外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その42
「ウガアアアアッ!」
「ヒイイ、こっちに来るなァァァ~~~!」
「お、お前ら、どこへ行くんだよ!」
「あちゃー……お仲間が逃げちゃったね。」
ジルヴァと一緒にアンゲロイ遺跡へやって来た北東魔術協会の魔術師達は、悲鳴をあげて逃走する。
むう、自分は男だって言っているけど、なんだかんだと、アンゲロイ遺跡にやって来た北東魔術協会の連中の中じゃ紅一点であるジルヴァを置き去りにするとか、酷い奴らだ。
「と、とりあえず、戦わなくちゃ!」
「愛梨、足許に鉄パイプがあるわよ!」
「わお、しかし、何故、こんな場所に――。」
ん、足許にいるアフロディーテさんが、そんな足許に鉄パイプがあるって言う……あ、確かにある!
よし、コイツを拾って襲いかかってきた影魔獣をぶん殴ってやる!
「お、やる気ね、愛梨。頑張れ、フレーフレーゴーゴー!」
「ううう、アフロディーテさんも戦ってください……いや、合体しましょう!」
「嫌よ! 今は自分の力だけで戦ってよね、愛梨。」
「し、仕方がないなぁ……ええいっ!」
アイロディーテに合体した方が有効的に戦えると思うんだけど、その気がなさそうだわ、アフロディーテさんは――。
と、とにかく、私は足許に何故か落ちていた鉄パイプを拾うと同時に、襲いかかってきた人型に影魔獣の顔面目がけて突きあげるのだった。
「よよよ、よし! 頭を砕いたわ……って、こんな攻撃じゃ再起不能にはできないわ!」
バキィ――と、私が突きあげた鉄パイプが当たった部分が砕けるのだが、当然、この程度じゃ闇魔獣を再起不能に追い込むなんて無理である。
闇魔獣は不死者の一種だ。
上半身を吹っ飛ばすとか、それくらいの大ダメージを与えない限り半永久的に動くことができるのが厳しいわね……。
「うおー!」
「ひゃわー!」
「あ、兄貴とメリッサさんが捕まった! うわー!」
「チッ……考古学者達が捕まっちまったぞ、おい!」
そ、そういえば、メリッサさんやヤスを筆頭とした考古学者達も一緒だったわね。
あ、忘れてた、兄貴さんもだ……って、そんな彼らが闇魔獣共に捕まってしまうのだった。
「あうあう、ごすずん、私も捕まってしまった……。」
「わあ、アシュペリウス達も……あうっ!」
アシュペリウスを筆頭とした犬達も闇魔獣に捕まってしまう……う、その刹那、何かが背後から圧しかかってくる。
「わああ、闇魔獣! どこから湧いて出たワケェ⁉」
「愛梨、私も捕まってしまったわ!」
「アフロディーテさんもぉ⁉」
うく、背後から圧しかかってきたのは、やっぱり闇魔獣だ……く、背後から突然、現れるなんて卑怯だわ!
『ハハハ、ソイツらのストックは百体以上だ! どんなに雑魚でも数に勝るモノはない……抵抗しない方が身のためだぜ!』
私の足許にいたアフロディーテさんも捕まってしまったようだ――と、若い男の笑い声が聞こえてくるのだった。
『捕まえた連中を連行しろ。亡者共――。』
「御意に――。」
「う、闇魔獣の一体が喋ったぞ! ぐあー!」
私達を連行しろって⁉
と、再び若い男の声が聞こえてくる。
さて、ウェスタさんとヘラさん、それにスカアハさん、サカラとカルラ以外は、どうやら捕まってしまったようだ。
ああ、唯一、残った北東魔術協会の魔術師――ジルヴァも闇魔獣は、地面に座るゴリラのような大型類人猿の姿をした闇魔獣に捕まったようだ。
「その声はナイか! 俺だ、クロだ、わかるだろう?」
『……悪いな、オッサン。』
「へっ……。」
『オッサンも〝ソイツら〟諸共、生贄になってもらうぜ!』
「な、なんやてェェェ~~~!」
おっと、クロも一緒であることを忘れていた。
理由はタダひとつ――アンゲロイ遺跡のどこかにあるヨルコやヤミコが潜む秘密の地下室に案内させるためである。
と、そんなクロのオッサンも闇魔獣に捕まってしまっている。
おいおい、仲間じゃないワケェ……え、私達諸共、生贄にするだって⁉
ちょ、なんの生贄なのさ……絶対に嫌よ!
「コイツらはともかく、何故、俺までッ!」
『ハハハ、決まっているだろう? 後始末だよ。」
「あ、後始末だと⁉」
『オッサンにゃ、北東魔術協会の本部から〝アレ〟を盗んできてもらった……とまあ、そんなワケで役目が終わったからな! だから、〝アレ〟を目覚めさせる生贄になってもらうってワケよ!』
「お、おい、だからって、俺まで……。」
連中は北東魔術協会の本部から、一体、何を盗んだのかしら……って、クロは役目を終えたから、その後始末というかたちで生贄に⁉
ちょ、その前に〝アレ〟ってなによ、〝アレ〟って!
「おおお、おわー!」
「ちょ、クロが消えたわ! キャー!」
突然、クロの姿が目の前から消失する……う、その刹那、私の周囲が真っ暗闇に⁉
ちょ、まさかとは思うけど、どこかへ転移させられたのかも――。




