外伝EP07 兎転生その5
エフェポスの村の外に出ると、そこは辺り一面、草木が茫々と生い茂る草原や背の高い巨木が生い茂る森林であったりするが、そんな草木の生い茂る草原や森林の中に埋もれる頭や腕のない石像や壊れた柱などなどが見受けられる。
要するに、エフェポスの村の外は古代遺跡だらけってことだ。
で、某考古学者曰く、その存在が伝説として語り継がれているウサルカ文明の遺跡かもしれないんだとか――。
ああ、それと同時に危険もツキモノである。
古代遺跡は、何も草原の草木の中のみに埋もれているワケではなくとタマゴローと同種のモノ――魔獣が住まい危険な場所にも数多く見受けられるそうだ。
そうそう、迷宮と言っても間違いない複雑な構造をしている地下古代遺跡もあるようだ。
ヒュー……探求心が湧いてくるぜ!
ちなみに、エフェポスの村は冒険者と呼ばれる連中の中継点になっているらしい。
と、それはさておき。
「ふえー、背の高い気がわんさか生えているぞ!」
「流石は密林って感じだニャ……お、おお、匂うぞ! 俺と同種の魔獣が住んでいるぞ!」
「そ、それって猫型の魔獣のこと⁉」
「ビンゴだニャ! しかし、安心するニャ。同胞は平和主義者ばかりだニャ。」
「むう、猫をかぶるって言葉があるし、信用できねぇ……。」
ちょ、アスモダイの森という密林には、吸血鬼のようなお猿――いや、お猿に似て非なる魔獣ヴァンキー意外にもタマゴローの同胞である猫型の魔獣も生息しているようだ。
ううむ、危険度が殊の外、高い場所かもしれないなぁ……。
「さてと、なんだかんだと、アスモダイの森へやって来たぞ。んで、この森のどこらへんに大事なペンダントを落としたんだ?」
「あ、ああ……。」
さて、元人間と自称する兎ことルリが大事なペンダントを落としたというアスモダイの森は、エフェポスの村のルサオー地区の管理者サルタヒコの住まいである巨木を上回るような巨木が密生する樹海だ。
で、今はまだ太陽が空の真ん中で燦々と輝く昼間だが、密生する巨木の鬱蒼とした葉のおかげで、ここだけが夜と言ってもいいくらい真っ暗である。
「さ、中に入ってみよう。」
「ええと、こっちです!」
「そこで何をしているの!」
「アスモダイの森の中に入るみたいだ。」
「つーか、この立ち入り制限区を書いてある立て札を見てからにしたまえ。」
「う、うお、黒豹の獣人っぽいモノを引き連れたアヒル……ん、お前、確か愛梨と一緒にいたアフロディーテ⁉」
う、確かに『立ち入り制限区』と書いてある立て札があるな。
と、それはともかく、軽装鎧と兜を身に着け、オマケに銃剣についた火縄銃を携帯した二足歩行の黒豹――黒豹獣人を引き連れた喋るアヒルが現れる。
コイツは愛梨と一緒にいたアフロディーテじゃないのか……む、近くに愛梨もいるのかも⁉
「なあ、アヒルちゃん、愛梨は一緒じゃないのか?」
「アヒルちゃんじゃないわ、アフロディーテよ! つーか、私はアヒルじゃなくて白鳥よ!」
「え、白鳥……嘘だぁ! どうからどう見てもアヒルじゃん!」
「ううう、それ以上、言ってら許さないわよ! ガアガアガアッ!」
「う、うおー、痛い痛いッ! わかったら、その平べったい嘴で何度も突くなぁ! それより愛梨はどこにいるんだぁ!」
アフロディーテってアヒルは、自分のことを白鳥だと思い込んでいるようだ。
むう、プライドも高そうだし、これ以上、言わないでおくか――何気に好戦的だし、平べったい嘴による連続突きは、何気に強烈だぜ!
「う、うわー! そうだ、思い出したわ! 私を愛梨やヘラさんを助けるために黒豹獣人のキマリスを連れてきたんだった!」
「お、おい、どういうことだよ!」
アヒルのアフロディーテは愛梨、それにヘラさんとやらを助けるためにアスモダイの森にやって来た……だと⁉
おいおい、何が遭ったんだ……き、訊いてみなくちゃな!




