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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP07 兎転生その17

 アスモダイの森の中に生息する生物は、八対二の割合で吸血生物が占めるようだ。


 さて、キョウ姐さんや愛梨はアスモダイの森の中にあったグラウンドの中央にあった地下に埋もれた遺跡の奥にあった十二本の環状石柱に囲まれた門を潜らなかったのか⁉


 それとも別の場所に転移したのか――おっと、それはともかく、無数の赤い光に俺達は包囲されている。


 う、この赤い光は、何かしらの生物の目玉が放つ光だ!


 真っ暗闇の中で赤く爛々と輝く眼……吸血生物キターッ!


「だ、誰だ、貴様らは!」


「ウ、ウミコ、それは懐中電灯ッ……う、うわああ、両目が真っ赤に輝く両腕が蝙蝠の羽みたいな形状の真っ黒なお猿だ!」


「コ、コイツらがヴァンキーじゃ!」


「な、何ィィ!」


 う、うわああ、遂に魔獣ヴァンキーの登場だァァァ~~~!


 そんなウミコが持ってきた懐中電灯によって、その姿が明るみとなった魔獣ヴァンキーの姿だが、両腕が蝙蝠の羽のような形状をした頭の天辺から両足の爪先まで真っ黒な毛に覆われた巨漢……いや、類人猿のゴリラのような生き物だ!


 う、うお、爛々と輝く赤い眼以外の顔のパーツ……鼻と口が見受けられない!


「コ、コイツら、俺達を包囲して集団で襲いかかる気なのかも……。」


 むう、なんだかんだと、悠長に語っている暇はないぞ。


 ヴァンキーは一匹だけじゃない……最低でも三十匹はいる!


 これだけの数は一斉に襲いかかってきたら一溜りもないぞ、こりゃ!


「キュキョキョキョッ!」


「ヒ、ヒイイッ!」


 く、ヴァンキーの一匹は不気味な咆哮を張りあげる。


 俺達を脅かして楽しんでいるのか、悪質な奴め!


「お、おい、コイツらを避ける方法は何かないもんか……。」


「うーん、太陽の光以外、退ける方法はニャいと思う。」


「タ、タマゴロー……ス、ストレートに絶望的なことを言う!」


「うぬぅ、懐中電灯の灯りじゃダメじゃのう、多分……。」


 太陽の光以外、奴を退けられるモノはない……だと⁉


 同じ光でも懐中電灯の灯りじゃヴァンキーには効果なしってところか……ど、どうする、俺!


「キョキキイイ!」


「ヴァンキーが近づいてきた!」


「く、魔術でぶっ飛ばすか!」


「魔術でぶっ飛ばしたところで向こうは数で攻めてくる輩だ。一匹を倒せても他にもわらわらいることだし、キリがないぞ!」


 うく、ヴァンキー共が遂に蠢き始める。


 ゴリラのような巨躯が不気味な足音を立てて接近する――魔術でぶっ飛ばしてやる!


 最低でも三十匹はいてキリがないけど、連中を一匹でも多く退けるため――ッ!


『お前ら、こっちへ!』


「え、今、声が……うわあ、まぶしい!」


 ん、この絶望的――かもしれない状況下に陥った俺達に対し、救いの手を差し伸べる声が聞こえる!


 その刹那、夜明けの太陽が放つ山吹き色の光がバッ――と、拡散する。


「キ、キキキキィィ!」


「フゲゴガアアアッ!」


「ヴァンキー共が悲鳴をあげて苦しんでいるニャ! さあ、今のうちに俺の背に乗るニャ!」


「お、おう!」


 声の主が何者かは知らないけど、ヴァンキー共は怯んでいる隙を突いて奴らの包囲網から脱出するために信じる他ないだろう。


『こっちだ、こっち!』


「おう、今そっちへ行くニャ!」


 再びさっきの声が――う、俺とトモヒロ、それにウミコが背中に飛び乗ると同時にタマゴローが駆け出す。


 声の主の居場所がわかるのか――と、とにかく、迫りくるヴァンキー共が山吹い色の光によって怯んでいるうちに奴らのもとから脱出しなくちゃ!


「ギガアアアッ! 逃ガサナイゾ!」


「ウウ、ダガ、コノ光ハ耐エ難イィ!」


「オノレェ! ドコノドイツダ……グオオ、太陽の光ナンテ大嫌イダァァァ~~~!」


 ヴァンキー共の呻き声が聞こえる。


 連中のような吸血鬼にとって偽物かもしれないけど、太陽の光こそもっとも忌み嫌う光なんだろう。


 と、そんなヴァンキー共のもとから逃走する俺達を背中に乗せた巨大猫――タマゴローは、根元に大きな洞穴がある大木のもとへと移動する。


「よし、入るニャ! うむ、俺でも余裕で入れる大きな穴だニャ。」」


「熊の巣なんじゃ……お、気配を感じる⁉」


「さっきの声の主かもしれないな。」


「よし、懐中電灯で――。」


「そんなモノ要らないぞ。ホラよ!」


「お、おお、明るくなった……い、鼬……オコジョ?」


「違う違う。私はフェレットだ。」


「フェレットは鼬の一種じゃ……ん、もしかして、さっきの声って?」


「そう、私だ。」


 む、大木の根元に見受けられる洞穴の中には、煌々と輝く野球の硬球ほどの大きさの光の玉を抱えた真っ白な喋るフェレットの姿が――。


 どうやら、さっきの声の主はコイツのようだ。


「お前はアポロじゃないか!」


「ウミコ、知り合いなのか?」


「まあな。だが、アポロ、何故、アスモダイの森の中にいたのじゃ?」


「ああ、この三日月の実を採取しに……お、そうだそうだ。キョウ達と一緒だったのだろう?」


「うむ、アスモダイの森の中にあったグラウンドの地下に埋もれた遺跡の中にいた時まではな。」


「そんなキョウ達もお前達と同じく私が救出しておいたぞ。」


「そ、そうなのか!」


 お、おお、キョウ姐さん達もあの門を潜り抜け、地下に埋もれた遺跡の中からアスモダイの森のどこかに空間転移したようだな。


 ふう、これで一安心できるな。


 さて、アポロという名前のフェレットに一足先に救出されたキョウ姐さん達はどこにいるんだろう?

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