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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP07 兎転生その7

 ニャーン、ウニャー、ニャーオ……と、姿は見えないけど、たくさんの猫の鳴き声が、真っ暗闇のアスモダイの森の中にこだまする。


 場所が場所なだけに可愛い猫の鳴き声とはいえ、はっきり言って不気味である。


 俺はなんともないが、精神的に弱いモノにはキツいシチュエーションだな、こりゃ……。


 つーか、タマゴローの同胞の鳴き声だろう。


 そんなタマゴロー曰く、アスモダイの森の中には同胞である猫型魔獣も生息しているようだしね。


 う、それよりもヴァンキーとかいう魔獣を筆頭とした吸血鬼に分類されるモノも生息しているんだったな。


 で、アスモダイの森の中を進む以上、ソイツらがいつ襲いかかってくるかわからない状況下に俺達は置かれているワケだ。


 やれやれ、さっさとルリが落としたというペンダントと妹の愛梨を探したいもんだぜ。

 

「ん、どうしたモノか……。」


「キョウ姐さん、どうしたんだ?」


「ああ、なんとなくだけど、同じ場所をグルグルと往復している気がしてねぇ……。」


「う、まさか迷子になってしまったのでは!?」


「断定はできんないけど、あり得る展開だ。」


 ちょ、アスモダイの森の中に足を踏み入れてから間もないというのに、俺達は迷子になってしまったのかも!?


 まあ、キョウ姐さんは断定はできないって言っているけど、さっきから俺も妙な違和感を感じていたんだよなぁ……。


「間違いなく迷子になってしまったわね。この私が言うんだから間違いない。」


「お、おい、勝手に断定するな!」


 むう、アヒルのアフロディーテは空を飛べない鳥のくせに、真っ白な翼を広げてながら、間違いなく迷子になってしまった――と、断定する。


 おいおい、どっちが正しいんだよ、まったく!


「しかし、真っ暗闇だな。ここだけまるで夜のようだ。」


「あ、懐中電灯があるぞ。」


「な、なんだってー! と、とりあえず、スイッチONだ、キョウ姐さん!」


「お、おい、この木の幹に熊が爪で引っ掻いたような痕跡があるぞ、ユウジ。」


「あ、それ……さっきも見かけたぜ。暗くて薄っすらとだけど、何度も見かけたぜ。」


「むう、俺もだ。やっぱり、俺達は迷子に……。」


 懐中電灯を持ってきて良かったぜ。


 なんだかんだと、文明の利器があるのって本当にいいなぁ~☆


 さて、そんな懐中電灯を灯りを目の前にある巨木の幹に当てると、そこには熊が爪で引っ掻いたような痕跡が見受けられる。


 キョウ姐さんが懐中電灯のスイッチをONにしたことではっきり見えるようになったけど、俺はさっきから何度も暗くて薄っすらとしか見えなかったけど、目の前にある巨木の幹に見受けられる熊が爪で引っ掻いたような傷跡を見かけているんだよなぁ……。


 こりゃ間違いなく迷子になった――と、断定していたアフロディーテの言い分の方が正しいのかもって思えてきたぜ。


「う、今度は嫌な気配が……。」


「ま、まさか吸血鬼の類が⁉」


「んっ……気配の正体はアレだ!」


「ア、アレって……食虫植物では⁉」


「ハハ、大きさ的にウミコくらいなら飲み込んでしまいそうな緑色の壺って感じだな……わああ、動いた! オマケにツタもウネウネと!」


「ああ、言い忘れていたけど、アスモダイの森の中には吸血植物も生息している筈だ。」


「うむ、確かにのう。んで、その触手のようにツタをうねらせる動く緑色の壺という感じの食虫植物っぽいモノの正式名称は兎食い草……わらわのような兎を好物にしている吸血植物じゃ!」


 なぬぅ、吸血植物まで生息しているのか⁉


 アスモダイの森は吸血生物のオンパレードだな。


 こりゃバーゲンセールじゃ済まないぞ……多分。


「むうう、この吸血植物を見ると燃やしたくなる! でやーっ!」


「ば、馬鹿、兎食い草を燃やしたら〝呼び寄せてしまう〟かもしれないだろう!」


「えええ、何か来るのかよ……わ、ウミコが兎食い草を燃やしがった!」


「ヒッ……私の背後の茂みの中から、今、ガサガサって音が聞こえたわ!」


 触手のようにツタをうねらせる緑色の壺のような巨大食虫植物――いや、兎食い草をウミコが火炎の魔術を放って燃やしてしまう。


 うは、キキキキーッ――と、兎食う草は植物とは思えない不気味な唸り声を張りあげながら、轟々と燃え盛る!


 さて、そんな轟々と燃え盛る兎食い草が、禍々しいモノ共を呼び寄せる狼煙になってしまったんだろうか?


 周囲でカサカサと何かが蠢く音が聞こえてくる。


「何か現れそうな予感が……。」


「兎食い草が破裂した……わあ、破片が飛び散ってきた、アチチチッ!」


 兎食い草は油分を多く含む吸血植物なのようだ。


 で、その証拠とばかりに燃え方が激しく……う、パーンと破裂して中身が飛び散ったぜ。


「わああ、溶けかかった骨が……。」


「う、うおー! そんなことより何かが俺の背後に落下してきた!」


「く、蜘蛛、でっかい蜘蛛だァァァ~~~!」


 ちょ、大型犬サイズの巨大蜘蛛が何匹も巨木からシャッ――と、飛び降りてくる!


 うう、兎食い草を燃やしたことで、それが狼煙となってコイツらを呼び寄せてしまったようだ。

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