋の天井に突き刺さした……な、何をするんだ、ポノス⁉」


「なるほどのう。大剣を媒介として魔道砲を放つ気だな?」


「魔道砲⁉ ぐ、ぐわああ、今度は力が抜けるゥゥゥ~~~!」


 俺の身体の自由を奪ったポノスは、八メートルは確実にある超大剣を胃袋の天井に突き刺す――そんな超大剣を媒介に魔道砲とやらを放つ……だと⁉


 うう、まさにその通りかも……身体中の力が一気に抜けていく感じだ!


 魔道砲とやらは、俺の身体に蓄えられた魔力をすべて放出する技なのかも――。


 あ、ああ、胃袋の天井に突き刺さる超大剣が光を放つ……まぶしいッ!


「お、おお、光が見える……太陽の光だ!」


「じゃあ、魔道砲は胃袋……表皮を内側から撃ち抜いたのか……うお、眩暈が!」


 お、おお、魔道砲はモノの見事にピコポンの異界化した胃袋と表皮を内側から撃ち抜いたようだ……太陽の光が神々しく差し込んでくる!


 だけど、俺の身体にはとてつもない疲労が襲いかかる……う、動けん!

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