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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP07 兎転生その14

『う、うわーっ! つつつ、捕まってたまるもんかー!』


 と、そんなルリの叫び声が聞こえてくる。


 ちょ、アルゲンタビスかもしれない巨大鳥に襲われているのか⁉


 鳥がギャーギャーと喚く声が聞こえてくることだし――。


 まったく、いまいるアスモダイの森の中にある開けた場所――グラウンドの中央にある地下に埋もれた遺跡の外に迂闊にも出るべきじゃないな、まったく!


『テメェ! その獲物(うさぎ)は俺のモノだぜ!』


『はぁ、何を言っているんだ、ボケ! 最初に目をつけたのは、この俺だぜ!』


『ふざけんな、テメェら! そのウサ公は俺の獲物にするって最初から決まっているんだ!』


『おいおい、さっきから勝手なことを散々言いやがって、ゴルァァァ! つーか、俺は腹ペコなんだ! さっさとソイツを食いてぇんだァァァ~~~!』


 ん、アルゲンタビスかもしれない複数の声が聞こえてくる。


 さて、絶滅動物とはいえ、この世界じゃ当然、人間のように喋ることができるワケだが――と、それはともかく、内輪モメの最中って感じの会話だな。


 だが、今ならルリを救うことができるチャンスかもしれない!


「ルリって兎の救出なら、この私に任せて! 囮にするにゃもってこいの奴らがいるしね……ほらほら、行けぇ、使い魔達!」


「「「えええ、俺達ですか、おやび~ん!」」」


 地下の埋もれた遺跡の中に通じる通路――安全圏へルリを連れ戻す役をフィンネアが買って出る。


 むう、丁度イイ囮って使い魔である動き回る骸骨達のことかぁ……あ、確かに丁度イイ存在かも!


「むう、せっかく、あの蜘蛛の巣から脱出できたのに……。」


「今度は巨大な鳥を相手にしなくちゃいけないのかぁ……。」


「つーか、食べられちまうぜ!」


「安心なさい。アンタ達は動く白骨死体だし、食べられる部分――つまり肉はないから大丈夫よ。」


 確かに食べられる部分……肉が一切なかったな。


 まあ、意思があり動くことができるとはいえ、コイツらは白骨死体だし、その辺は仕方のないことである。


「ふええ、おやび~ん、そりゃないっすわぁ!」


「何、文句ある?」


「あ、ありましぇーん! では、ルリって兎ちゃんを助けの行ってくる……うりゃあああっ!」


 動き回る骸骨達はブツブツと文句を言いながら、地下に埋もれた遺跡の内部へと通じる通路の外へと飛び出していく。


「テメェら! リーダーである俺様を差し置いてウサ公が誰の獲物かってことを勝手に決めるんじゃねぇ!」


「はぁ、誰がリーダーだよ! いい加減なことを言うなや、ボケェェェ~~ー!」


「そうだそうだ、ふざけんなや、オラァ!」


 内輪モメ……いや、仲間割れと言った方が正しいな。


 とにかく、翼を広げると七、八メートルは確実にありそうな巨大な猛禽類に属す複数の猛鳥ことアルゲンタビス共が、獲物の兎……ルリが誰のモノかということで仲間同士で衝突している姿が見受けられる。


「コイツらがモメている間に、その隙を突きこの場を離れなくちゃ……ん、アレは!?」


「おーい、今のうちにこっちへ来るんだ!」


「が、骸骨!? 動く骸骨が手招きしている……キ、キモッ! だけど、この場を離れるチャンスは今しかない!」


 うーむ、動く骸骨が手招きをする姿は気持ち悪いし、オマケに禍々しい。


 が、今にも仲間割れを始めそうなアルゲンタビス共の隙を突き逃走する絶好の機会かもしれない。


 そんなこんなで意を決したルリは、奴らの鋭い鉤爪の生えた巨大な足の下を猛ダッシュで潜り抜ける!


「は、甘ぇよ! 俺達から逃れられると思ったら大間違いだぜ!」


「隙を突いたつもりだろうが、テメェが逃げ出すことは予測済みなんだよ!」


「チィッ! 逃げ出そうと思った矢先なのに……捕まってたまるかぁ!」


 むう、アルゲンタビス共は抜け目がないな。


 今にも仲間割れを始めそうな状態であるにも関わらず獲物であるルリを逃がすかとばかりに巨大な嘴による攻撃を仕掛けてくる。


「逃げろ! 直撃したら元も子もないぞ!」


「奴らの嘴は岩をも砕く削岩機のようなモノだ!」


「う、うん、どうなるかくらいわかるわ、骸骨さん! 下手をしたら私の身体は真っ二つになってしまいそうだ!」


 た、確かに、そんなアルゲンタビス共の削岩機のような巨大な嘴による攻撃が直撃した場合、小動物である兎のルリの身体は間違いなく真っ二つになってしまいそうだ!


 更に言うと、巨大な嘴がかすっただけでも肉が抉れることだろう。


「く、サワメに人格交代を……わああ、こんな時に限って目を覚まさないってどういうことぉ!」


「何をゴチャゴチャと……オラアアアアッ!」


「し、死ぬ死ぬゥゥゥ~~~!」


 ルリは精神に潜む〝もうひとつ〟の人格であるサワメに呼びかける。


 仮にサワメが目覚めれば、アルゲンタビス共を退くことができる起死回生の一撃を加えることができるかもしれないな。


 だが、無反応ってヤツだ。


 こりゃ完全に眠りについている状態だろうなぁ……。


 うーん、ちょっとやそっとじゃ人格交代ができないかもしれないな。


「ええい、足許をちょこまかと鬱陶しい! だが、これで終わりだぜ、ウサ公!」


 アルゲンタビス共の一羽がキレる――それと同時にソイツの削岩機のような嘴がルリの身体を穿つ……あああ、遂に直撃してしまったか⁉


 グシャアアアッ――と、その刹那、真っ白な何が砕け散る!


「な、なんだ、この手応えは⁉」


「おい、人間の骸骨を打ち砕いたようだぜ。」


「ちょ、ウサ公はどこに⁉」


「私なら、ここよ……サワメは目覚めなくてもやれる! コ、コイツを飲み込めぇ!」


「ガ、ガアアアッ!」


 お、おお、上手い具合に飛び出してきたルリを救出にやって来たフィンネアの使い魔こと動き回る骸骨の一体が盾となったようだ。


 そうか、砕け散った真っ白な何かっていうのは、そんな動き回る骸骨の――と、今が反撃のチャンスとばかりにルリはアルゲンタビス共の一羽の口の中に赤い小さなボールのようなモノを投げ込むのだった。


 その刹那、轟ッ――と、ルリが小さな赤いボールを投げ入れたアルゲンタビスの一羽の口内から真っ白な光の奔流が吹き出すのだった。

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