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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP07 兎転生その8

 蜘蛛は益虫である。


 鬱陶しい害虫のハエやゴキブリを食べてくれるワケだしね。


 しかし、そのグロテスクな姿が忌み嫌われてしまいガチだ。


 俺も益虫とはいえ、蜘蛛を好きにはなれないなぁ……。


 オマケにその身体が巨大なら余計に忌み嫌われることだろうし、複数体、出現したら……。


 うう、とにかく、厄介な化け物が何匹も現れたぞ、どうするだァァァ~~~!


「むう、ソイツはアトラクナクアという蜘蛛の幼体だ!」


「アトラクナクア?」


「幼体は大型犬ほどだが成長すると何倍もでかくなる蜘蛛だ。個体によっては全長十メートルを超える怪獣と言っても間違いない姿に成長するんだ!」


「そういえば、アトラクナクアを蜘蛛の神と呼ぶモノもいたりするのう。」


「ふ、ふええ、マジかよ!」


「ついでにだけど、私が聞いた話じゃアイツらは生き物の体液……要するに血液が大好きみたいね。」


「ちょ、アフロディーテ……ア、アレは吸血生物じゃん!」


 むう、アトラクナクアという蜘蛛は、目の前にいる幼体でも大型犬サイズである。


 それが個体によって十メートルを超える……だと⁉


 ちょ、アトラクナクア、パネェ……某往年の怪獣映画に出てきた怪獣じゃないか!


「も、もしかすると……。」


「こ、今度はなんだよ、キョウ姐さん!」


「アトラクナクアの幼体がいるなら、近くに親もいるかもしれないわね。」


「くそ、ウェスタに先に言われちまったぜ!」


「な、なんだってー!」


 おいおい、幼体――子供がいるなら、当然、親も近くにいる……だと⁉


 ちょ、ある意味で絶体絶命の状況下に陥っちゃいないか、俺達は――ッ!


「ギギギギ……オ前ラハあれヲ奪イニ来タもの達ダナ?」


「く、蜘蛛が……アトラクナクアの幼体が喋ったぞ!」


「お、おい、その前にコイツらは俺達が何か奪いにやって来た泥棒のような存在だと思い込んでいるっぽい!」


 流石は蜘蛛の神と呼ばれる場合もある大蜘蛛だ。


 そんなこんなで喋ることはできて当然だろうなぁ……って、俺達は泥棒だと思われているようだ。


 むう、アスモダイの森の中に一体、何が……アトラクナクアの幼体共にとって大事な何があるって言うんだ⁉


「キキキキィィッ!」


「うお、蜘蛛野郎の一匹が飛びかかってきた!」


「フン、何を驚いている。うりゃあっ!」


「ル、ルリ、助かったぜ……って、それは光の輪!?」


「私はルリじゃない、サワメだ!」


「うは、人格が入れ替わったのかよ!」


 むう、ルリの中に潜む〝もうひとつの人格〟ことサワメが目覚め主人格であるルリを押し退けるカタチで表に出てきたおかげで助かったかも……。


 とにかく、サワメが放った光の輪と言ってもいいモノが、俺を標的にするカタチで飛びかかってきたアトラクナクアの幼体の一匹の黒々とした巨体を縦一線に引き裂くのだった。


「う、うおお、某巨大ヒーローの必殺技みたいだ――ッ!」


「あ、ああ、確かに!」


「兎カッターだ! ハハハ、こうやって……ズバッと!」


「う、うおー! アトラクナクアの幼体をもう一匹ィィ!」


 ルリ――いや、今はサワメだったな。


 そんなサワメがスッと獣人形態とばかりに立ちあがり、右の前足を円を描くように回すと、シャリリンッ――と、光輪が生まれる。


 で、その刹那、再び生み出された光輪をアトラクナクアの幼体の一体に対し、投げつけるのだった。


「よしよし、二匹目撃破だ! 三匹もやっちゃう?」


「おお、やっちまえ!」


「ま、待て! 幼体を殺しまくるとヤバいんじゃないか? ほら、親が近くにいた場合を考えると――。」


「いわれてみればそうだな。」


「う、うわああっ! 俺達の周りにいる幼体よりも遥かに禍々しい気配を感じるのじゃ!」


「ウ、ウミコ、それって、まさか……。」


 むう、ウミコの真っ黒で長い耳が激しく動いている……ちょ、まるで防犯センサーみたいだな。


 う、そういう前に、まさか……アトラクナクアの幼体共の親が間近に⁉


『オ、オオオ、我ガ子ガ……我ガ子ガァァァ~~~!』


 ぶ、不気味な声が真っ暗闇のアスモダイの森の中にこだまする……ア、アトラクナクアの親キターってヤツか⁉


「キキキッ……痛イ……痛イィィ!」


「痛イ……痛イィィ……俺ノ身体ヲ元ニ戻セェェェ~~~!」


「ヒエーッ……い、生きてないか、コイツ!」


 サワメが投擲した光輪によって真っ二つになって死んだと思っていたアトラクナクアの幼体二匹が、痛い痛いと呻き声をあげている……ちょ、なんという生命力!


「ギギギギッ……コノ状態デモ十分ダナ。」


「アア、流石ダナ、俺達!」


 お、お前ら、身体が真っ二つな状態であるのも関わらず襲いかかれる余裕があるのかよ!


 むう、流石は蜘蛛の神と呼ばれるだけのことはあるな。


「オ、オオオ、母上!」


「母上ガヤッテ来タゾ!」


「な、なんだってー!」


 ズズンーンッ――と、巨大な生き物が移動する時に生じ大地の震動が容赦なく俺の足許を揺らす!


 き、来たな、奴らの親……アトラクナクア完全体が!

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