外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その35
「誰が話すもんか、ボケェェェ~~~!」
「や、やっぱりそう言うと思ったわ。」
まあ、当然の返答よね。
リーダーであるクロって奴のことを呆気なく語るワケがない。
「おう、なんだかよくわからんが、さっさと話した方が身のためだぜ。」
「はい、クロさんは背は低くてデブでハゲで、オマケにお金に意地汚いオッサンで……あ、ヨルコとヤミコってクソ生意気な小娘の言いなりになっているロリコンなんです!」
シャーッ――と、大蛇のサカラが大口を開け、獲物を丸呑みするかのような仕草を見せると、頑なにアデプト団のリーダーであるクロニについて語ろうとしなかったアーナも呆気なく音をあげて語り出すのだった。
む、むう、なんだかんだと、脅す場合、迫力が大事よね。
と、それはともかく、アデプト団のリーダーであるクロって奴は、どんなモノかと聞いているだけで嫌な気分になる輩のようだし、ヨルコとヤミコというふたりの女の言いなりになっているようだ。
もしかして、そのヨルコとヤミコってふたりの女は、アデプト団の真のリーダー……黒幕的存在なのかも⁉
「ま、間違いなくクロさんの容姿です。あの人はチビ、デブ、ハゲの三重苦を背負ったオッサンなんです!」
と、猫獣人も言うので、クロって奴はアーナが言っていた通りの容姿のようだ。
「んー……その三人を捕まえれば、アデプト団は総崩れね。」
「うん、確かにそうだけど、そうそう上手くいくワケがないよ……。」
「まあ、向こうから現れてくれりゃ捕まえることもできそうだけどね。」
アフロディーテさんは気軽に言うけど、クロ、そしてヨルコとヤミコを捕まえれば、アデプト団は総崩れだろうけど、そうそう上手くいく話じゃないよね……。
「ん、この気配は……また誰か来たぞ。」
「派手な豹柄のロングコートを羽織ったチビでデブのオッサンだ。」
新しい刺客キター!
と、そんな感じである――が、そんな現れた刺客は、たったひとりである。
む、しかし、たったひとりで現れるだなんて、なんだか不気味な雰囲気を漂わせるわね。
「ククク、クロさん!」
「え、クロさん⁉ むう、チビでデブ、そしてハゲ……さっきアンタが言っていた特徴を本当に備えているわね。」
「ええと、チビ、デブ、ハゲは、男の三重苦って言うんでしたっけ?」
「ウフフ、他にもあるわよ。知りたい?」
「あら、そうなんですか? 是非とも!」
「ちょ、アフロディーテさん、カルラさん、ダメだよ。そういう精神を逆撫でするようなことを言っちゃ……って、他のふたつってなんです?」
「ワハハハ、愛梨は初心だなぁ☆ よし、私が説明してやろう!」
「う、スカアハさんまで……そ、それに関してはあえて聞かないでおきます!」
「おおいっ! さっきから俺の悪口を言いまくってないか! この女共ォォォ~~~!」
むう、ほら怒らせちゃったじゃない!
いきなり、あんなことを言われたらキレて当然かもしれないわ……。
それはともかく、アフロディーテさん達に三重苦とか、悪口を言われた派手な虎柄のロングコートを羽織ったオッサンは、アーナや猫獣人が属する悪徳組織である月刊写本倶楽部の編集長ことアデプト団のリーダーであるクロのようだ。
まさか、リーダー直々にやって来るとはね。
なんだかんだと、意外な展開かもしれない!
「ああ見えて、物凄く強いかもしれないわね。」
「うん、侮っちゃいけないよね。岩盤を指一本で打ち砕くパワーがあるかもしれないしね。」
「ウフフ、なんだかんだと、強さを試してみたくなったわ……えいっ!」
うん、デブチビハゲのオッサンだけど、実は物凄く強い可能性があるよね。
そんなワケで侮っちゃいけない……わ、身体が勝手に動く……そ、そういえば、アフロディーテさんと合体した状態であるアイロディーテの姿だったわね、今の私は――。
う、そんなことより、アフロディーテさんが、いきなりクロとかいうオッサンをぶん殴ったぁー!
「ガ、ガフ、ゴフ、ゲフッ……いいい、いきなり何をするんだァァァ~~~!」
「あ、強いかどうか試してみたんだけど……。」
「ヒ、ヒギエエエエッ! ははは、鼻血が出た! 痛い、痛い、モギャアアアアッ!」
「ちょ、大袈裟よ!」
まあ、いきなり、ぶん殴られちゃ悲鳴をあげても当然かなぁ……。
うーん、しかし、このオッサン、大袈裟すぎだわ。
今度は悲鳴を張りあげながら、地面を転げまわっているし……。




