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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
451/836

外伝EP06 お猿魔術師と貧乳死霊使い その36

「な、なあ、特に変化はないんだが、本当に身体強化されたのかよ……。」


「ああ、間違いないニャ!」


「よぉ、本体(おれ)! さっさとアイツらをフルボッコにしちまおうぜ!」


「う、うわああっ! ししし、尻尾が話しかけてきた!」


 な、なんという奇妙な現象!


 お、俺の……ワオキツネザルの縞模様の長い尻尾が意思を持ち話しかけてきた!


 オマケに、そんな俺の尻尾の先端が人間の右手のような形状に変化している!


「ユウジ、俺の尻尾も……話しかけてきた!」


「ごきげんよう、本体(ボク)。アイツをやっつけよう!」


「な、話しかけてきただろう?」


「き、奇妙な光景だな。一方で、わらわは……み、両耳が話しかけてきた!」


「ヤッホー! 俺が右耳ウッサでございます。」


「ヘイ、あっしは左耳ウッサでございます。」


「む、むう、奇妙すぎる!」


「おい、そんなことより、ルニウス達が一斉に襲いかかってきたぞ!」


 アハハハ、トモヒロも俺と同じみたいね……。


 一方でウミコは左右の耳が石を持ってしまったみたいだ。


 むう、その前に、これが身体強化なのか⁉


「よっしゃ、任せろ、本体! でやァァァ~~~!」


「う、うおおお、俺の尻尾が勝手に……ド、ドリル!? 尻尾の先端がドリルに変化した!」


 うお、意思を持った俺の尻尾が勝手に動く!


 人間の右手のような形状と化した先端が、ギュルンと螺旋を描くドリルのような形状に変化し、四つん這いの状態で飛びかかってきたルニウスに対し、攻撃を仕掛ける。


「おおお、おい、俺の尻尾! そんなモノ……ド、ドリルなんかで攻撃したらヤバいだろう! 下手をしたら身体に穴を開けてしまうんじゃないのか?」


「ああ、細かいことは気にすんなって奴だぜ、本体! まあ、仮に身体のどこかに穴が開いても治せばいいじゃないか? それに、あそこにいる女は死霊使いだぞ。ゾンビとして蘇らせるって手もあるぜ!」


「ううう、禍々しいことを言うなぁ……って、おわああ! 早速、ルニウスって男の腹をドリル尻尾が貫いたぞ!」


 う、うわー、なんてこれじゃ殺害してしまったかもしれないじゃないか!


 俺の石を持った尻尾の先端――ドリルがルニウスのドテ腹を貫いたっぽいし……。


「お、俺は殺人を犯してしまったのか……。」


「おいおい、落ち込むなよ、本体。アレをよーく、見やがれ!」


「えっ……う、うお、ルニウスのドテ腹は無事……だと⁉」


「おい、ユウジ、どうやら先端がドリルに変化したお前の尻尾は、あの男の身体の中から〝動物霊〟を引きずり出したようだぞ!」


「むう、どうでもいいが、あのルニウスって男に憑依していたのは、どうやら豚の亡霊のようじゃのう。」


「あ、ああ、ドリル尻尾が突き刺さっているモノは、半透明の血まみれの豚だしな……し、しかし、どんな原理で!?」


 意思を持った俺の尻尾――名付けてドリル尻尾は、確かにルニウスのドテ腹をぶち貫いた筈なのに、それなのにルニウスは無傷だ。


 だが、アイツに憑依した血まみれの豚の姿をした亡霊をドリル尻尾は引きずり出す……お、おいおい、どんな原理が働いたんだぁ!?


「何が起きたのか知りたい?」


「も、勿論だとも!」


「じゃあ、イチイチ説明するのも面倒だし、簡単に言うぞ。ドリル……つまり尻尾(おれ)は、あの男のドテ腹に直撃した際、数秒間だけアストラル体に変化したんだ。」


「ア、アストラル体!? 幽霊みたいに実体を持たないモノに一瞬だかど変化させたとか?」


「ま、そんなところだな。あ、ちなみに、この力を使ってしまうと、俺は再びタダの尻尾に戻っちまうんだ、本体……。」


「あ、ホントだ……つうか、突然、しなしなと萎えるように動かなくなっちまった!」


 へ、へえ、俺には難しくて理解できないけど、そういう原理だったのか――と、尻尾の奴は突然、返事をしなくなる。


 むう、力を使い果たしタダの尻尾に戻ってしまったようだ。


「お、俺の尻尾もだよ、ユウジ……。」


「わらわの両耳もじゃ……。」


「トモヒロ、それにウミコ、お前達の意思を持った尻尾と耳もアストラル体となってルニウス達を……。」


 今はタダの尻尾に戻ってしまったが、身体の部位として、胴体より尻尾の方が優れているんじゃないのかって思ってしまった。


 アストラル体とかいうモノに一瞬とはいえ、変化させることができたワケだし……。


 さて、トモヒロの尻尾とウミコの両耳も、どうやら本体から独立したカタチで意思を持つ存在から、タダの尻尾と耳に戻ってしまったようだ。


 なんだかんだと、仮初めの命というか意思を持ったのは、ほんのわずかな時間だったっぽいな。


「おい、ルニウスから動物霊……豚の亡霊を引きずり出しただけだ。他はまだだぞ!」


「お、おいおい、キョウ姐さん! 隠れてないでフィンネアみたいに使い魔を呼べよ!」


 むう、キョウ姐さんは未だに木陰に身を潜めたままである。


 フィンネアの使い魔のように役に立つのかわからないけど、一応、何か召喚しろよ!


「ああ、こういうモノならあるが……。」


「ん、カードの束? 某カードゲームのカードデッキみたいだな。」


「まあ、そんな感じだけどな……っと、コイツを使うまでもないな。ウグドナインを見てみろよ。」


「う、まぶしいっ……浄化の光のチャージが終わったのか!?」


 某カードゲームのデッキみたいなモノをキョウ姐さんはチラつかせている。


 ひょっとして、それを使って魔物を召喚するとか!?


 と、そんなキョウ姐さんのことはともかく、ウグドナインの身体が神々しい真っ白な光を放っている。


 浄化の光のチャージが、やっと終わったようだ。

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