外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その50
兎天原に伝わる最凶魔獣の一角である九尾の猫タマゴローは、とある賢者と闘い敗北した後、その魂を本の中に封印されたんだとか――。
とまあ、それが死猫秘法という魔導書である。
さて、そんな伝説の大魔獣――九尾の猫タマゴローが復活してしまったワケだけど、どうする、私――。
「愛梨、一応、合体しておく?」
「う、うん、その方がいいかもね!」
「じゃあ、私も……うりゃー!」
なんだかんだと、アイロディーテに変身した方が無難な状況かも――うお、アフロディーテさん、それに沙羅さんまで、私の口の中に……ぐ、ぐええ、苦しいィィィ~~~!
「変身完了!」
「うーむ、胸が重いなぁ……。」
「そ、そんなことより、何故、私の口の中に潜り込むんですか!」
うう、アイロディーテに合体するまでのプロセスは、はっきり言って超苦しいの一言である。
何せ、私の口の中に潜り込むワケだし――。
「ニャ……ニャオオオンッ‼」
うう、タマゴローが爆音のような鳴き声を張りあげたわ。
こ、これは行動を開始するって合図だったりして――。
「あのデカ猫が動き出したぞ。」
「ここまで跳躍してくるかも……。」
「猫の跳躍力は侮れんからな。」
う、タマゴローが九本の尻尾を激しく降り始める。
跳躍し、私がその背に乗っているカルラを叩き落そうとするかもしれないわね。
「ニャオオオオーッ!」
「く、来るっ……あ、あれぇ~!」
「小さくなっていく……ど、どういうこと⁉」
う、タマゴローの巨体が、シュルシュルと縮んでいく――。
奴の身に何が起きたのやら……。
「ニャオッ!」
「あ、消えた……タマゴローが消えた!」
え、今度は消えた……消えた、だって⁉
「ちょ、あの巨大猫ちゃんは、どこへ……。」
「と、とにかく、これだけはわかる……私達は助かったってことだけは――。」
タマゴローは兎天原に伝わる最凶魔獣三巨頭の一角である。
ソイツが何もせずにいなくなったってことは、私達が助かったことに他ならない筈だ。
「ったく、人騒がせなニャン公だな。」
「うんうん、まったくだねぇ……。」
「おいおい、気楽だなぁ。最凶の魔獣の一角が野に放たれたっていうのに……。」
気楽にしていられないのは、確かである。
タマゴローのような伝説級の魔獣が野に放たれたことになるんだし――。
「さて、タマゴローは後から探せばいいとして、まずはコイツをどうにかしなくちゃな。」
「え、コイツ……あ、ああ、ヤミコのことね。」
タマゴローの問題を放ってはおけないけど、まずはヤミコをどうにかしなくちゃいけないかもね。
さ、善は急げ……あのコが気絶しているうちに手足を拘束しておかなくちゃ!
「うう~ん……ひゃ、なんで縛られているワケェェェ~~~!」
む、手足を拘束すると同時に、ヤミコが目を覚まし、悲鳴をあげる。
「しかし、元気ねぇ……タマゴローに踏み潰されたのにさぁ。」
「ニャハハ、私はタフだけが取り柄だからね!」
「は、はあ、そうなんだ……。」
「それにしても、あの本の魔獣タマゴローが封印されていたなんて……ったく、アンタ達のせいで復活してしまったじゃないか!」
「い、いだひ……にゃめのぉ~!」
ん、ジルヴァの奴、いつの間に……。
それはともかく、ジルヴァは手足を拘束されて動けない状態のヤミコの頬を両手でぐりぐりと抓る。
「さて、私の使い魔から連絡が入った。どうやらタマゴローかもしれない黒猫が、ルサオー地区へ向かったっぽい。」
スカアハさんの使い魔がタマゴローを発見したようだ。
アンゲロイ遺跡の周囲に待機させていたのか――。
「な、なんだと! そのルサオー地区とはどこなんだ! で、どんな場所なんだ!」
「まあ、落ち着くんだ、おチビさん。ああ、そんなルサオー地区は、エフェポスの村の西南西だった筈だ。」
「よし、行ってみよう!」
「え、えええ、行くの⁉」
「当然でしょう? 放っておけないじゃん!」
む、むう、確かに放ってはおけないわね。
よ、よし、行くだけ行ってみよう!




