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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP06 お猿魔術師と貧乳死霊使い その9

 エフェポスの村は兎天原と呼ばれる地域の東方にある田舎ではあるけど、その一方で数多くの古代遺跡が村の周辺に点在しているので、なんだかんだと、そういうモノを専門に調べれている考古学者の類や未発掘の古代遺跡を探して一儲けしようと目論んでいる連中なんかでにぎわっているらしい。


 と、そんなエフェポスの村は、十二支を構成する動物、或いは横道十二宮になぞらえているかように十二の区画の分かれており、各地区には十二支を構成する動物の姿をした古老がリーダー格として村人を束ねているようだ。


 あ、ああ、そうそう、現在の村長はフレイという名前の人間の少女らしい。


 そういえば、エフェポスの村は喋る獣とその上位種である獣人の村の筈だ。


 そんなワケで人間はほとんど住んでいない上、人間の男は村には住んでいないんだっけ?


 まあ、それはともかく、もっとも偉い存在が人間の少女というのは、なんだか皮肉な話だなぁ――と、俺は思うのだった。


「お、猿王の屋敷が見えてきたぞ。」


「え、家なんてどこに?」


「おいおい、お前の眼は節穴か? あの木を見ろよ。」


「あの木……うお、木の幹にドアが取りつけられている!」


 さて、俺――ワオキツネザルのユウジは、エフェポスの村を構成する十二の区域のひとつであるルサオー地区の北に位置する場所にある猿王と呼ばれる古老の屋敷の側までやって来るのだった。


「むう、大木の中身を()()いてつくった家だなんて何気に洒落ているじゃないか!」


「それはともかく、あの本はどこだろう? こっちへ向かった筈なんだが……。」


 なんだかんだと、俺達がルサオー地区の北へとやって来たのは、尻尾、そして四本の毛むくじゃらの足が生えた本――無名の魔導書を探すためである。


 だけど、いざ来てみたけど、尻尾と四本の足が生えた奇妙な様相をした〝本〟なんて、グルリと見渡してもどこにも――。


 まったく、どこへ行ったんだ、あの本は――。


「ちょ、ここはどこよ! それにしても大と中はどこへ行ったのかしら……。」


 ん、そわそわと忙しなく猿王の屋敷の前を行ったり来たりを繰り返している赤いブレザーとチャック柄のミニスカートという格好を金髪碧眼の十七、八歳くらいの女のコの姿が見受けられる。


「ん、フレイヤじゃん。」


「キョウ姐さん、知り合いなのか?」


「ああ、アイツもタマゴローを探している仲間のひとりだ。」


「へえ、そうなんだ。」


 ふーん、フレイヤっていうのか――で、タマゴローを探している別行動中のキョウ姐さんの仲間にようだ。


「つーか、大と中はどこ?」


「さあね。ひょっとして、お前、迷子になったのか?」


「ちちち、違うわ! 失礼なこと言わないでよね!」


「大と中?」


「アイツと同じフレイヤって名前を持つモノが、他にふたりいるんだよ。どうだ、ややこしいだろう?」


「むう、要するに大中小の三人のフレイヤがいるワケね。」


「ああ、そういうことだ。んで、目の前にいるアイツは小フレイヤだ。」


 大フレイヤ、中フレイヤ、小フレイヤの三人のフレイヤがいるワケね。


 まあ、容姿の違いはあるだろうけど、確かにややこしいな。


「さて、小フレイヤ。お前達はタマゴローを発見できたのか?」


「それがまったくなのよ。見かけるのは、アンタと一緒にいるお猿さんのお仲間ばっかり……。」


「そっかぁ……ったく、どこにいるんだ。この地区だと猫は絶対に目立つと思うんだけどなぁ。」


「う、なんだかんだと忘れていたかも、魔獣タマゴローのことを――。」


「うっせぇな! 誰だよ、俺様の家の前で騒いでいるのは――ッ!」


 無名の魔導書もそうだが、魔獣タマゴローも探す手伝いもしなくちゃいけないんだったな、俺は――。


 つーか、本当の今いるルサオー地区に潜んでいるのか、猫の姿をしているっていう件の魔獣タマゴローは――。


 さて、耳障りな怒鳴り声は聞こえてくる。


 それと同時に、ドガッ――と、まるで蹴破るかのように勢いよく猿王の屋敷だっていう大木の幹に取りつけられた扉が開くのだった。


「え、焼酎の瓶を持った目付きは悪いけど、巨乳美人な眼鏡の女が出てきたぞ!?」


「まさか、あの眼鏡女が猿王!?」


 焼酎の瓶を抱えた茹で蛸のような真っ赤な顔をした酔っ払いが、猿王の屋敷の中から飛び出てきたんだが、まさか猿王!?


 むう、仮にそうだったら意外である。


 何せ、眼鏡をかけた巨乳美人という感じの人間の女なワケだし……。


「おおう、猿王、丁度いいところに! よし、お主にも探すのを手伝ってもらうとしようかのう。」


「ん、今の俺様と同じく人間の姿をしているが、ひょっとして兎王か、お前?」


「うむ、その名で呼ばれるのは久しいのう。」


 うへぇ、やっぱり眼鏡美人は猿王とやらだったのか!


 んで、ウミコと同じく〝人間〟の姿に変身した状態のようだ。


「さて、手伝えとは言うが、何を探すのだ、兎王?」


「では、単刀直入に言おう。魔獣タマゴローを探すのを手伝ってくれ!」


「な、なんだってー! 魔獣タマゴローといえば、俺様達の先代の古老達が死に物狂いで捕獲しと大怪獣ではないか! まさか……や、奴が復活したのか!?」


「うむ、そういうことらしい。どこぞのアホがタマゴローが封印されていた魔道書を北東魔術師協会の本部から盗み出したせいだって話を聞いたぞ。」


 ムムムッ……迷惑なことをする輩がいたもんだ。

 

 まったく、どんな輩なのか、その顔を見てみたいもんだ。


「ん、タマゴローが封印されていた魔道書!? ま、まさかとは思うけど……。」


 う、もしかして、あの無名の魔道書は、猫の魂を宿すモノだった筈……まさかとは思うけど、あの無名の魔道書が件の魔獣タマゴローが封印されていたモノなのかも!?


 とまあ、そんなイヤ~や想像が、俺の脳内を走馬灯のように駆け巡る!

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