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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
404/836

外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その39

「ヨルコ、ヤミコ! 北東魔術協会の奴らが、ここへ向かって来ているぞ!」


「ダモスめ、北東魔術協会からアレを盗むから――。」


「だけど、彼を責めることはできない。アレを盗み出すように仕向けたのは、私達だし――。」

                           

 と、そんな会話をする三人組の姿が、公には調べ尽されて何もないことになっているアンゲロイ遺跡の秘密の地下室に見受けられる。


 ひとりは何も描かれていない真っ黒な仮面で素顔を隠す長身痩躯の美丈夫。


 他のふたりは、眼鏡をかけた同じ顔の少女――ヨルコとヤミコだ。


 ん、他にもダモスという仲間がいるようだ。


「あ、そうそう、北東魔術協会の連中じゃない別の連中もここへ向かって来ているようだぞ。」


「な、なんだと⁉」


「ニャハハ、きっと〝あの眼鏡ちゃん〟やアヒルよ、ヨルちゃん~♪」


「うんうん、多分ね。」


「お前ら、また面倒くさい輩と……で、どうする?」


「フフフ、どうもしないわ。どうせ、ここに来れるワケがないし――。」


(ニャハハ、ヨルちゃんったら忘れてるぅ~。クロのおぢさんを孤児院に置き去りにしたことを――。)


 北東魔術師協会の連中、それに私達もアジトであるアンゲロイ遺跡へ向かって来ていることに気づいているっぽいわね。


 気づいているのなら、何かしらの罠を仕掛けている可能性も……。


 だけど、もう引き返せないところまで来ちゃったわ。


 何せ、私に眼前には、件のアンゲロイ遺跡があるのだから――。


「倒れた円柱がたくさんありますね。昔、ここには荘厳な社殿が建っていたんですかね?」


「ですね。何千年も前の話ですが……あ、とはいえ、建造したのは、そこにいるハニエルさんやヤスさんのような兎獣人だったみたいですよ。」


「な、なんだって! なるほど、道理で倒れている円柱が、俺達サイズなワケだ。」


「つーか、その前に、いつからいたんすか? 気づかなかったっすよ、兄貴!」


 倒れた円柱があっちこっちに見受けられるアンゲロイ遺跡の元の姿を想像するだけで古代のロマンを感じるわね。


 と、それはどうでもいいけど、私の足許には兄貴さんの姿が……ちょ、いるのに気づかなかったわ!


「さて、妙な連中がやって来たわよ、みんな!」


「う、うん、北東魔術師協会の連中かしら?」


 むう、アンゲロイ遺跡の秘密の地下室に潜んでいるヨルコとヤミコ、それにナイって男に用事があるのは、何も私達だけってワケじゃないようだ。


 なんだかんだと、北東魔術師協会とかいう面倒くさそうな連中がやって来たワケだしねぇ……。


「なぁんだ、お前らは? つーか、ここには危険な輩が潜んでいるんだ。さっさと消えな、チビ!」


 むう、自分もチビの部類に入ると思うのに……。


 それに初対面なのに、いきなりチビとか言うな、失礼な!


 と、私達の背後に現れた集団――北東魔術師協会の連中のひとりであるおかっぱ頭の少年が、私に対して嫌味を言うのだった。


「お前ら邪魔なんだよ! さっさと消えろ!」


「ちょ、私に何か恨みでもあるんですか!」


「五月蠅い! 俺はイライラしているんだ!」


「ふえええ、八つ当たりじゃん!」


 むう、私は八つ当たりをされているっぽいわね。


 まったく、何を根拠に苛立っているのかしらね、コイツ……。


「ジルヴァさん、ソイツらをかまっている暇はないんじゃないの?」


「フン、それもそうだな。ま、そういうワケだ。さっさと立ち去るんだったな、チビ!」


「ふえええ、またチビって言った……ちょ、アンタだってチビじゃん!」


 うう、またチビって言われた……。


 流石に草食系な私もイライラし、思わずおかっぱ頭の男――ジルヴァの右肩を左手で掴みかかってしまうのだった。


「う、何をする! 放せ……お、おわあ!」


「ひゃあー!」


 放せッ――と、右肩を掴む私の左手を払い除けようとするジルヴァだったけど、次の瞬間、勢い余って私を押し倒すかたちで転倒するのだった。


「うう、重いっ……はう、この感触は⁉」


 プニョン――う、私の顔にお餅やマシュマロのような柔らかいモノが乗っかっているんですけど、これってまさか……。


「この感触は、おっぱ……。」


「わああ、言うな! それ以上言うな!」


「フフフ、愛梨。ソイツの正体がわかったわ。」


「え、アフロディーテさんも……?」


「まあね。私は愛梨と感覚がリンクしているし――。」


「むう、とにかく、コイツは……男装女子だわ!」


「おおお、おい、それを言うなよ! お、俺は男だー!」


 私の顔面に乗っかっているお餅やマシュマロのような柔らかいモノの正体は、ジルヴァの胸である――要する、コイツは男装をした女のコだったワケ。


 しかし、俺は男だって言っている。


 変な奴ね……ちょっとからかってみたくなったかも☆

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