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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
472/836

外伝EP07 兎転生その20

『グギャオオオッ!』


『ココヲ開ケロ、グガアアッ!』


『オオオ、俺様ノ身体ガ溶ケル……ギギギッ!』


 魔術師ヘイボンの書斎の外からは、相変わらずヴァンキー共の不気味な叫び声が響きわたってくる。


 奴らはいつまで……いつまで居座り続ける気なんだ!


「うわ、ヴァンキー共、懲りずにまだ……は、早く秘密の抜け穴に案内してくれ!」


 ふ、ふう、魔術師ヘイボンの書斎の出入り口の扉に刻まれた旧神の印には本気で感謝しなくちゃいけないな。


 アレのおかげでヴァンキー共が、ここへ足を踏み入れることができないワケだし――おっと、それよりも秘密の抜け穴に案内してもらわないとなぁ。


 ここは触ると危険な本を筆頭に興味深い本がたくさんあるので、もうしばらくいたい気もするけど、外にいるヴァンキー共の鬱陶しさを考えると、今は秘密の抜け穴を介し、ここから出た方がいい気がしてきたぜ。


「じゃ、案内しますね。ええと、確か……お、あったあった!」


「ん、赤いボタン?」


「これを……えいっ!」


「め、目の前の本棚がバカーンと割れて階段が――ッ!」


 むう、ルリに案内されるかたちで向かった魔術師ヘイボンの書斎を深奥にある本棚が、バカーン――と、真ん中からふたつに割れ、そこに底が真っ暗闇で何も見えない大きな穴が出現する。


「おい、ここに飛び込めって言うのか?」


「あ、大丈夫です。確か階段があった筈ですから――。」


「うむ、本当じゃ! 螺旋状の階段があるぞ。」


「お、おお、確かに螺旋階段があるな。まったく、危うく穴の中に飛び込んでしまうところだったぜ。」


 な、なぁんだ、穴の中には螺旋階段があるじゃないか――。


 ウミコが懐中電灯の灯りで、そんな螺旋階段があることを教えてくれなかったら、俺は底の見えない穴の中に飛び込んでしまうところだったぜ。


「ユウジ、飛び込もうと思っただろう?」


「う、うむ……。」


「ハハハ、図星みたいだな。しかし、馬鹿なことを考える。仮の飛び込んだ場合、お前は転落死するところだったかもな。」


「キョウ姐さん、やめてくれよ。そういう例えは……。」


「まあ、とにかく、螺旋階段を降りてみましょう。ウフ、どこに繋がっているのか、秘密の抜け穴の底にたどり着くのが楽しみですしね。」


「それは同意見だ。では、行こう。」


「あ、待て! 私も行くぞ。」


 秘密の抜け穴の底が、どこに通じているのか気になっているのは、当然、俺だけではない。


 と、そんなこんなでウェスタとヘラ、それにアポロが先行するかたちで螺旋階段を駆け降りる……よ、よし、俺も!


「階段に照明器具がついていればなぁ……。」


「我慢しろ。懐中電灯の灯りがあるんだし、贅沢言うな。」


「む、むう、そうだなぁ……。」


 照明器具があればいいなぁと思ったけど、それは難しい話だ……というのも螺旋階段はおんぼろな木製である。


 なんだかんだと、階段のところが古ぼけて穴が開いていたり、踏板が欠損してなくなっている個所が、そこそこあるんだよなぁ……。


 故に、今いる螺旋階段の全体を照らす照明器具が欲しいところである。


「うお、踏板が半分ほど欠損している……よっと!」


「危ないわね、まったく!」


「ひゃあ、危なく踏み外すところだった!」


「愛梨は鈍くせぇな、まったく!」


「う、五月蠅いわね! 私は身軽なお猿じゃないから大変なのよ!」


「フフフ、わかっているよ。」


「あ、笑った……馬鹿にしてるゥゥ!」


「あ、あああ、思い出した!」


「ル、ルリ、大声を張りあげてどうしたんだ?」


「お、思い出したんです! ええと、確か……リッカアー!」


「リ、リッカアー? う、うおー、明るくなった!」


「エヘヘヘ、照明器具があるのっていいですね☆」


「「「それを最初から点灯させろーっ!」」」


 う、うへえ、照明器具があるなら螺旋階段を降りる前に点灯させてくれよ、ルリ!


 ちなみに、照明器具は手すりに設置されているようだ。


 で、ルリ曰く、階段の最下層にある魔力炉に蓄えられた魔力が尽きない限り半永久的に光り続けるモノらしい。


 な、なるほど、リッカアーって言葉は呪文は照明器具を点灯させる呪文だったワケね。


「あ、底が見えてきたわね。」


「ついでに通路も……ぐわっ!」


「油断は禁物よ、お姉様、ウフフフ……。」


「むう、周囲が明るくなったとはいえ、この階段は危険だな、まったく……。」


 手すりに設置された照明器具のおかげで明るくなったとはいえ、俺達が降っている螺旋階段は、前述した通り、穴が開いていたり、踏板が欠損してなくなっている個所もあったりする古ぼけたモノであることを忘れちゃいけない。


「よし、秘密の抜け穴の底へ到着……わ、何かいる!」


「白濁の粘液状生物!」


 白濁色のアメーバ……スライム⁉


 とにかく、床にぶちまけた甘酒や某炭酸飲料水が粘液状の生物と化して蠢き始めたって感じのモノが、ゾワゾワと地面を這いずりながら、俺達がいる秘密の抜け穴の底に集まってきたんだけど……な、なんだ、コイツらは⁉


「ショ、ショゴス!」


「な、なんだ、ソイツは?」


「そうだなぁ、どんなモノにも変身することができる邪悪な生き物って感じかな?」


「う、うええ、それが本当なら不味くないか⁉」


 ちょ、どんなモノにでも変身できる……だと⁉


 厄介な化け物がいたもんだぜ……。


「ゴ……ゴスズン……。」


「ん、ホワイトショゴス……私のことがわかるの?」


「ハイ……姿ハ変ワレド、主ヲ忘レルヨウナ不届キ者デハアリマセン。」


「わ、喋った……え、主⁉ それってルリのこと?」


 な、なんだなんだ、白濁色の巨大なアメーバ、それともスライム――いやいや、ホワイトショゴスが喋る。


 姿とは裏腹に高い知能を有しているっぽいなぁ――と、それはどうでもいいけど、ルリのことを主って呼んだぞ!

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