外伝EP06 お猿魔術師と貧乳死霊使い その6
「ここで人間の雄を見かけるなんて珍しいな。」
「ハハハ、エフェポスの村に住んでいる人間の中には〝男〟がいなしなぁ。」
「な、何ぃ、この村には男がいないだと! じゃあ、俺が人間のままだったら、ここはハーレムだな。」
「おい、何言ってんだよ、ユウジ……ま、まあ、確かにそうなりそうだな。」
「そんなこより、いいのか? あのゴロツキのような人間の雄共が、こっちへ来るぞ!」
むう、気楽にしていられないかも――。
如何にもゴロツキって感じの男達が迫って来ているワケだし――。
「おう、その本を寄越せや、ゴルァァァ~~~!」
「うわ、ありきたりな脅し文句を言ってきたぞ、コイツ!」
「そんなことはどうでもいいじゃないか、ユウジ! コイツらの狙いは、その本みたいだ!」
「う、うむ……。」
ゴロツキ共の狙いは、猫の魂を宿す魔導書なのか……い、一体、何が目的なんだ⁉
だけど、こんな奴らに素直に渡す気になれないんだよなぁ……。
「超お断りだ!」
「おお、きっぱり断ったその君の勇気の称賛する!」
「キョウ姐さん、そんなことより、相棒である魔導書のブックスの力で、アイツらを追い払ってくれよ!」
「ワハハハ、吾輩は非戦闘型の魔導書なのだ。」
「ま、そういうことだ。つーか、か弱い女のコに戦えって言うのか? そんなワケだ、戦え……戦うんだ、ユウジ、トモヒロ!」
「そうじゃ、頑張れ! 頑張るんじゃァァァ~~~!」
「「お、おいおい、俺達になんとかしろって言うのかよ!」」
表紙にヒゲのオッサンの顔がついている空飛ぶ本ことキョウ姐さんの相棒である魔導書のブックスは、非戦闘型だって言う。
オマケにキョウ姐さんは、か弱い女に戦わせるのかって言うし……。
お、俺とトモヒロでゴロツキをどうにかして対処しなくちゃいけないのかも……って、おい、ウミコも俺とトモヒロ任せで何もしないのかよ!
「お、やる気か、モンキー共!」
「いいぜ、かかって来いやァァァ~~~!」
「うおお、ナイフを上着の懐から取り出しやがった!」
む、ゴロツキのひとりが右手を上着の懐に突っ込むと、そこからナイフを取り出し、その刃をペロリとナメずり回す……お、脅しのつもりか!
「ユウジ、武器を持っていないよな?」
「持っているワケはないだろう。俺達はタダの高校生……いや、お猿だし……。」
本来いるべき世界では、タダの高校生だったワケだし、当然、ナイフ等の物騒なモノを持ち歩いているワケがない。
「ナイフには日本刀、日本刀には槍を……そんな感じの対処法がなけりゃ勝てないと思う。」
「体格の差もあるな。人間とお猿じゃ厳しい戦いになるぞ、おい……。」
ナイフを持っている奴には日本刀で対抗、日本刀を持っている奴には槍で対抗――と、そんな感じで得物のリーチが必要となり筈だ。
オマケに人間と猫くらいの大きさのお猿であるワオキツネザルの俺、それにクロキツネザルのトモヒロでは、不利すぎる戦闘となりそうだ。
「ああ、もし殺されてのゾンビとして蘇らせてやるから安心しろ! 俺は死霊使いだから可能だぜ!」
「「ゾンビとして蘇るなんて絶対に嫌だぁぁぁ~~~!」」
ちょ、仮に殺されてしまってもゾンビとして蘇らせてくれるって⁉
おいおい、そんな冗談やめてくれよ、キョウ姐さん!
「ウオラァ! ぶっ殺してやるぜ、エテ公ォォォ~~~!」
う、それはともかく、ナイフを上着の中から取り出したゴロツキが襲いかかってきたぞ……ど、どうする、俺!




