外伝EP06 お猿魔術師と貧乳死霊使い その5
「魔導書って何? 詳細をよろしく!」
「うーん、そうだなぁ。ありていに言うと〝生きてる本〟ってところか――。」
「生きている本……だと⁉」
「ついでに、読んだら発狂してしまう可能性がある禁断の書物でもある。」
「「なんだってー!」」
「ワハハハ、ちなみに吾輩も魔導書だぞ!」
魔導書は生きている本なのか――。
ついでに、読んだら発狂してしまうんだとか……ちょ、なんて危険な本なんだ!
あ、ちなみに、キョウ姐さんの相棒だっていうブックスも、そんな生きた本であり、読んだ場合、発狂してしまうかもしてない危険な本こと魔導書のようだ。
おいおい、そんなモノが身近にいて大丈夫なのかよ、キョウ姐さんは……。
「むう、タマゴローを発見する前に、これまた面倒くさいモノを見つけてしまったな。」
「う、うん、確かに……。」
『ニャーン、ゴロゴロ……。』
「わ、今、猫の鳴き声が……そ、空耳⁉」
魔導書か、面倒くさいモノを偶然とはいえ、拾っちまうとねぇ……。
さて、空耳だろうか?
今、猫の鳴き声が聞こえてきたんだけど――。
「空耳じゃないぞ! わらわの耳がギンギンと反応したからな!」
「ほ、本当かよ。じゃあ、やっぱり……。」
空耳じゃなかったか、やっぱり……。
喋る二足歩行で歩くことができる黒い兎ことウミコの長い耳が、衛星からの電波を受信し、クルクルと円を描くように動きながら反応しているワケだし――。
う、じゃあ、あの猫の泣き声は、一体、どこから……。
「気のせいかな? その本からニャ~って聞こえたぞ、ユウジ!」
「マ、マジ⁉ う、そういや、間近で聞こえた気がするぜ……。」
トモヒロの言う通りなら、無名の本は猫の魂を宿す生きた本――魔導書だったりして⁉
だから、ニャ~って鳴いたのかも……。
「なんだかんだと、猫繋がりってヤツだな、ユウジ。」
「ああ、言われてみればそうだな。」
魔獣タマゴローは猫の姿をしているって話だし、俺が拾った本には猫の魂が宿った生きた本っぽいし、トモヒロの言う通り猫繋がりがあるぞ、こりゃ!
「だが、猫の姿は、まったく……。」
「ま、仕方がないさ。ルサオー地区は、お猿の住宅街と言っても間違っちゃいない場所だしな。」
「うむ、それはわかるよ。」
「だから、それが災いして猫の姿をした魔獣タマゴローの姿が目立たないのかも……。」
「うーん、逆に目立つような気もするのじゃが……。」
魔獣タマゴローは猫である。
故に、お猿ばかり住んでいるルサオー地区に仮に来ているなら、それが災いして目立たないのかもって思ったけど、それは俺の勘違いだったのかなぁ?
ウミコは逆に目立つって言うし……あ、ああ、言われてみてば、そうかもしれないな。
「おい、あのお猿が持っている本のことじゃね?」
「ああ、ナイ様が言っていたのは、あの本だ……多分!」
「あ、人間だ……む、柄の悪い人間の雄共だ。」
所謂、ゴロツキと呼ばれる如何にも質の悪い連中だ。
そんな如何にも質の悪そうな数人の人間の男が、俺達を威嚇するように睨みながらやって来たぞ。




