外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その38
「気づいたら眠っていたっす……。」
「右に同じく、気づいたら眠っていました……。」
え、いつの間にか眠っていたってこと⁉
うーむ、ヤミコは孤児院内に睡眠ガスでも散布したのかしら?
「ところでアンゲロイ遺跡ってどこにあるの?」
「あの遺跡なら、エフェポスの村の北北西の方角にあるっす。」
「さっきも言ったけど、そんなアンゲロイ遺跡ですが、既に調べ尽されて何もない筈よ。だから、私が買収しようと――。」
「何はともあれ、そこをアジトにしている以上、考古学者達にも知れわたっていない〝何か〟があるんじゃないかな?」
さて、ヨルコとヤミコの隠れ家だってクロのオッサンが言っているアンゲロイ遺跡は、既に調べ尽されている古代遺跡のようだ。
しかし、〝何か〟秘密があるんだろう。
例えば、メリッサさんやヤスといった考古学者達も知らない秘密の地下空間があったりとか――。
「まあ、なんだかんだと、件のアンゲロイ遺跡へ行ってみましょう。」
「え、ウェスタさん、行くんですか?」
「当然よ。このままむざむざと泣き寝入りするワケにはいきません! 奪還よ、奪還!」
むう、ウェスタさんはヨルコとヤミコから、彼女らに盗まれた何かしらに魔導書の切れ端を奪還しようと目論んでいるようだ。
うん、確かに奪還した方が良さそうだ。
魔導書は切れ端だけでも、何かしらの厄災を起こしかねない危険なモノだと思うし――。
「そういえば、バザー会場のカフェにいた魔術師協会の連中が、件のアンゲロイ遺跡がどうとかって話し合っていたな、カルラ?」
「うん、大事な何かを盗んだモノが潜む遺跡だ――と、そんな感じの会話だった気がします。」
ん、件のアンゲロイ遺跡、それにヨルコとヤミコが関わっている可能性がありそうな話をバザー会場のカフェで聞いた――と、サカラとカルラが言う。
今の話が本当なら、私達以外にもヨルコとヤミコに対し、何かしらの因縁があるモノ達がいることになるわね。
「魔術師協会? 魔術師の集まりってヤツ?」
「その通りよ、愛梨。まあ、ここらへんで見かけるのは、エフェポスの村の北にある主要都市アイテナに拠点を置く兎天原で幅を利かせる二大魔術協会のひとつである北東魔術協会の連中だろうけどね。」
「へえ、魔術協会という組織はふたつあるんだぁ。」
「うんうん、ちなみに、もうひとつの魔術協会は西方魔術協会と呼ばれているわね。」
魔術師の集まりである魔術師協会とかいう組織は、兎天原にふたつ存在するみたいだ。
うーん、なんだかんだと、魔術師協会とやらはふたつもあるワケだし、教義の違いなどから対立関係にありそうだけど、元はひとつだった気がするね。
「さ、行くわよ!」
「わあ、もう行くんですか? って、何故、私の引っ張るんですゥゥゥ~~~!」
え、もうアンゲロイ遺跡へ行くんですか、ウェスタさん!
うーん、思い立ったら即、行動ってところか……。
「さて、このおぢさんも一緒に連れて行くわよ。」
「え、俺もっ……は、はい、わかりました! だから、その不味いお茶が入った瓶をチラつかせないでくれぇ!」
ん、クロも連れて行くのね。
あ、ああ、アンゲロイ遺跡のどこかにある秘密の地下室等のアジトに案内させる気なのかな?
まあ、とにかく、件のアンゲロイ遺跡へ行ってみよう。




