外伝EP06 お猿魔術師と貧乳死霊使い その27
ケモニア大陸のど真ん中にある区域あると同時に、他の区域よりも圧倒的に広大な陸地を誇っている兎天原の全土を支配下に治めているのが、王政国家のマーテル王国である。
が、実際のところ支配権が完全に行き届いているのは、現在の首都であるマーナタウンがある兎天原の北方くらいである。
で、そんなマーテル王国の文化水準――魔術、化学、医学などは、支配者であるにも関わらず支配下にある兎天原西方にある村や町に負けており、オマケに古代遺跡の宝庫だったり、手に負えない魔獣等の生物が何気に生息している東方と南方は、無法地帯と言っても間違っていないほど支配権がユルユルな状態なんだとか……。
さてと、そんなマーテル王国の新首都であるマーナタウンにいる間は、〝タダの獣〟のフリをしなくちゃいけないのが、何気に厳しいんですけど……。
「お猿だ! でも、狐みたいな顔をしているぞ!」
「うむ、この大獣図鑑に載っているぜ。東方の辺境地域に住むワオキツネザルってお猿のようだ。」
け、大獣図鑑⁉
ふええ、そんなモノが、この世界にもあるとは――ま、当然といえば、当然かな?
ここは兎天原の北方の文明社会の中心地みたいな場所だしね。
と、それはともかく、俺とトモヒロ、それにウミコはルニウスという背の高い優男を筆頭とした武装した兵士達に囲まれるのだった。
「ったく、ウーサー峠を越えてやって来た奴らがいるって聞いて来てみりゃお猿に二頭と兎一羽かよ!」
「ふう、女がいねぇ……。」
「おいおい、また女の話かよ、ダミウス。」
「だってよぉ、この町は男女で住む場所が違うからさぁ~……。」
「ハハハ、確かにな! この町はラーティアナ教団の総本山があるせいか敬虔なラーティアナ教徒が多いからな。んで、男女が一緒にいると修行の妨げになるとか、カビの生えた古い戒律が根強く残っていて、それを頑なに信じ込んでいる連中も多いし、そこらへんは仕方がねぇさ!」
へえ、カビの生えたような古い戒律に従って生きている連中が多いのか……。
しかし、修行の妨げになるとはいえ、男女が別々に暮らしているなんてなぁ……ん、よく見りゃ俺達を囲んでいる連中の中には女がひとりもいないぞ。
ってことは、ここはマーナタウンの〝男〟しかいない区域なのかも――。
「あ、ここにいたのかよ。随分と探したんだぜ!」
「んん、ここは兵舎ですね。こんにちは、皆さん☆」
「「「お、女だァァァ~~~!」」」
さて、俺達はルニウスという優男に案内されるカタチで彼の同僚の兵士が集まっている兵舎の食堂へと移動する――と、そこへキョウ姐さんとレイラがやって来たワケだ。
うーむ、その前にここじゃ人間の女は物珍しい存在なんだぁ、なんだかんだと……。
そんなこんなでキョウ姐さんとレイラの姿を見た途端、ルニウス達が驚きの声を張りあげるのだった。
「お、おいおい、みんな! 久々に〝本物の女〟を見たからって大声を張りあげるなよ。僕達は戦士であると同時に紳士だ……紳士である僕達が、そんな冷静さを欠いてどうするんだよ!」
「お、おう、そうだ……俺達は戦士であると同時に紳士だ!」
「あ、ああ、ルニウスの言う通りだぜ! 貧乳とはいえ、本物の女を見て冷静さを書いちゃいけないよな……。」
「む、むう、今、貧乳って言った……。」
アハハ、一部、余計なことを言ったモノもいるが、ルニウスとその仲間の兵士達は、ペコリと謝罪の意味を込めてキョウ姐さんとレイラに対し、頭を下げる。
『そういや、フィンネアがいないぞ。』
『ああ、アイツなら……ほら来たぞ。』
『ちょ、キョウ姐さんも言葉を介さずに意思を伝えられるのかよ……ん、男装しているのか、アイツ⁉』
あれ、フィンネアは一緒じゃなのか⁉
そう思った矢先、紺色の軍服を着たフィンネアが食堂にやって来る。
あ、ちなみに、フィンネアが男装とばかりに着ている軍服と同じモノをルニウス達も身に着けている。
どうやら一般の兵士用に支給されたモノのようだ。
「あ、ところで皆さんは亡霊の討伐なんかも行います?」
「ああ、本職ではないが、この町にウーサー峠からやって来る邪霊が入らんように時々、討伐を行っているぜ。」
「古戦場なんだよなぁ。未だに戦争が終わってないと思い込んでいるせいか襲いかかってくる兵士の亡霊を見かけることがあるらしいぜ。」
「うん、あそこは古戦場だからね。そんなこんなで質の悪い悪霊が蠢いてて困っているよ。」
「まったくだ! それに東方からの旅人に憑依してマーナタウンへと入り込もうとするモノもいるしな!」
「そうですか……よし、アタナ達に頼むとしますか!」
う、もしかしてラルヴァって幽霊が言っていたギンヌンとガガプという幽霊のリーダー格の討伐をルニウス達に依頼する気なのか、レイラは⁉
だけど、彼らならできるかもしれないな。
悪霊等の邪霊を時々だけど、街中の入らないように討伐しているって言っているし――。




